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No.10 ダーツを選ぶ基準はどこにあるのか

2017年3月

ダーツを選びに来られるお客さんによく聞く言葉があります。「持った時にしっくりくるダーツ」とか「フィーリングにあったダーツが欲しい」など感覚的に表現されるダーツの基準。この感覚的なもの、これを具体的な言葉で説明するのはとても難しく、僕も理解するのに時間がかかるときがあります。

この感覚的な表現を理解するときに僕が心がけていることがあります。感覚的な表現がどこのタイミングのことを表現しているのかをまず確認します。ダーツを持って、構えて、投げるまでの動作の中で、どの場所での感覚を表現しているのか。ダーツを投げる動作は連動していますので、どのタイミングを重要視するかは難しいかもしれません。しかし、構えたとき、テイクバックしたとき、リリースしたとき、どのタイミングで何が「良い感じ」と感じ、重要視するのかは、経験値や歴によって深みがあるように思います。
それだけに説明も難しく、お客さんの感覚頼りになってしまわないようそのダーツの形の意味(推測も多いですが)やモデルとなっている選手のグリップを真似してみたり、お客さんと感覚という目に見えないものを出来るだけ共有できるように説明しています。

僕がショップに立っている経験上、この「しっくり」のほとんどが、ダーツを持っている状態だけで捉えている方が多いように思います。部分的にクビレやカットが施されているものなど、「デザイン上、グリップ位置が決まってくるもの」がしっくりくると感じることが多いようです。
あくまで、「持っている」というだけでの感覚になってくるので、試し投げの際、持った瞬間に「おっ!これ持ちやすい!」って思った場合、構えた時の安心感がもたらす「いい感じ」という評価に繋がるのです。

しかしながら、持ちやすいと投げやすいは全く別物で、「持ちやすい」と思って投げてみると上手くいかないこともあれば、その逆で「持ちにくい」と思って投げてみると意外に投げやすいってケースもよくあります。
逆にクビレのないストレートのようなバレルでも棒状の感覚が直感的に持ちやすく感じるという方もいます。バレルに「ここ持てっ」って決められることがない、ユーザーを選ばないタイプのバレルの方がグリップのバリエーションも試しやすいという考え方もあります。

実際、持つ位置が決まることが結果の良し悪しに直結しているのかと言えばそれだけではないと思います。

ダーツを飛ばす(力を伝える)上では「離す」(リリース)が重要なポイントになると思います。グリップがいつもと違ってもリリースで失投を阻止することができる場合もありますからね。

失投をいかに少なくさせるか。グリップが安定し、リリースを安定させることで、失投を減らすという考えかたがダーツを選ぶ基準の一つになると思っています。

ディースリーでは、お客さんがバレルを選ぶ際に試し投げができるように各取り扱いメーカーさんから試投バレルを提供していただいています。希望するお客さんには納得がいくまで投げていただきます。その中で「○○な感じで投げているように見える」などの見た目の情報を提供できるように心がけています。

スタッフによって多少のチェックポイントが違うとは思いますが、僕自身が接客している時は、「グリップ」と「リリース」をメインにチェックします。正直、「ブルに多く入った」という「結果」はあまりダーツを選ぶ基準としては見ていません。
グリップというのはダーツに触れている間の指の動き全般。ダーツを持って、構えて、テイクバックし切った所までの指の使い方です。構えたところから握りこんでくる人は構えたところからグリップ完了までに手の中でダーツの持ち方が変化します。変化するということも込みでダーツをどう支えているかです。

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リリースというのはダーツにどんな力を持たせるかの決定期です。弾道が直線に近いのか緩やかなのか。飛距離や角度、回転をかけるのか無回転なのか。リリースの邪魔をしている指はないか等の指の使い方。ダーツが手から離れた瞬間からは何もできません。それまでに何を行っているかという点に注目します。テイクバック時も含めての投げる動作をトータル的に見るようにしています。

ダーツの飛びやフォロースルーは、ダーツを投げる動作から作られる物理的要因によるもので、ダーツが飛んでいった場所は、投げ方の答え合わせのようなものと僕は思っています。すっぽ抜けている感じに見える時はカットのデザインを変えてみたりしますが、セッティングによる修正が可能な場合もあるので半分くらいはスルーします。ただ、やっぱりお客さん自身の持っているイメージがありますのでそことすり合わせることを重視しています。キレイかどうかや真っ直ぐかどうかもあまり気にして見ていません。

考え方として、グリップしたときの感覚を重視して選ぶ方が、リリースを重視して選ぶよりは理解しやすい選び方になるのではないかと思います。ですから、持った時のフィーリングでバレルを選ぶことは特に初心者の方にとってはとてもいいことだと思います。同じ位置を持って投げるだけで、同じルーティンが作りやすくなるケースもあると思いますし、その結果、ダーツが上達していく実感も得られることもあると思います。

自然に自分のグリップが作れるようになれば、徐々にリリースにも意識がいくようになり、同じようにリリースの感覚も作りやすいと思います。ある程度持ち方や支える位置が安定してきたら、リリース時にダーツにどんな力がかかっているかということを少しずつ気にしてみるのもいいかと思います。

しかしこういう視点からのバレルの選び方を望んでいる方ばかりではないのも実状です。ダーツの見た目のデザインや低価格なものなど、試し投げが不要な選び方で良いという方も多数いらっしゃいます。一番は、お客さんのイメージ・要望などを聞いた上で各々スタッフがアドバイスをさせてもらい、相談して決めてもらうようにしています。

今はダーツの形状やデザインが多種多様で、自分にとってどれが最高のものかを断定するのに時間がかかると思います。ある程度自分自身がダーツに対して順応していくことも必要ですし、気持ちの部分が「しっくり」くるものであることも大切だと思います。

ダーツが上達していくということは、感覚や選ぶ基準も上達していきます。投げ方に何か改良を加えれば、それはまたグリップに変化が出て来てもおかしくないですよね。その時にはバレルに対して求めるものも変わるかもしれないですし、グリップも変わるかもしれません。

このよう段階的にバレルを選ぶ基準を考えてみると、バレルの選び方の幅も広がります。グリップのしやすさとリリースのしやすさの中で、自分にとっての基準はどこにあるのか。そのプレイヤーが求める基準を増やすことで、より精度の高い自分にあったバレル選びができるようになると思います。