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No.10 The big boys speak up! 「プロの言葉」

2014年9月

皆さんお元気ですか?異常気象と正式に決まってしまった夏がそろそろ終わろうとしてますね。今回のダーツ英語は、今号で特集したPDCの人気イベント「World Matchplay」との連動企画です。毎回トーナメント期間中選手達は多くのインタビューを受けるのですが、そのときになかなかいいことを言っていたりするんです。その名言や使える言い回しなどをここでご紹介していきたいと思います。
まずは、ファーストラウンドで調子よくケビンペインターを倒したサイモン・ウィットロックの試合後の言葉から。”It’s another boost to my confidence and my form is great at the moment. I feel amazing and it will take a very good performance to beat me this week. “「またもや自信がついたよ。今のところフォームも最高だし、今週俺を倒すにはかなりのプレイをしないとだめだぜ!」といったちょい悪オヤジ風の訳がぴったりきそうな、自信に満ち溢れたコメントですね。最初の部分の”boost to my confidence”は自信を増幅するという意味で良い表現です。
スコットランドが誇るダーツプレイヤーゲリー・アンダーソンが、強敵のルイスを素晴らしい試合の末に倒して準決勝進出を決めた時のインタビューフレーズもなかなか印象的でした。”I said in December that I was going to give it a good push this year, and I’m plodding along, just keeping quiet, and I’ll let the big boys worry about their darts and slip in the back door.”「去年12月に今年はもっと頑張るぞって言ったんだけど、あえてゆっくり目立たないようにしていたんだ。そしてトップを走るやつらが自分のダーツの心配をしている間に、僕は裏口からこっそり入るように、表舞台に復活したのさ。」去年は調子があまり良くなかったアンダーソンならではの言葉ですね。”slip in the back door”は裏口からこっそり入るという意味ですが、ここでは本当に裏口からどこかに入るのではなく、「表舞台にいつの間にか強敵が戻ってきている」という比喩的な言い回しですね。強くて有名な選手のことをthe big boysと言っているのも何か意図を感じます。
今回の優勝者であり9ダーツも達成したテイラーは、その偉業の後のコメントでこう話しています。”I feel confident and now that I’ve got things right I’ll be a different kettle of fish”「自信を持ってるし、今や全て上手くいってるから、僕はこれから別人のようなプレイヤーになるだろうね。」この発言は、新しいダーツを使い始めて調子がいまひとつだった彼が、この9ダーツで復活し自信を取り戻したことを教えてくれています。最後の”a different kettle of fish”は、変わった言い方ですが、直訳すると「違う魚を煮るなべ」という意味になります。実は「別のもの」という決まり文句なんですね。普通kettleと言うとやかんを想像しますが、イギリスでは魚を煮る長くて平たい鍋の事もkettleというのです。イギリス的な面白い言い回しですね。
今回初めてマッチプレイの決勝に出ながら、残念ながらテイラーの前に敗退したヴァン・ガーウィンは対戦相手を讃えて、” Phil was fantastic and he showed his class tonight. “「フィルは最高だった。今夜彼はその卓越振りを見せてくれた。」と語っていました。この表現は多くのプレイヤーがまるで定形文のように使っています。特に最後のclassという言い方が皆大好きなようです。classは日本語でも教室という意味でおなじみの言葉ですが、ここでは「卓越・優秀」という意味なんです。自分が負けても相手の素晴らしさを賞賛するときにはピッタリの言葉ですね。優勝は逃しましたが、ヴァン・ガーウィンはこの準優勝を手にした1週間後にめでたく結婚したそうです!
トーナメントが行われると、試合と同時に選手たちのコメントもなかなか楽しみなものです。しゃれた言い方をしたり、ことわざや成句を多用するプレイヤーもいます。でも、全部のプレイヤーに共通しているのは、戦った相手への配慮を忘れないことと、自分のプレイに誇りを持ち、そのことをしっかり人に伝えられる言葉を使っていることです。
人に尊敬の念をあらわす言葉は私達日本人も得意ですが、自分の成し遂げたことを正当に自己評価し、それをきちっとアピールできるようになれば、一流プレイヤーの仲間入りなのかも知れません。