2021年9月号
改めて勝てるようになったらレアなキャラになるのかなと思っていますね。ランキングでは2〜3位の時があったり、30位ぐらいになったりと浮き沈みも味わい、濃いダーツ人生を過ごして来ました。
いつでも勝てるプレイヤーになれるように精進していますので、応援よろしくお願いいたします。
グリップ
グリップの最重要ポイントは何でしょうか?
3本でダーツが触れている場所が毎回同じであれば、角度や最下点、飛び出しなどが一緒になると思っています。何が一番重要とかではなく、決まらないものとして捉えています。その日によって力を入れるのは、中指なのか薬指なのか、親指は内側なのか外側なのかアップの段階で調整します。大まかな形は決まっていますが、そんなイメージですね。
では近くで見ていても分からないですね。
そうですね。絶対分からないと思います。プロの選手でも指離れは毎日違っています。気持ちよく手を出せて狙えるポイントを探すということですね。
今までにグリップは変えて来ましたか?
見返すと変わって来ていますね。工夫して変えたこともあれば、肘から下のフォームに合わせて変わったということもあります。
長いダーツ歴の中で慣れてくると意識できていたことが出来なくなったり、そういうことの繰り返しですね。
他人のグリップは参考にしますか?
う〜ん、ほとんどしたことが無いですね。他のプロの方と話をしていても、けっこう違うなと思うことが多いんですが、グリップはその内の一つです。
僕の場合はプレッシャーがかかる場面で、グリップがゆるくなってしまうんです。力が抜けちゃう感じなんですよね。フワフワしてしまうんです。そのため逆に強く握らないと、投げれない状態になってしまうんです。ですので一般的にはそんな場面では力を抜けと言いますが、僕には当てはまらないんですよね。
力を抜くための作業として、ユーミングしたり手首を柔らかくしたり、グリップの圧を下げたりとかありますが、僕は強く握って固めてなど真反対なことをしています。
多数意見では力む人たちが多いようなので、僕はけっこう違っています。他の人達のグリップを積極的に真似しないのはそのためですね。でも3本で短いバレルを使っているプロは、勉強のために多少参考にしていますよ。
毎日グリップは変わるとのことですが、アップでその日のポイントを探すのは時間がかかりますか?
プロツアーでは2時間前に入ります。早い時は10分程度ですが、2時間でも見つからなくて第1試合が始まっても模索していることも多々あります。とても微妙ですね。練習の時でもすぐにしっくりきて指離れが良いこともあれば、なかなか探せない日をあります。
それが怖いので、決まった時間に会場入りするようにしています。
グリップは季節によってコンディションが変わりますが、何か対策はしていますか?
グリセリン塗ったり、ベタベタする時はパウダーシート使って指の間を拭いたり、試合前に石鹸で洗ったり、いろいろ対処しています。いろいろバッグに入れていますね。
立ち方
スタンスはどうしていますか?
ずっと長い間90度のクローズです。
でも長い試合では疲れるので、オープンに変えてる選手も多いようですが?
疲れますね(笑)。クローズだと右利きなので右側に身体がひねれるので肘、腰、肩がピタッとはまるんです。それがあるのでオープンでは不安ですね。
スローラインは何処に立ちますか?
つま先をスローラインの真ん中にして立っています。ですので後ろから見るとやや右側に見えると思います。
実はダーツを始めてから気付いたんですが、ダーツの時だけ効き目が左に変わるんですよね。普段は右が効き目なんですが、きっと的を見たいからでしょうか。6、7年前にそれが分かりました。それから右側に立っていますね。視野が広がるイメージがあります。
ボードの右や左を狙う時に立ち位置は変えますか?
狙うという面では全く変えないです。前のダーツが邪魔な時だけ変えますね。上半身、腰から上で調整して狙っています。試合前の試投でスローラインのキズなどを見つけて、そこに立てるようにしています。
試合が決まったら、その台では投げるようにしていますね。壇上でもすべての台で投げるように心がけています。
右足はまっすぐにしていますか?
自分ではまっすぐのイメージですね。膝、足首は曲げたくないです。左足も以前はまっすぐでしたが、今は曲がっています。クローズで両足まっすぐはきついですね。年齢のせいか難しくなってきました(笑)。
両足の荷重はどうでしょうか?
以前は7:3とか6:4で左足にもけっこう乗っていたんですが、今は8:2ぐらいでしょうか。時々9:1になっていることもあります。
年齢を重ねてきて腰から上を折るというフォームが厳しくなってきていますね。それで右足により乗って、ツッコミ加減になっているのかもしれません。
ダーツでは身体のバランスで左足も大事ですよね?
元々は絶対に動かしてはいけない派だったんですが、他の人達のいろいろなイベントやレクチャーを見て、動く動作もありなのかなと考えるようになりました。自分では動くと投げれないし求めてもいないですが、ダーツを飛ばす意味では補助作業の役割を担っているのかもしれません。動く人がダメだとは思わないようになりました。
肘
構えた時ダーツはどこにありますか?
