Column_Darts de English_column_Top-9

No.9 「Ton 80の謎」

2014年7月

今年の梅雨は雨がたくさん降りましたが、いよいよ本格的夏到来ですね。あんまり暑いのは困りますが、夏らしい青空はやっぱり気持ちのいいものです。
さて今回のダーツ英語講座は、これまでのフレーズ解説から一旦離れて、ダーツ用語の謎について考えてみたいと思います。皆さんもダーツをプレイするとき、何気なくダーツの専門用語を使っていると思いますが、そのほとんどは英語から来ているものです。これはダーツ発祥の地がイギリスであることを考えれば当然のことです。しかし、ダーツで使われている言葉は、実はダーツをプレイしない英語圏の人にとっては、かなり謎の呪文のように聞こえるのです。
タイトルにもなっていますが、私たちは自然に180のことを「トンパチ」と呼んだりします。これは英語のton eighty(トンエイティ)と日本語の「八(はち)」が混ざった日本的な言い回しです。問題はこのtonなのです。トンと言えば、普通は1000kgとか1000ℓなどをあらわし、1000ではあっても100ではありません。これは英語でも同じなのです。tonには他に、「凄くたくさん」という意味があります。「Phil Taylor gets tons of fan mail!」(テイラーはものすごくたくさんのファンレターを貰う)というように使います。ですが、普通はtonには100という意味は無いのです。
ただイギリスの庶民の言葉に限っては、tonは100を表すことがあります。特にスポーツやゲームなどで使われることが多いようです。これは、「100マイルものスピードを出す」という言い回しから来ているという説がありますが、真偽は定かではありません。つまり、イギリスの庶民のゲームとして発展してきたダーツだからこそ、このtonという表現が100として使われるようになったんでしょうね。
もう1つ私が常々謎だと思っていたのが、スローラインを表す「the oche」(オッキー)です。どうして「the throwing line」(スローライン)がオッキーと呼ばれるようになったのかは、未だに色々な説があって本当のところは分からないのが実情です。そもそもこの「oche」と言う言葉、最初イギリスで1920年代に使われ始めたころには「hoche」だったんです。それが「oche」に変わったのは大体1950年頃からだと言われています。この変化については理解出来るような気がします。最初のhが取れただけですからね。でも、「throwing line」から「hoche」への変換は謎です。
「hoche」の由来には面白い説が幾つかあります。1つは、昔イギリスのパブで、つば(古い英語でhocken)を飛ばす大会(笑)が開かれていたのですが、人がつばを飛ばして何かに届くまでの大体の距離に「hockey line」が引かれ、これがダーツに取り入れられて「hoche」に変わったというもの。
もう1つの説は、昔イギリスに「S. Hockey and Sons」というビール会社があり、そこのビール瓶を入れる箱が、ダーツから9フィート(約2,7m)の距離を測り、スローラインを引くのに都合がよかったため、この会社の名前である「Hockey」からその呼び名が取られて、「hoche」、そして最終的に「oche」になったと言うのです。
しかし、残念ながらそんな名前のビール会社は存在していなかったということが90年代になって明らかになり、こちらの説はただの都市伝説となってしまいました。本当のところは分かりませんが、どちらの説もばかばかしくて、イギリスらしいユーモアにあふれているのがいいですね。
他にも、日本ではあまり馴染みのない面白い英語のダーツ用語は、驚くほどたくさんあります。長い時間をかけてたくさんの人達が、日々のプレイの中から色々な言葉を発展させていったのでしょう。イギリスダーツの歴史とプレイヤーたちの愛が感じられて、なんだか嬉しくなります。それ等の由来や起原を調べてみるのも面白そうです。
皆さんもたまには、普段使わない英語のダーツ用語を口にしながらプレイしてみるのはいかがでしょうか?もしかしたら、スコア向上にちょっとは役立ってくれるかも知れませんよ。保証はしませんけど。