2013年3月
イップス論とは客観的学問により説明できるものです
今回で第四回を迎えますイップス論ですが専門用語ばかりで読みづらいと思いますが、身体の連動性をご理解頂くには中々端折ることができません…(筆者の文章力が問題?)
しかしこの半年間にイップス論には何かあるのでは?と50名程の方から様々な症状をお見せ頂き貴重な経験とさせて頂きました。
イップスは精神論では改善しない
イップスは所謂「精神性」「性格」に原因があるのではなく、「技術論」即ち「身体の動かし方」ひいては「筋肉」「神経」など解剖学等学問により説明できるものが私の提唱する「イップス論」なのです。精神性が起因しないかと言えばもちろん嘘になり緊張感や特別なステージで「いつも通りの動きが出来ない」等、精神性が技術に起因するのは分かっています。しかしイップスを発症し「それら」を改善しようとした時に「精神論」を元に「リラックス」「楽に」「楽しんで」「適当に」「考えないで」「勝負に拘らないで」「レーティングを気にしない」等の言葉を並び立てても何の解決策にもならない事も同時に知って頂きたいのです。でも「適当に投げる」と案外大丈夫だったりする事があると思います。これは「適当」=精神性ではなく「適当に投げる」=技術論なのです。適当に投げる効能とは何なのでしょうか?
筋力など「内力」ではなく、重力に伴う「外力」を使う
前回コラムやASUKADARTSブログなどで何度もご紹介していますが「体重移動」があるかないかだと思います。この体重移動はどんな運動や動きの「初動」でも必要になり「自然な身体連動」を促す助走のようなもので、歌を歌ったり楽器を奏でたりするのにも必要だと思います。どんなスポーツにしろ「個体(体重身長)の大きさ」は優位に働き、体重が重く背が高いのはかなりのアドバンテージになり、ボクシングや柔道・レスリングなど体重が優位に働くことを考慮し階級分けされています(体重=パンチ力、体重=パワー)。
何故優位なのか?それは外力である並進エネルギー(方向に対するエネルギー/体重により促進)や位置エネルギー(上から下へのエネルギー/身長により促進)が高ければ高いほどパワーに還元されるからです。私のダーツ力学は身体のトルク(体重)を最大限活かし(体重移動)最小限の出力(腕力)により矢に力を伝える事が重要で、逆にトルクを発揮せず(体重移動せず)出力全開(強い腕力、特に伸筋)にすることで不整合が起こりやすくなるのです!
体重移動とは自然に促されるもの
よく勘違いされるのですが、この体重移動は自ら動く事ではありません。
これはフォーム構築論になるのですが、セットアップの時点で体重移動が促されやすいフォームとそうでないフォームがあり、個体差によりバランスを取りながら並進エネルギーと位置エネルギーを確保する事が基礎的なフォーム作りだと思います。
例えば片腕を挙げると挙げた側に並進エネルギーが自然と働き「その向き」に外力が加わります|写真①|。※野球の投手のように足を上げることで位置エネルギーは高まり上げた側に並進エネルギーが自然と働き「その向き」に外力が加わり逆半身で制御しバランスを取ります。
ダーツのセットアップで言えば右利きの場合右脚に体重を乗せ右腕を持ち挙げセットアップした状態では並進エネルギーを高めた状態から逆半身で制御(バランスを取り)もしくは増長し、テイクバックで更に高める事により「トップ位置」でエネルギーが最高点に達し解放するように自然とリリースさせることが理想だと思います|写真②|。エネルギーが足りない状態ではタイミングが取れず出力の足りなさを反射的に「前腕の押し」でカバーしてしまい不整合が起きてしまうのです。
下半身固定は悪
この下半身体重移動を嫌う傾向がダーツや野球やゴルフもしくはあらゆる競技で技術論の定説となり「軸」と言ったキーワード=「固定」と反射的に唱えられ、さも下半身を固定した方がパワーは出やすいと勘違いする傾向にあるのです。
テレビでよくお笑い芸人対格闘家がローション相撲をやる場面がありますが、正にあれは体重移動ができない事で外力を失い、どちらが勝ってもおかしくない状況となるのです。そもそもお酒を嗜んで競技する傾向にあるのに下半身固定はナンセンスだと思います。
イップスになられる方の大半が「下半身固定」の意識を持っています。これに対し下半身は動かしてもいい旨を伝えるだけで改善することもあり、実際テイクバック時に固まるイップスの方の特徴として逆足が前に出ると投げられる傾向にありますが、この逆足が前に出る事を嫌い、逆足を踏ん張ると腕が出てこないというスパイラルに嵌ってしまうのです。
生理現象(反射運動)を自ら妨げてはいけない
解剖学で「連合運動」|写真④|というものがあり右腕と左脚・左腕と右脚の(クロス・左右)自然連動する事を言い、主動させる部位の逆半身が連動するが故に逆脚固定は腕を固める原因と成り得るのです。(※ダーツでフォロースルーと同時に逆脚がピョンと跳ね上がる動作が良く見られますが、これも連合反応だと思います。故に逆脚を制御すると投げる腕にも支障が出る可能性があると思います)
故に「いい加減」=「体重移動」「逆足の非固定」=「投げられる」という風になるのだと思います。骨盤を中心とした下半身と上半身の連動を自然と促す為のフォーム構築には「固定キーワード」は忘れる事をお勧め致します!それでも固定させたい違和感があるのは分かります。その違和感の原因の根本は腕の構造にあり「それ」を是正しなければ根本解決にはならないのです。
ダーツ運動は一番イップスになりやすい
イップスとは身体の不整合もしくは筋肉や神経の連動を妨げる「動き」により発症し、残念な事にこの連動を妨げる動きがダーツは非常に起こり易いのです。これはダーツのフォームが腕と脚の左右が同方向を向いている事で自然連動が起こり辛く、更には腕の構造による神経的なものが非常に関与しているので、少しでも間違った行動を取れば誰でもイップスになってしまうのです。次回は不整合を起こしやすい腕や指の連動についてお話ししたいと思います。
また疑問点などございましたらASUKADARTSウェブサイトお問合せなどで承っておりますのでお気軽にご質問ください。