Big Baby_column_Top-11

No.11 なんたって最高の店なのだから

2018年5月

Big Baby_column_No.11-1

僕にとっての行きつけの店の条件はただ一つ、いつもの場所にいつもの顔。ただそれだけ。
そこに特別なものなど何もなく、ただそこに「いつもの」があればいい。
そんな雰囲気を持つお店が名古屋にもある。
名古屋は名東区極楽にあるCountryHouseだ。

OPENしてからどれくらいたつのだろうか、僕がお店に行った時にはもう30年は過ぎていただろう。
カウンターにはいつもの秋爺がいる。名前なんか知らない。みんな秋爺と呼ぶ。
店内はアメリカのBarのような雰囲気でボードは2面ある。と言ってもしっかり使えるのは真ん中のボードだけだから実質は1面か。
関東や関西などでよく見る、ずらっとボードがかかっていてきれいなお店というわけではない。
むしろその逆。30~40年前がそのままそこにあるようなお店なのだ。

フードはないし、秋爺は何か足りなくなれば客を置いて買い出しに行ってしまう。
誰にもらったわけでもなく、いつも酒を飲んでいるものだから、夜も遅くなってくると口数が多くなってきてなにかと五月蠅い。
しかも呂律が回っていないから相槌を打つしかない。
でもなぜだろうか、また行ってしまう。
名古屋でスティールをやるならどこがいいかと、たびたび聞かれるのだが、このお店は勧めない。
なんたって僕の秘密基地みたいなもんだし、投げるということを目的として行ったならがっかりするだろう。
もちろん僕はもう慣れている。なによりも秋爺が好きだから行くのだし、ボードがあればどこでだって投げる。
ただ客が8人入ればもう狭く感じる程度の広さで、お世辞にも広いとは言えない。
ドリンクだってペットボトルから注ぐ姿は丸見えだし、氷だってコンビニのかち割り氷だ。
たまに気分がいいとチョコレートやお菓子をひょっこり出してくれるところがまた愛くるしい。
もし自分が狙っている女の子と行くならば22:00までだろう。それまでは目いっぱい自分をほめてくれるが
それ以降はべろべろで何を言っているのかわからない。
リーグの時のヤジで、プレイヤーから五月蠅いといわれている光景を何度見たか。
でもなぜだろうか、また行ってしまう。
Wood調の店内と壁にかけてある年代物のネオン、そしてステンドグラスでできたランプから漏れるオレンジ色の光がまた最高の雰囲気を醸し出す。
この時期はドラゴンズ戦があれば、一人でぼやきながら試合を観戦する秋爺にも見慣れた。

今年でもう70歳だったか、長生きしてほしいものだ。
もし自分が店を始めるならCountryのような飾らなくても長く愛される店を目指すだろう。
なんたって最高の店なのだから。