2016年1月
【重さ】と【重み】は体感レベルでは差がある
「重さ」と「重み」の意味を調べてみました。前者は『重いこと』とあり、後者は『重いと感じること』とあります。
想像してみてください。ゴム製のソフトテニスのボール1個が約30g。また、500mlの空のペットボトルが約30g。見た目や数字で見て、皆さんはこれを重いと捉えますか?それとも軽いと捉えますか?
これがダーツのバレルならどうでしょう。30gのダーツがあるとすると「重い」と答える方が多いのではないか思います。一体何を基準に重いか軽いかを判断しているのでしょう。よくよく考えてみると不思議ですよね。
日常生活で目にするもので、重さの感じ方の違いを検証するのにちょうど良いものが小銭。50円玉1枚当たりの重さが約4gですので、これを利用すると5枚で約20g。どちらもダーツに近い重さですが、感じ方の違いがわかりやすいかと思います。
さらにいろんな持ち方や手のいろんな部分で重さを感じてみると、持ち方や触れ方で重みの違いを感じることができます。
同じ20gのダーツでも細くて長いものと短くて太いものでは、何となく重さが違う感じがするなど、形状の違う同じ重さのダーツを持った時に、「これ同じ重さ?!」と感じた経験はないでしょうか。
重さは同じでも重みが違う。また、手のひらに乗せているだけでは感じなくても、実際に飛ばしてみて感じる重みの差もある。手首や腕の重さによる感覚の誤差もあるでしょう。(ちなみに、人の腕の重さは体重の約16分の1と言われており、60㎏の体重の人であれば、3・75㎏。2ℓのペットボトル2本分ほどの重さということになる。また手首の重さはおよそ250~300g程。りんご1個分ぐらいの重さ。どちらも意外にも重たい。)
ダーツショップにはいろんなバレルのサンプルが置いてありますので、重みの違いを実際のバレルで確認することができます。近所にダーツショップがない方でも、こういうやりかたで体感してみると感じることができると思います。
海外メーカーの重量表記
国内でダーツが取り扱われ始めた頃、ダーツアクセサリーのほとんどがunicorn・Harrows などの、海外メーカーのものが主流でした。バレルの重量に関しては16g・18g・20gと、チップシャフトフライトを装着すると想定した重量がパッケージに表記されていて、バレル単体重量は細かく調べないとわからないものでした。
例えばある海外メーカーの2つの18g表記のダーツ。バレルの単体重量を計測してみるとメーカーごとにバレル単体重量は違います。メーカーによってある程度は表記上の基準がありそうですが、1~2g程、メーカーごとの違いがあります。
日本の表記に慣れ親しんでいる方であれば、この表記の仕方は少々不親切に思えるかもしれません。
車や電化製品など、日本の製品は高品質で世界でも人気があるという話はよく耳にします。日本では、ユーザーはもちろんメーカー側も求める品質の基準が高いからなのではないでしょうか。特に作り手は、日本人ならではのこだわり抜く気質があるからこそ、高品質のものが作られるのでしょう。
そう考えると、バレルの重量表記がアバウトだと思うのは日本人の感覚であって、海外のメーカーおよびプレイヤーはそこを重視すべき点ではないと考えているのではないでしょうか。ダーツにおいては日本よりもはるかに歴史のあるイギリスの市場が出した答えとして、こだわるべきポイントはもしかするともっと別のところにあり、〝重量よりもこだわる部分がある〟ということなのかもしれません。
ただ、国産メーカーのこだわりを持って作られたバレルは日本人心をくすぐる素晴らしい製品であることは間違いないと思いますし、そういったものを手にすることでもたらされる安心感など、メンタル面にも良い影響を与えていると口にするユーザーがいることも事実です。
これはメンタルを重要視するダーツにおいては非常に重要な要素です。逆に海外メーカーが日本の製品から学ぶべき点かもしれません。
バレル重量の変移
参考までに、国内ソフトダーツプロトーナメントにおいてのルールを確認しておくと、JAPANは「1本の総重量が25gを超えない物」、PERFECTは「3本で70g以下」とあります。
この規定に基づけば、3本を同じ重さのダーツを使用するとすると1本あたり23・33gまでの物であればどちらのプロの試合にも使用できるということになり、23・4g以上25g以下の物はJAPANでのみ使用可能ということになります。
10年ほど前では、バレル単体重量は重くても18g程度のものがほとんどでした。10年間ショップで見てきた感覚では、5~6年前までは平均的なバレルの重さが16g台だったのが、近年ではバレル単体で20g以上のものも出始め、ここ数年で発売されているバレルの平均重量値は大きくなってきているのは見過ごせない変化です。
単なる流行り廃りの一角でまた軽いダーツが流行る時期が来るのか。それとも重めというのがダーツの答えに近づいているのか。
2016年以降も多くのバレルが発売されると思います。
ダーツが上手くなるための道具選びの一つとして、表記上の重さだけでなく「重み」にも深くこだわって考えてくれるプレイヤーが増えて頂けると、ダーツショップの店員としてもうれしいです。スタッフの接客のハードルは上がりますが(笑)。