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No.9 技術論最大の目的は出力(エネルギー)の効率化

2014年1月

2014年バージョンアップすべく様々な角度から考え新しい試みをしているプレイヤーさんが多くいらっしゃるのではないでしょうか?
技術論の体系化は複雑で一言で納まるものではありません。解剖学や物理学そして心理学に至る複合的な学問により構築されるものであり、故にワンポイントで一時的に改善されたとしても長くは続かず同道を巡ってしまうのです。

身体のメカニズムやシステムは本当に不思議です。しかし不思議なりにも知らないだけで解明されていることが沢山あり、難しいなりにも説明が可能です。この解剖学や生理学により解明されている事が何故精神論や脳科学といった解明されていない分野に飛び火するのかは、心理学といった分野が重要だったりする気がします。

「力を抜く」だけでは足りない
信用信頼した相手からのアドバイスによって得られる効果は「安心感」です。ある種成功哲学書や自己啓発本等を読んだ人は皆納得すると思います。しかし世の成功者の数は納得した数に比例しません。この納得し「成功した気になる」事で「一時的」な効果がスポーツには存在するのです。

心的効果は一時的なもの
この「安心感」「成功した気」により得られるのは技術的にもっとも重要な「脱力」です。しかし私はこの脱力という言葉があまり好きではありません。何故かと言うと脱力だけでは「不完全」で、上手くいかないと即「力み」に繋がってしまうからです。「力を抜く」という事がいかに重要かは誰でも分かっていることです。失敗が力みからくることも誰もが知っています。それを誰もが知っているにも関わらず永遠のテーマになってしまうのはどうしてなのでしょうか?
運動はある一定の出力(エネルギー)が必ず必要になります。例えば10必要だとしてその10の「配分」がどのようになっているかが重要なのです。ダーツ運動は軽い道具を使い近い距離で競うスポーツでそれ程出力(エネルギー)を必要としません。故に腕出力「だけ」でどうにかしようとする傾向にあるのだと思います。

ダーツ運動が一番イップスを発症する
私はダーツを通し所謂「イップス」という事象に対峙しています。この大好きだった競技が苦痛以外の何物でもない状況を目の当たりにする事で、イップスを発症する競技に着目し技術論を考えてきました。このイップス症状は俗に心や脳の問題とされ世間に間違った認識を与えています。本誌やASUKA DARTSブログで訴えるようになってから随分経ちますが、今では自信を持ってイップスの原因は精神論ではなく具体的な技術論もしくは解剖学により説明できるものだと確証しております。
テニスではフォアハンドでイップスを発症しバックハンドでは殆ど発症しない特徴があります。ゴルフのパッティングではロングパター(通常よりも長いパター)を使用しアンカーリングという手法を用いる事でイップス症状を改善できていましたが、ゴルフスイングの伝統的な性質を守るために2016年より禁止になる事が決定しておりゴルフ界の隠れパターイップスが噴出する事が予想されます。

具体的な失敗がイップスを発症させる
前述した通りイップス症状には具体的な特徴があり競技が違ったとしても原因は一緒で、軽い物ではメンタルケアにより根治することもありますが重度のイップス症状に関しては直らないと思います。それはイップス症状の原因がそもそも精神性のものではないという事です。あくまでもイップス症状になるからメンタルが落ち込むのであってメンタルが落ちているからイップス症状になるのではありません。

イップスの原因はメンタルに無い
イップス症状は間違った認識によりアドバイスが「狙うな」「ボードを見過ぎない」「適当に投げる」「勝ち負けにこだわらない」等の如何にも心的負担のない行動喚起の言葉が浴びせられています。ダーツでボードを見ず狙わないで適当に投げて勝敗を気にしないで何が面白いのでしょうか?もしくは普通に投げられている人は皆適当に投げているのでしょうか?それでも一定の効果があれば別ですがそれらを用いたとしても投げられない人は目をつぶっても効果を得る事は出来ないのです。

