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No.9 僕も10年以上ダーツ業界に

2013年3月

本誌もなんと10周年。本当におめでとうございます!
そう考えたら、僕も既に10年以上この業界にいるんだなぁと改めて思ってしまいますねぇ。
ここ10年を振り返ると、本当に色々な出来事があり、長い間続いていきそうだなと思っていた関係や事柄が、簡単に反目に回りと本当につくづく面白い業界だなぁと感じます。
あの頃には考えられなかった様な勢力図であったり、今の環境であったり。

普段、業界に勝手に警鐘を鳴らしたり上達する為の技術論を説いている僕ですが、この10年で変わらないものは何かと聞かれれば、それは「ビジネスが絡んでいない、ダーツで知り合った人間関係」ですね。
勿論、ビジネス上の付き合いでも変わらず付き合っている友人もいますが、それよりも元々仕事が絡んでいなかった付き合いの方が変わらず長く付き合っていられています。
学生時代ならば別、社会人になってからそうそう仕事以外で頻繁に新しい人との出会いって、なかなか遭遇するものでもない。
しかし、ことダーツバーやショップに行けばそれこそその気になれば毎日知り合うことだって出来る訳ですよね。
それが、自分に合う合わないのジャッジも、色々な人に会わないとセレクトしようがないわけですし。「ダーツ」という共通の話題があれば、それこそ合コンや何か出会いの場を提供する会に参加するよりも遥かに会話の糸口は見つけやすい。
ダーツで上達することや大会で勝利することよりも、もっと大事なもの。それは人との縁ではないでしょうかね。

回りを見渡せば、本当に様々な業種の方々がダーツという競技にハマっている訳で、異業種交流会どころではない(笑)。
僕自身、本当に多くの方々と出会うことが出来て、その方々のプライベートや本職の話等を聞かせてもらって、この10年で沢山の知識や体験をすることが出来ました。ダーツをしないで、あのまま普通にワサワサと仕事していたら、これだけ全国規模で「友人」と呼べる人々と出会っていないだろうし、気軽に色々な土地に遊びに行けたりしていないと思います。これだけで、「ダーツやってて良かったなぁ」と思えますから。
本来、人見知りな僕でさえも、夏に北海道でゴルフ出来たり(笑)、色々な土地で地元の方々に料理やそこでしか体験出来ないことをさせてもらったり。

ちょっと寂しいなぁと思うことは、最近ダーツ始めた方々はこういう「交流」ってなかなかないのかなぁと感じています。
例えば、毎日ボードに向って上達するために投げるだけではなく、リーグに参加してみたり、地方の大会に参加してみたりと「少しの勇気」を出すだけで、今置かれているダーツの環境からもっと「広い世界」が広がるはずです。
そして出会えた人々とダーツの悩みを相談し合ったり情報交換だったり、一緒に上達して行く楽しみ。これが長くダーツを楽しむことの出来る方法でしょう。

この雑誌が創刊されたころは「集」。ダーツバーに夜な夜な集まり、勿論ダーツの上達もそうですがそれよりも人との「集」が楽しかった。
「オトナの部活」と僕は言っているんですけど、まさにそんな感じでしたねぇ。
「あそこに行けば、何か楽しいことがある」と毎日思えていたのがダーツバーだったかな。お酒を飲まない僕でも、そんな風に思えていた場所だったな。
今迄の生活スタイルも違えば、生き方も違う。ダーツバーで出会わなければ一生会うことはなかったわけですから。
そんな「接点」がダーツバーやショップには落ちている訳ですよね。
まぁ、いきなり声をかけたり気さくに話しかけるのは…そうお考えの方、勿論です。僕だって今でもそんなこと出来ません。
それを仲介してくれるのがスタッフ。そういう接点を繋ぎ合わせるのが一番大事な役割であって、延いてはお店の評判や利益にも繋がるのがここ。
これが昔のスタッフ達は間違いなく出来ていましたね。だから人が「集」っていた。
ダーツを始めた途端、一気に輪が広がった感じでしたからねぇ。

最近は、ダーツの環境も大型店舗となり、一人でもその日一日誰とも会話せずに投げられる環境になったことから「個」。
自分からその環境を望めば、それこそ1年間誰とも接触しなくともダーツを黙々とやり続けられる環境が出来上がった。これはこれで一つの成熟したカタチでしょうから、これがいけないとは全く思いません。
但し、個人的なものに特化するわけですから止めるのも非常に簡単ですし、それ以上の何かを得ることも難しい。
自分を「変化」させづらいんですよね。例えばライバルがいるから面白い訳だし上達も飛躍的な進歩を遂げやすくなるわけで、このライバル探しだけでも「個」というスタンスを続ける限りはなかなか難しい。
今迄色々な人の上達を観てきましたが「一人で上達した人はほぼいない」と言って良いかもしれません。
必ず、上達するにはその人にとっての「キーマン」がいるんです。それが常連なのかバースタッフなのか、今隣で投げている人なのか。
水たまりも流れがなければ澱む訳で、自分の環境が「水たまり」になってしまう可能性が高いのが「個」という性質ですよね。

