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No.5 動きを整理する事でシンプルな方法論

2013年5月

イップスはあくまでも身体の使い方によるもの
早くも第五回目を迎えましたイップス論ですが、お陰様で大反響を頂いております。私のイップス定義は自分自身の意志と反した動き、自分自身で制御できない動き全てを指します。イップスという「言語アレルギー」は根深く一度でもその症状を伴う事の精神的ダメージは計り知れません。言語アレルギーとは「イジメ」と一緒でイップスという言葉の持つ意味が自我を抑制してしまい、イップスであることを本人自身が認めることが非常に辛い状況にあります。しかし私が提唱しますイップス論は身体の使い方により是正するものであって、メンタルを強化するなどの精神性や心の問題として扱っておりません。もちろん仕事でも運動でもあらゆるジャンルにおいて考え方や物事の捉え方は重要だと思いますが、あくまでも身体反応における分野ではまず身体機能についてメスを入れる事が直結した問題是正に繋がるものと考えています。

イップスの原因は全員同じ
ダーツ競技において各プレイヤーさんは様々な悩みをお持ちだと思います。肘が開く、肘が内側に入る、肘が下がる、肘が上がる、下半身が安定しない、テイクバックできない、グリップできない、ダーツが指から離れない、トップで腕が固まる、腕が勝手に動く…などなど様々ですが、私はレクチャーで「全員同じ話しかしません」皆原因は一緒で全て解剖学により説明できるものです。身体のやりたい動き・やりたくない動き、できる動き・できない動きを整理する事でシンプルな方法論にたどり着く事ができるのがイップス論でもあるのです。

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イップスの原因は伸筋促進
過去四回のコラムでも説明してきました「伸筋の促進」が何よりもイップスの原因です。筋肉は大きく分けて「曲げるための筋肉」と「伸ばすための筋肉」に分けられ伸ばすための筋肉即ち「伸筋」が連動を始めることにより起こるというのが私のイップス論です。
筋肉は曲げる運動に付随する場合は「屈筋」が働き、伸ばす運動の時に「伸筋」が働きます。ダーツ運動ではこの「伸筋」が促されやすい側面があり、NDL59号(No.3)で説明した回内時の上腕二頭筋筋力停止しテイクバックが非常に困難になることがきっかけで「伸筋促進」が始まるのです。それでも「屈筋」の連動を利用することで事なきを得るはずなのですが、ダーツ技術論で「屈筋の連動」を妨げ「伸筋促進」へと導いてしまう方法論を取られる方が沢山いらっしゃるのです。前号で紹介しました体重移動は自然連動の起点となりそれを妨げる下半身固定は上半身に悪影響を及ぼします。この下半身固定したくなる原因も「同じ」なのです。

筋肉のドミノ倒しをどの方向に導くかが鍵
筋肉は「起始」「停止」と必ず筋肉の始まる地点と終わる地点があり、足の指から手の指先まで様々な筋肉が重なり合いドミノ倒しのように連動し、複雑な運動は体幹を軸に腕・脚が連動します。この勝手に起こる連動を止めようとすると当然のように身体自体が動かなくなるのです。それはドミノ倒しの連動を「部分的」に止めることで全体の流れを止めてしまう結果になるのです。
随意的(意図的)な運動が苦しく不随意的(オート)な運動にしようとする技術論が蔓延していますがそれでは何も変わらないと思います。自分の身体を自分の意志で動かす術がなければ何の意味もなく、実際命中したとしても首を傾げるだけで再現性も低いと思います。考えると余計にできなくなるのではなく、考えてできない間違った方法を取り自分自身に嫌がらせをしている状態から目を逸らしているだけなのです。

指とは前腕と言っても過言ではない
ダーツで大事なのはズバリ「指」です!指の筋肉も屈筋・伸筋と分かれ指に関わる筋肉は約20個あり前腕部の約2/3の筋量を擁します。指先を動かす些細な運動でさえ前腕部はフル稼働し、重なり連結する筋肉は連動するのです。故に指の影響は大きく自分でも想像のつかない不随意な動きを容赦なく行ってしまい「イップス」へと発展してしまうのです。

技術論で重要なのは「トップ」の作り方
ゴルフ・野球・テニス・卓球・弓道・アーチェリー等イップスを発症する競技には共通点があり全ての原因は腕の伸筋促進です。
これら競技にはトップと言われる「切り返し点」があり、この切り返し点「まで」を意図的に行いたいところを「伸筋促進」しトップまでブレーキがかかったように腕が重く感じられ不随意に腕は伸び指には力が入らず(もしくは逆に力む)自分の腕なのに自分の腕じゃないかの如く制御できない状況になるのです。

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ダーツ競技が一番イップス症状を伴う
指の繊細さが競技結果を左右するダーツをやっていたからこそイップス論にたどり着いたと思います。腕の筋肉構造は大変複雑で体系化し理論立てるのに二転三転しました。
ブログ等で「イップスは直ります」を書き始めた当初の見解は「曲げる」筋肉のいたずらと思っていました。それは腕が固まってしまう「固まる」という状態を「屈曲」と考えその経路を辿って解釈していたのですが、それに付随しない人が沢山見られた事で理論上一度は破綻しました。
その後更に勉強し「伸筋」を疑い始め去年の夏にオリンピック競技の卓球を見ていて「回内」という運動に目を付けた事で一気に道は開けたのです。
そこでASUKADARTSブログで「テイクバックできないイップス」を書いたところ反響が大きくどうしてテイクバックが大変なのかを調べた結果今に繋がっているのです。
ダーツ競技が一番イップス症状を伴うと思います。それはメンタルスポーツだからではありません。コントロール性に特化する動きに対する技術的な思考(どうやったらコントロール性がつくのか?)が間違えを起こしやすい事(不動・固定=コントロール)と競技姿勢(フォーム)がそもそも身体的に不具合を起こしやすい姿勢だからです。

ダーツはトップ(切り返し点)までで決まる!
私から見たトッププレイヤーとそうでないプレイヤーの差はセットアップ時に腕の自然と向く力方向が「どちらに」向いているのか?もしくは向けることができるか?が重要だと思っています。要するにセットアップからトップ(切り返し点)方向に腕力が向いている、もしくはトップまで腕力を向けることができるのかが重要なのです。
PDCトップ選手達は皆指の「屈曲」を利用し「屈筋促進」を促しています。もちろん伸筋促進の選手でもトップ選手はいますが緊張する場面で実力を発揮できない事が特徴のような気がします。

セットアップまで、トップまでの指使いが重要
いかにしてトップまでを作るのかが技術論としては重要なのですが、一度イップスを発症してしまうとこのトップを「通過」させようとしてしまい、余計に伸筋が促進しリリースが遅れる事で物理的(矢の飛び方等)な不整合を是正しようと、更に「押し」が強くなり更なる伸筋促進を誘発しそれにより体軸は乱れ下半身固定へと繋がっていき正に蟻地獄のようにもがけばもがくほど引きずり込まれていくのです。
技術を構築する時に「目立つ」個所を是正箇所と決めつけるのは危険な行為です。ひたすら上手くなろうとシンプルに考えていたのに「もっと上手くなるには?」もしくは「どうして上手くなったのか?」を検証しだした結果皆おかしくなっていくのです。
肘が下がることがいけない事だと決めて「肘を下げない」ようにする事が果たして出来るでしょうか?出来たとしても連動を止めた弊害は計り知れないのです…

また疑問点などございましたらASUKADARTSウェブサイトお問合せなどで承っておりますのでお気軽にご質問ください。