「分かった」は「分かっていない」
しかし真剣に取り組む事によりイップス症状を発症する可能性は高いと思います。高い技術を求め絶対的な力や安定性を求める時に皆さんはどうされるでしょうか?多分ですが何かの理論に飛びつき他者の意見にすがるのではないでしょうか?そして瞬間的に享受し「わかった!」と勘違いしてしまったのではないでしょうか?そうなると大変です。「わかった!」と錯覚したことから逃れる事はそうそうできません。場合によっては蟻地獄のように拘れば拘るほど逃れられないのです。
このように技術論には勘違いがつきものです。いかなるダイエット方法も長くは一世風靡できません。次から次へと新しい革新的な方法論が生まれては消え、場合によってはこの方法は間違っていたと逆説になり二元化三元化し何が正しいのか分からなくなるのです。

イップスと技術論には密接な関係がある
私は自分自身の体験によりイップスは精神論とは関係ないのではという仮説を三年前に立てました。私は腕が勝手に動いてしまうイップス症状に悩まされていました。しかし当時レーティングもAAあり、カウントアップでも1100点を超える事で周りには理解を得られませんでした。しかし本人には紛れもない「違和感」があり何となく「中指」が邪魔をしている感覚だけがあったのです。そうこうしているうちにダーツをやる上で支障をきたすようになり慢性的にダーツが「抜ける」「滑る」「ひっかける」ようになり、良かったり悪かったりを繰り返す事となったのです。
この状況があまりにも苦しくダーツ関連の仕事をやっていなければ間違いなくダーツは止めていたと思います。ただこの苦しみを改善できる方法を体現できればきっと同じような苦しみをしているプレイヤーさんにとって有益であると思い、客観的に自分を研究し始めました。

腕を振る・伸ばす・押すは不整合を生む
ダーツ競技の技術的ポテンシャルは比較的経験年数が浅い時にピークを迎え、長く維持できるプレイヤーさんは極々稀です。殆どの方がやればやる程下手くそになり、やってもやっても上手くならないのが現状で歯がゆい思いをされているのではないでしょうか?
これら状況を打開すべく重要な考え方として如何に主観ではなく客観的な学問により検証できるかにかかっていると思います。私のイップス論はイップス症状の原因を考察し改善していく事が元となっています。特にダーツ競技はイップスを発症しやすく、間違いなくあらゆるイップス症状を発症する運動の中で発症率はNo1だと思います。それが何故なのか?解剖学により説明できるのです!

腕は伸ばそうとするほど「伸びたがらない」
身体には自衛するための様々な「反射運動」があります。その中で「伸長反射」という反射があり、この反射は伸ばす運動を身体が制御するシステムです。
このシステムを使って脚気のテストは行われ、伸筋にアプローチをかけ筋収縮を促すと伸筋は停止し逆に屈筋が収縮するという反応で、腕においては腕を強く伸ばそうとすると逆に伸ばすことが出来ず曲がる方に筋肉は反応してしまいます。
この「伸ばす」という行為(運動)が筋運動にとって非常に悩ましい元凶となります。しかし技術論の中にこの「伸ばす」を助長するものが沢山ありイップス症状をかかえる方の全てに「伸ばす」「押す」等のキーワードが隠されているのです。

「勝手」に伸筋収縮し「勝手」にブレーキがかかる
技術論最大の目的は出力(エネルギー)の効率化です。効率よく身体を使う事により腕出力を抑える事が重要で、単に腕出力を抑え所謂脱力をしたとしても効率化されていなければ即腕の力みに繋がってしまい、その力みが意図しない反射を生む事で技術的に悩まされてしまうのです。その力みの発祥元が伸ばす行為(運動)を促す「伸筋」で、自分の意志(イメージ)にそった行動に対し出力が足らない場合それを補おうとし、その「勝手」に補おうとする事で伸筋は過度に収縮し伸張反射が起き「勝手」に腕にブレーキがかかるのです。
イップス論は解剖学や様々な客観的学問で説明するものです。理論はワンポイントで語る事は正直困難です。2014年も懇切丁寧に時間をかけ説明して参りたいと思っておりますのでどうぞ宜しくお願い致します。