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No.38 「よくここまで来たもんだ」と感心しきりです

2018年1月

トッププロになるまでは、目標があるのでこの世界はまだまだ先があるように見えるし、確かに以前と比べると「夢」のある職業になりつつありますね。
何千万も稼げる商売になったというのは、例えそれが数少ない一握りの人間に与えられるものであったとしても、実際に稼いでいる人はいるわけだし、プロになった時に誰もが考える「ダーツだけで食べていける」夢、目標というのは今現在確かに可能。
可能と描けるようになったのは、プロ団体及びそれをサポートするメーカー乃至ディーラーの尽力であることは明白で、昔からこの業界にいる僕としては「よくここまで来たもんだ」と感心しきりです。

しかしながら、これ以上のパイを広げるのには限界値に達しているのではないかというのも迫っている事実で、非常に危うい状態であることも今の現状を物語っています。
これから上を目指している人には、是非理解しておいてもらいたい、理解しておくとメーカー側との関係が良好となり、自分にプラスになる知識として頭の片隅に入れておいて欲しい情報を説明します。
先ずは、高騰しすぎたスポンサー費。結局業界内自転車操業を払拭出来ないこと、その他色々と問題は山積みとなっているのですが、まずはスポンサー費の正常化が大事なんではないかと思います。
選手にすれば「もらえるうちにもらっといたほうがいい」。これは確か。でも、会社としてメーカーを維持するのには儲けなければならない。選手が考えている以上に会社運営には経費が嵩むし、「何セット売れたから自分はこれぐらいもらって当然」というティーンエイジャーみたいな発想では結局メーカーとの軋轢を生むことになりかねない。
例えば、定価が10、000円のものが年間1、000セット売れたとしましょう。単純計算すると一千万円。敢えて漢字で表記したのはこっちの方が目に入りやすく理解しやすいかなということで。
ただ、これはメーカーダイレクトで売れた場合。実際にはメーカーダイレクトではこの10分の1売れればいい方です。多くは卸売になりますから、5〜6掛けで卸すことになります。
そうなると売上は500〜600万円。ここから原価を差し引くと、まぁ今だとレアメタルになっているタングステンを使用しているので、パッケージ・メーカーによってはシュリンク込みで2、500円から3、000円となります。
勿論、最初からガバッと多く製造しているメーカーもいますからこの原価は下がりますが、大体は海外のOEMなので下がったとしても1、000円くらいでしょう。
ということは、メーカーの売り上げは1セットにつき2、000〜3、000円というのが妥当な所で、下手したら2、000円切る場合もあります。
ここから選手のスポンサー費を捻出し、その他運営費及び人件費を賄うわけですからそんなに儲かるわけではないんですね。
これがスター選手ばかり抱えているならば別、一方では売れないモデルも出るわけでその赤字補填等考えたら、年間でそんなに利益が上がっているわけではないんですね。
で、ここはメーカーも陥る罠が潜んでいるんですが、「滞留在庫」というメーカーからは出ているんだけど、市場に物がダブついている状態が起きる時があります。
発売して当初は飛ぶように売れたので、多めに仕入れたりしたものが突然売れなくなって行くと起こるんですけど、これはそれぞれバイヤーの力量に掛かってくるわけですが、これが在庫として市場にダブつくと、新しいモデルが出た際には、小売店がイニシャル(最初に発注する量)を抑えてくるので、メーカーが想像していた数字に届かないでスポンサー費とのバランスが悪くなる状態が起こります。
では売れるためにはメーカーも躍起になるわけですが、せめてSNSの多用だったりポスター配布くらいなので、そんなに効果が大きく出る、そして瞬発的に出るものでもない。ここで意外と選手が宣伝に協力してくれない場合が多いのがよく見る光景。
選手は優勝しまくるか、人気がどんな形でも上がるかを必死に模索しないといけないんですが、そういうバランスの良い選手は少ないですねぇ。
勝ってない選手は特に自身のプロモーションに頭を悩ませないといけないんですけど、中途半端な成績を残している選手ほどトッププロばりの変な余裕を見せている場合が多い。
そうすると、ある時に一気にメーカーから切られる時期が訪れます。それから焦ってももう遅い。
何回も話していますが、スポンサーも商売です。パトロンなわけではありません。
なぜかここで「ダーツだけで結果出す」という思考に陥る人が多いんだよなぁ。
メーカーも成績が出てなくても、その他のこと頑張っている姿が見られればそう簡単に切ることはありません。
特に日本のメーカーだとメーカー側も欧米型になっていないので、バサッと切ることは少ない。
もう今は僕はフリーの立場なので、相談されればその選手のポテンシャルを言い切ります。その人に嫌われても、その選手のいまの状況と周りへの影響は自分ではわかりませんからね。
その選手がもうちょっと稼いでもいいんじゃないと思えば、金額の交渉をすればとアドバイスするし、その選手が思っているほどの影響力でなければ、減額されないように自分をもっと出せとアドバイスもしますし、SNSの使い方が下手(多くは面倒でやらないだけと売り上げに繋がらない無駄な発言が多い。かといって、告知や販売促進の書き込みだけだとこれも売り上げに繋がらないから難しいんですけどね)な人がいれば、それを指摘します。

スポンサーを受けている人は休んでいる暇はないんです。
365日スポンサーを受けていることを念頭に置きながら、翌年の評価に繋げなければいけない。
そういうのが面倒な人は、スポンサーを中途半端につけないことですね、至極簡単。
お金もらって自由に動き回れるのは一部の、今まで結果を出して来た人間が出来ることで、そういう人たちはちゃんと見えないところでスポンサーの為に動いているし、スポンサーもそれを理解している。
表でも裏でも面倒だなぁと思う人は、賞金だけで稼ぐ方法を模索しましょう。そうしたら、誰にも文句言われないし「契約」という面倒と思っているものに縛られませんからねぇ。

DARTS MANIAX