そういう観点から、今「集まることが出来る」ダーツバーやショップはあるのかなぁ?
昔、僕は横浜のカジノドライブというお店をホームにしていたんですが、ダーツだけではなく常連しかいない時にはオーナー自ら「今日はDVDでも借りて来て、みんなで映画観ようか?」とか(笑)。ダーツ以外の色々なイベントがそこにあり、だからこそダーツを投げなくてもつい足を運んでしまうというお店。勿論、ことダーツになれば常連の中でも上手い人間が多かったので、熱い技術論やアレンジ論も展開されると。
ただ「奇を衒った店」では常連は増えにくいし、徐々に常連以外は行きにくい店になっていく。そういうお店もあっていいんですけどね。色々なカタチのお店があるからこそ面白いわけですから。
最近はどうなんでしょう?同じ様な店構えの同じ様なサービス、同じ様な対応のお店が多いのかな?
それに流されずに、自分の「ダーツ環境」を構築したければやはり「出会い」が必要なわけですから。
今、毎週レッスンを行っていますが、頃合いになると生徒さん同士を紹介してリーグに参加させたり、一緒に大会に行ってもらったりしています。
僕らが出来ることは、ダーツの技術を教えることだけではなくて、その人の環境を広げてあげることも重要な役割だと思っていますし、出来る限り接点を作ってあげることで、ダーツを好きになってもらえれば。

これが僕の過ごしてきた中で、貴重であったなぁと考える10年。

では、これからの10年を考えてみましょう。
目紛しく変わっているマシン競争の中で、芽が出つつあるのがディーラーさん達が考えている「マシンの多様化」。
ここ10年間の中で、ボード戦争というのは絶えず行われて来ているのは事実で、実際に僕も一時期は一つのダーツマシンメーカーの参謀的役割もしていました。これにより、現在「フリー」と言ってはいても今だに「戦犯」扱いされている訳ですが(笑)。まぁ、これは時代を生きて行く為に自分のやって来たことなので後悔はしていませんけどね。

それはさておき、徐々に一つのマシンに縛られるのではなく色々なメーカーを扱う方向になってきている。
これが良いか悪いのかは、これからの時代が答えを出すものなので、今の段階で正解不正解は誰にも分からないでしょう。
ボード戦争が行われている時というのは、本当の戦争と同じで資本が市場に多くバラまかれる時でもありますから、一長一短なんですね。
これに巻き込まれるのは心外でしょうが、よく見据えることが出来れば必ずこういう時に活路は開かれます。重要なのは、色々な情報を取得して自分で決断すること。
もうちょっと世界が近くなってくる可能性がありますから、海外迄巻き込んだ形で行われていくのかもしれません。
今でも、海外戦線は活発に行われていますがまだ、日本国内との直接的な関連性は希薄ですからね。これが密接にリンケージするようになると、大きな動きが起こるでしょう。

そして、グッズ業界。
様々なバレルブランドは淘汰されて、しっかりしたところが残っていくでしょうね。
現在でも開店休業状態のブランドが多いですから、この辺りが一掃されるのかもしれません。これは、新興ブランドに限ったことではなく、老舗と言われるブランドも然り。
ダーツバブル時代に大きく手を広げすぎたブランドは、現在非常に苦しい状況に陥っているはずですから。ランニングコストの圧迫による問題が大きいでしょう。
これによって、選手へのスポンサードも非常にシビアになってくると思います。
現在は「青田買い」として、物品提供のみのスポンサードも増えてはいますが、これでは最終的に選手が望んでいる金銭的な契約に結びつくのは難しい。徐々に、この物品提供も自粛傾向になっていき、なかなかスポンサー獲得には厳しい冬の時代が来るのかもしれません。
古い契約の選手達との契約終了をするように各社がなって来た時には、新しい選手達には逆にチャンスが到来するので、これも他のスポーツの様にシビアになることは正常になっていくということなのかもしれませんしね。

選手に関しては、もっと強い選手が出て来て欲しいですね。
誰も勝てない様な「新しいスター」が現在には必要だと思いますし、それを望んでいます。
その選手達に往年のプレイヤー達は負けて欲しくないですし、ここ10年で考えると上位陣というのはあまり顔ぶれが変わっていませんよね。
これにぶつかっていく様な活きの良い選手がどんどん生まれて来て欲しいですね。

業界的に考えると、ここ10年の動きを予測出来たかと言えば、正直ある程度は予測出来ていたので、僕的にはそんなに驚くべきことは起きないかもしれませんねぇ。
しかし、色々な変貌は遂げたとしても前述した様な「人との輪を広げる」というのは、もっと出来ることで更にはそのテーマはいつの時代にも普遍であると思います。

それが一人一人のダーツの可能性とこれからの楽しみ方を広げるファクターになるはずですので、ほんのちょっとの勇気を出してみて欲しい。
そうすれば、10年なんてあっという間に楽しく過ぎていくと思います。

接点を自分で作る勇気、頑張って下さいね。

DARTS MANIAX