2016年9月
2008年北京オリンピック。
男子競泳日本代表・北島康介は個人での金メダル2個と団体での銅メダル1個を掲げ、自身のアスリート人生について問われると次のように答えた。
何も犠牲にしていません。
何かを犠牲にしていたら、
続けることなんて無理です!
この発言は日本中に感動を与えるだけでなく、競技者アスリートとしての道を歩む者たちの、魂を揺さぶった。
2016年リオオリンピック。日本のメダル獲得数41世界第6位となり、日本のアスリートとしての技術と質の高さを誇り、2020年には自国開催となる「東京オリンピック」を執行する。
そんな折、皆様にも…または周囲で、一度は沸き立ったであろう思い。
いつかダーツもオリンピック競技へ!
今回はその「夢物語」について書かせていただきます。
先ずは何故私がそれを夢物語と言い切ってしまうのか…私の持論ではなく、事実に基づき解説します。
初めに、それは巷で幾度も囁かれているダーツ競技者達の「マナーの悪さ」や「飲酒」とは全く無縁の事。オリンピック競技として認められるためにマナーの向上は然程重視されていない…という数多の意識を覆す論説を前書とさせていただきます。
オリンピックの競技として認められる為には以下の基準に合致していなければいけません。
その第一科目が【男子においては少なくとも75か国4大陸で、女子においては少なくとも40か国3大陸で、広く行われている競技のみとする】つまりは、日本国内でどれだけ規模の大きな、または数多くのトーナメントが開催されていても、それはあくまで一国内での事であり、これだけでは基準を満たしているとは到底言えません。
オリンピック最低基準4大陸とは、世界6大陸(オセアニア、アジア、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカ、南極)から南極を除く5大陸(五輪のシンボル)の中での4大陸です。
ここで目を止めるのは、アジア・アメリカ・ヨーロッパでは無論ダーツは競技としての基準に達しているとして、オセアニア(オーストラリア)大陸もしくはアフリカ大陸(国はエチオピア・エジプト・ウガンダ等)の中でも、ダーツが競技として浸透しているかという疑問。
そして男子75か国…世界206か国の内1/3以上の国々で、果たしてダーツが国民の「競技」となっているのでしょうか。
現代日本で10代から30代(様々な競技に最も適した年代)の道行く人に「ダーツをした事はありますか?」と聞けば、大半の人が「はい」と答えるでしょう。ですが、同じ人に「カーリングをした事はありますか?アーチェリーをした事はありますか?」と聞いても「はい」と答える人は少ないでしょう。国内で決して競技人口が多いとは思えない競技であってもオリンピックの種目として認められているのに…それはダーツが一般的には「競技」としてより「遊戯」として認知されているからではないでしょうか。
そしてもう一つ、是こそが最も重要な科目【オリンピック競技のプログラムに含まれるためには、公式に認められた国際的な地位を持つものでなくてはならない】文面を読むだけでは理解し難いですが、平たく言えば「東京オリンピックでの競技種目を新たに申請できるのは、日本オリンピック競技会(JOC)に加盟している団体である事」です。
日本全国に、プロアマ問わずソフトハード問わずダーツの競技団体主催団体は存在しています。ですがどの団体もJOCには加盟していないのです。
故に、日本では未だダーツをオリンピック競技へと申請する資格すら持っていないという現状。
2020年の東京オリンピックでは、新たに5競技18種目が追加されると発表され、中でも注目を集めたのが野球・ソフトボールとサーフィンでした。この時に選考で落ちた競技には、カバディ・スケートボード・ボーリング・ビリヤード等がありました。
お気づきでしょうか?そうです、
ビリヤードは東京オリンピックの競技候補に挙がっていたのです!
繁々ダーツと並べ比べられる事の多いビリヤードですが、その歴史は古く日本での競技団体の設立は大正15年、昭和26年には公益社団法人となり、平成9年(およそ20年前)JOCの正加盟団体となりました。
現JOCには、正加盟団体53、準加盟団体5、承認団体5が加盟されています。東京オリンピックでの正式種目に認定されたサーフィンは承認団体です。
ただ加盟するにも審査があり、さらに許可が下りれば加盟金と年会費を支払わなければいけません。正加盟団体は60万円(オリンピック競技団体は120万円)と年会費は毎年10万円となります。
加盟団体として承認されても直にオリンピック競技としての申請ができるわけではなく、その競技が国内でどのように普及し活動しているかを数年に渡り実績を残さなければなりません。
追い打ちをかけるかの如く【競技がオリンピックのプログラムに加えられる承認は、当該オリンピックの少なくとも7年前までとし、以後この変更は認めないものとする】とあります。つまり、東京オリンピックでダーツを競技申請するためには、2012年ロンドンオリンピック開催時には既に実績が充分にあるJOC加盟団体として申請していなければいけなかったのです。
実績を積むための数年と、次々世代のオリンピック競技の候補に挙げる申請の為に7年、今日の今から動き始めたとして最低でも「10年」を要します。これが現実です。
余談ではありますが、2012年ロンドンオリンピック(イギリス)での追加競技は2種目。その際の選考で主催地イギリスからは、ダーツは競技の候補にも挙げられてきませんでした。
ダーツをオリンピックへ…私がそれを夢物語としか思えないのは、日本のダーツがその第一日第一歩すら未だ踏み出せていないと感じているから。
強く儚き者たちよ
千代に八千代に
夢をつむげ