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No.3 ガッツポーズで「Yes!」、Vサインで「Peace!」

2013年7月

ダーツの試合などで良いプレイが出来たときや、負けていた相手に最後土壇場で逆転勝利なんていう場面では、やっぱり自然とガッツポーズが出てしまいますよね。今回はダーツをプレイする時によく使うジェスチャーと、それに関連する英語について考察してみたいと思います。
ご存知のようにガッツポーズとは、こぶしを固めて体の横や上に突き出して、自分の達成感や勝利の喜びを表すものですが、このときに「よし!」とか、「やった!」などという言葉を一緒に発する人も多いでしょう。英語圏ではこのポーズそのものは日本と同じような状況で使いますが、このとき同時に発する言葉は大抵「Yes!」になります。Yesというと、「はい」という肯定の意味で知られていますが、こういう使われ方をするときは、まさに日本語の「よし!」という意味と同じになるんですね。
面白いのは、このガッツポーズという言葉が、完全に日本でのみ通用する和製英語だということです。したがって、英語圏の人に「ガッツポーズ」と言っても通じません。そもそも「ガッツ」という言葉は英語の「gut」から来ていて、これは基本的に消化器官や内臓という意味なのです。その元の意味が転じて、肝っ玉とか根性という意味でも使われるので、その部分が日本で訳されるうちに、あのジェスチャーとあいまってガッツポーズと呼ばれるようになったようです。有名な日本のボクサーであるガッツ石松選手がやったことによって、ガッツさんのポーズということでガッツポーズと呼ばれるようになったという説もあります。
ではこの仕草、英語ではなんと呼ばれるのでしょうか?実は、英語圏にこのジェスチャーを表す一つの定まった言い方は無いのです。「throwing up their arms」(腕を上に突き上げる)、「clenching their fists」(こぶしを握る)、「fist pumping」(こぶしで気合を入れる)など、人や状況によって色々な言い方があります。なんだかあまり強そうに聞こえないですね。日本語のガッツポーズの方が雰囲気を良く表していると思うのですが、いかがでしょうか?
もう1つ、特に女子選手が勝ったときによくやるのがVサインです。言葉の通り、人差し指と中指で「Victory」(勝利)のVの形を作るジェスチャーですね。これは英語でも「V sign」(Vサイン)と呼ばれています。実はこのサイン、第2次世界大戦と関わりが深く、世界的に広めたのはイギリスで当時首相であったチャーチルさんだったと言われています。その後ヒッピー文化が全盛になると、同じジェスチャーは「Peace」(平和)を表すシンボルとして更に広がっていったのです。ですから、この仕草をした時に一番似合う言葉は今や「Peace!」かもしれません。第2次世界大戦で負けた日本で、このジェスチャーがすっかり根付いているのは面白いことです。やっぱり平和が一番ですよね。
気を付けなくてはいけないのが、同じジェスチャーを手の甲を相手に向けてやると、悪い意味に取られる場合があることです。アメリカなどから発生したジェスチャーで、手の甲側を相手に向けながら中指を立てる、大変失礼にあたる仕草がありますが、Vサインも手の甲側を人に向けただけで、それと同じように解釈されてしまう危険があるのです。手の向きには注意が必要ですよ。
その国の言葉を知るためには文化を理解することが必要不可欠です。簡単に気持ちを伝えてくれる便利なジェスチャーも、文化が違うと違う意味を持つことが多くありますので、その違いや意味を知ることも、その言葉を知るのと同じくらい大切なのです。また機会があったら他の面白いジェスチャーもこのコラムでとりあげてみたいと思っています。Peace!