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No.22 あなたが教えているその人のダーツ人生に責任持てるんですか?

2014年11月

浅田斉吾がやりましたね。
日本人として初めてワールド・マスターズのステージ上に立っただけでなく、ベスト32の試合に勝利しベスト16という素晴らしい結果を残しました。
私もワールド・マスターズには2度応援で行っていますが、今回で41回と最も歴史のある大会らしくイギリス人選手の意気込みが違う大会のように感じました。
フェイスブックを見ると多くの人がPCの前で彼を応援していましたね。
それに応える見事なダーツでした。それにしてもステージ上の彼は非常に落ち着いているように見えました。
パーフェクトでの数々の優勝経験から、あのステージでも普段のパフォーマンス通りのダーツが出来たのかもしれません。

その浅田選手は今年PDCチャレンジには出場していないんです。
彼はBDOで活躍できるようになってからPDCに挑んでも遅くないと考えたそうです。
多くの選手が「夢はPDC」と言います。
浅田選手も同じ想いでしょうがBDOで結果を残してPDCへ向かう方が、PDCで活躍する為には近道と考えたのでしょう。
PDCに出るだけならPDCチャレンジの方が近いのでしょうが、「PDCで活躍する」と考えたら海外での試合経験を積んで階段を登った方が確かな道かもしれませんね。浅田選手のこの考え、私は支持したいですね。

この本が出る頃には今年のPDCワールド・チャンピオンシップの日本代表が決まっています。今年は誰になったのかな?
年末から来年初旬にかけてそのPDCワールド・チャンピオンシップだけでなく、BDOワールド・チャンピオンシップに浅田斉吾、BDOワールド・トロフィーに清水浩明と日本人選手が出場する事が決まっています。
ここでも今まで以上の活躍をして欲しいですね。

ここからは話題を変えます。
少し前にフェイスブックを見ていたら、ダーツの教え魔の事が話題となっていました。
恥ずかしながら私もダーツバーを始める前までは教え魔でしたね。
今思うとよくあの程度の知識で他人に教えていたなと思うのですが、知識が浅いからこそ教える事の難しさも知らなかったんでしょう。

イップスになり選手として限界を感じダーツバーを始める事にしたのが10年前。
その頃は私だけじゃなくまわりにイップスで苦しむ人が何人も出ていました。
店を始めた事によりダーツに関して、自分の事だけじゃなくお客様の事も考えるようになり、ダーツのフォームに基本って物はなく、人それぞれなんじゃないかと考えるようになったんです。
それからは、自分がイップスで苦しんでいるから、他人をイップスにしてしまったらと思うと、人にダーツを教える事が怖くなりました。
そんな辺りから浅はかな知識と薄い覚悟で他人にダーツを教えるのは悪だなと思うようになったんです。
そして店をオープンして1年位したところでイマジンでは「他人にダーツを教える事を禁止」にしました。
特に初心者に教えるのは私以外のスタッフも駄目って事に。
もちろん、彼氏が彼女に教えている場合は彼氏の顔を潰すわけにはいきませんので、余程難しそうな状況でなければ口を挟む事は有りません。
口を挟む場合も彼氏が投げているのを褒めてあげて彼氏の方を少しだけ楽に飛ぶように修正をして、信頼関係を作ってから。
それだと彼の面目も保てますしね。

とにかく教える事禁止の効果かはわかりませんが、自分でフォームを壊してしまった2名以外はイップスもなく、他店に比べると平穏無事な店ではないかと思っています。
ただね、お客様はずっとうちの店だけで投げてくれるわけではないんですよね。
ダーツを始めたばかりの女の子には「他の店に行ってもダーツの投げ方教わっては駄目だよ。教え魔がいるけど酒井さんに教えてもらっているからと断ってね。」と言うんですが投げ方を見ると変わっているから、他所の店で教え魔に教わった事が直ぐに分かるんですよね。
前までは自然な感じで立っていたのに、前のめりになったりサイドスタンスになったり。
ダーツを構える位置が目の前だったり。
肘が動かないように気にしてみたり。
リリースの時に必要以上に腕を伸ばしてみたり。
実はそんな事ダーツを楽しく投げ上手くなるうえでは、全く意味が無いどころかマイナスでしかないんですけどね。
それまでは楽に気持よく投げていたのに、投げ難いフォームを守ることだけに一生懸命になっているんです。
確かに初心者の女の子が投げていたら話しかけるきっかけにはなるから、「教えようか」と言いたくなる気持ちはわかるんですが、「あなたが教えているその人のダーツ人生に責任持てるんですか?」と言ってやりたくなりますね。

教え魔の存在は他のスポーツにも存在するのかと思って調べてみたのですが、多くのスポーツに教え魔は存在するようですが特に多いのがゴルフ。
「教え魔」をインターネットで検索すると9割近くがゴルフの教え魔ですね。
私はゴルフはしないのでわからないのですが、まあ凄いようです。
教え魔に共通する項目としてあげられているのが「自分は上手じゃない事」。
ダーツ界を見回してみても確かにそうですし、自分の過去を振り返っても確かに大して上手くない。
フライトで言うとBBくらいの人が多いんですかね。
ダーツは感覚的な部分が多いので、自分がやっている事しか教えられない人が多いんですよ。
イマジンに来たお客様で難しそうなフォームで投げている人が居ると「普段どこで投げているの?誰かにダーツを教えてもらった?」と訊くんですが、答えを聞いてああ彼が教えると悪い癖も一緒に教えられるんだと納得する場合が時々あります。
驚くくらい悪い癖が教えた人にそっくりなんですよね。
一生懸命練習しているから、それなりには入るんですが、イップス手前だったり、飛びが悪かったり…。
入ってもそれなり…かわいそうですね。
かといってプロの選手が人に教えるのが上手いかといえばそうでもない。
プロでも自分がやっている事しかわからない上に、ダーツの難しさを知っているから、質問には答えられるけれど教えられないって人も多いようですね。

先日大会会場で本誌でもコラムを書いている五十嵐さんにお会いしたので、イップスについて少しお話を伺ったんです。
当たり前の事ですが、人間の身体は元々ダーツを投げる為には作られていないんですよね。
フォームを意識し始めた時からイップスと隣り合わせの状態になるそうです。
そう考えると他人にフォームを教えるって事は、非常に危険な任務に立ち向かう事のように感じられますね。
本誌でお馴染みのKTM.さんや五十嵐さん、イマジンでダーツを教えてもらっている竹山大輔さんらは、人間の骨格や運動力学そして飛行力学なんかも勉強しながら他人にダーツを教えるんですよね。
それくらいでないと人にダーツを教えるって事は危険なことじゃないかと思うんですよね。
イップスの選手が多くて困っている店の方「他人にダーツを教える事を禁止令」出してはどうですか?
結構効果ありますよ。

ダーツ屋どっとこむ よろしくお願いいたします