目の前に拳があってその上にダーツがあるイメージです。でもダーツが目の上にあるのが理想なんですが、映像で見ると少し下になっています(笑)。以前は構える位置が高くて手首が目の前だったんですが、ボードやグリップを見たいためか下がって来たんでしょうね。それを矯正して最近はダーツが目の前になるようにしています。
では肘の位置は低いですね。
そうですね。他の方と比較すると少し低い方かもしれません。僕の場合、上半身が前のめりになっているので、上半身だけの写真だけでしたら低いように見えないかもしれませんね。僕は腕が短いんで、それも原因です。
では肘の位置は長い間で変えて来たということですね。
いや肘を考えるのは止めたんです。肘を動かさない、まっすぐに合わせる、落とさないなどあります。でも肘を意識せずに肩とか脇、テイクバックの自分の手、ダーツの向きで肘を矯正するんです。肘を意識すると全く投げれないですよね。投げる作業を忘れてしまいます。
構えた時、肘の位置をしっかり固めているプロと、柔軟性を大事にしてゆるくしているプロがいますが、どちらですか?
ゆるゆるの方ですね。ただ投げていて痛くなるのは肘なんですよ。肘を固めていないのに不可解です。どうしてなんでしょうか?(笑)。
肘はプロプレイヤーが怪我しやすい場所でもあるのですが、何かケアはしていますか?
最近こうすると痛くならない、ということが分かって来ました。投げる前にねじって伸ばしてストレッチが大事ですね。いきなり投げないことも大事です。
以前、肘を痛めたことがあってまさにNDLのインタビュー時、2013年の頃でしたね。氷でアイシングなどしていましたが、厳しい時期でした。今はサポーターも付けないで投げています。腰など他の部分もそうですが、準備してから始めると全然違いますよ。ぜひ参考にして下さい。
テイクバック
どんな動きですか?
手首を固めていますが、倒すと顔にフライトが当たります。そうしたら投げ始めるということですね。
最初は意識して顔にフライトを故意的に当てるようにしていました。毎回同じ場所に引きたいからです。その頃は頬でしたが、今は鼻の付け根か上唇ぐらいでしょうか。当たる場所で角度など調整しています。今は必ずこことは決めていないです。でも試合の後半戦で顎になった時には、腕を上げるようにしています。
当たってずれることもあると思いますので、触れるかどうか微妙な位置ですね。昔は強く当たって失投もありましたので、お薦めはしていないです。ですが当たった時にダーツの向きが変わらなければ、全然良いと思いますよ(笑)。
スロー
リリースポイントについてはいかがですか?
ここで離そうとかは今でも考えていないです。最後までコントロールできるので遅い方が良いと思っています。フォロースルーの形を見る限り、きっと遅い方ですね。早く離して先にダーツが無くなった場合、フォローの形を見ると指が上を向いて立っていたり、横を向いている人が多いように思います。肘も伸びていないですね。
リリースが遅い人は最後の形が指は下を向いて、手は伸びています。僕は指先が下を向いて手も伸びているので、遅い方だと分析しています。
では手は奥まで伸ばすスローだということですね。
そうですね。止めても投げれるんですが、狙えないです。予測で狙う感じになってしまいますね。ゴミ箱にものを投げるぐらいアバウトで、飛んではいきますが必ず左にいっています。肘を伸ばして投げるというのは、ずっと変わっていません。でも時々投げた後の肘の位置が、上や下にあることもあります。
手の最後の形は気にしてますか?
気になりますね。最後の形から逆再生して検証することもあります。手が下過ぎると感じた時は上げようとか、大事にしているポイントですね。
今は小指と薬指が下を向いて人差し指も斜め下方向で、手の甲がターゲットに向いています。以前は手の平が下を向いているほどだったので、きっとリリースが早かったのではないでしょうか。
比較してみるとグリップの位置が今は下がって来ていて、長く持って狙っていますね。矢速は上がったと思います。
ダーツの飛び
気にしていますか?理想の軌道は?
平行に飛んで浮き上がって到達するのが理想の軌道ですが、実現出来ないですね(笑)。物理的にも難しいです。でもそれに近いダーツの飛びを見たことがあって、羨ましいですね。
ダーツ自身にエンジンが付いていて、離したら5cm、10cmほど浮き上がって飛んでいくような軌道です。良いなと思うんですが、自分は出来ないです。
回転についてはいかがですか?
以前よりは回転するようになりました。わざと掛けているわけじゃないのですが、かなり回転しています。理由としてはグリップがつぶれているので、それで戻る時にはじいていますね。以前のグリップは今よりも浅かったです。以前も回転していましたが、今はすごくクルクル回っていますね(笑)。
どっちに回転していますか?
左回転です。親指を深くすると、必ず左回転になると思います。リリースポイントが遅くなると、親指が走るからですね。今の僕でも親指を浅くしたら、右回転になりますね。デメリットは無いので、それで続けています。でも毎投の回転数はそろえたいかなと思っています。
セッティングも変わりました。一時期は回るシャフトなどを使っていましたが、今は回らないシャフトでフライトも小さいものを使っています。どれくらい直進性が変わるのか試していますね。
コロナ禍になって家での練習しかないので、フライト6種類目です。
フライトでだいぶ変わりますか?
最近はスティールメインなのですが、かなり違いますね。刺さる角度とか、飛び出しなど見え方も違っていてスタッキング、グルーピングなど変わります。この時期に多くを試して吸収したいです。
リズム
ダーツには1本のリズム、3本のリズムなどたくさんありますが、どう考えていますか?
特別なことはしていないです。決めたい場面で間を置いたり、上がり目が出て一息つくとかはありますが、それ意外はリズムよく投げたいと思っています。ダーツ歴の長い選手はみんなそうだと思うんですが、それなりに成功失敗の経験を積んでいます。そのままの流れで行くか、間を置くのか深い問題ですね。
リズムの面ではスローラインに立つ前にしっかり狙いを決めておきたいですね。それがしっかり出来ている時は、結果も伴います。迷っている時はだいたいダメです。
試合ではプレイが早い人、遅い人などいますが気にしますか?
得手不得手があまり無いタイプだと思います。相手が投げ終わってもすぐ立つ方でもないからですね。メチャ遅い人でも分かっていれば気になりません。
以前は遅い人が得意で早い人は苦手だったんですが、今はどちらでも対処できるようになりました。
そもそも対戦相手を見ていないです。やはり影響される可能性がありますからね。2012年からそうしています。よく足元を見ているので、選手の靴のメーカーには詳しいですよ(笑)。
ソフトではゼロワンとクリケット、どちらが好きですか?
クリケットが好きだったんですが、ゼロワンが良い日の方が優勝率は高いですね。パーフェクトツアーでゼロワンがセパレートブルになって20を狙うようになって、大きく変わりました。
でも最後のレッグではほぼクリケットのゲームになりますので、両方隙きのないように練習しています。
スティールとソフトの違いについて
う〜ん、全く違うといえばそうでしょうし、でもダーツを投げるという意味では一緒ですね。僕は全く投げ方を変えていないですし、使うバレルも同じです。
ただスティールでは刺さる角度が重要なことが、異なっている点ですね。その角度によって次が狙いにくくなったりするのは、スティール特有のものです。アレンジも含めてその場面での判断が求められます。ターゲットが小さいので狙う時はよりシビアになりますね。
そのためなのかソフトよりスウィッチすることが多いです。ソフトでは歴が長いですが、スティールはここまで投げ込んだことも無いので、新しい発見があって新鮮ですね。
練習はいかがですか?
全くソフトを投げていない状態です。でも今ソフト投げたら全然ダメかというと、そうでは無いと思います。
具体的な内容を教えて下さい。
ソフトではカウントアップで決めた点数に行って、そこから各ナンバーでカウントアップ、クリケットカウントアップ、ハーフイットなどをしていました。今はスティールメインなので、アップを5〜10分してから各ナンバーとダブルを投げます。それから数字を決めて上がる練習ですね。
こんな状況なので子供や奥さんに好きな数字を言ってもらって、それを上がるようにしています(笑)。家なので練習時間は短いですね。でも触っている時間は長くなりました。
スピリット
オー、難しい課題ですね。以前はダーツは技術だと思っていました。でも今のレベルになるとみんなが技術を持っています。セパレートブルで501をやると9ダーツは出ないんですが、12本の可能性は高くなりました。15ダーツ以内でゲームが進むとメンタルが出てきますね。10年前は4ラウンドでブレイク率が高かったし、クリケットでは6点でブレイクできましたが、今は様変わりしました。
今は技術があってもパフォーマンスに活かせないとか、新しい時代に突入したと思います。練習でメンタルやってますか?と言われたら、そんなことは無くて全て技術に集中しています。技術に磨きをかけて、その舞台で遜色無い状態で戦えるように準備したいですね。
夢や目標を教えて下さい。
僕がダーツを始めた時は今のように動画が溢れていなかったのですが、それでもPDCの映像を見る機会はありました。いやぁ、やはり憧れますね。ダーツを職業にしているので、あの舞台は経験してみたいです。ダーツ最高峰のステージですからね。
当面の目標はプロツアーでの優勝、年間ランキング1位でしょうか。日本で1位になってPDCに挑戦したいです。
読者にメッセージをお願いいたします。
今僕は中堅からベテランになっている世代だと思いますが、変わらず応援していただいている方もいます。改めて勝てるようになったらレアなキャラになるのかなと思っていますね。ランキングでは2〜3位の時があったり、30位ぐらいになったりと浮き沈みも味わい、濃いダーツ人生を過ごして来ました。
いつでも勝てるプレイヤーになれるように精進していますので、応援よろしくお願いいたします。
※コロナ禍での記事でしたので、電話でインタビュー、撮影も本人にお願いし送っていただきました。昨年のPDC ワールド・チャンピオンシップにも日本代表として参戦しています。本人も語っていますが、これからも日本ダーツ引っ張っていってほしいですね!