Big Baby_column_Top-10

No.10 PDC ASIA TOUR KOREA 参戦記

2018年3月

空港で待つこと3時間、やっとLINEにはいってきた。「着いたよー」の文字で僕は短いながらもまた彼との3日が始まったなと思っていた。

待ち合わせ場所にはスタジャンにティアドロップのサングラス(トップガンのトムクルーズみたいなやつ)に太めのデニムにブーツの装いで怪しさMAXの彼が待っていた。「久しぶり」と軽く挨拶を済ませれば僕たちの挑戦記が始まりだ。彼の名前は「山田勇樹」(以後山ちゃん)言わずと知れた日本ダーツ界トップクラスの選手でありクレイジーボーイである。
着いて早々にショッピングモールで買い物を済ませて韓国料理を食べたいとのことでご飯屋さんに入る。僕と親しい人は僕が辛いものを食べるとかなりの確率でピーピーになることを知っていると思うのだが、彼は容赦なく現地の人が「辛いからやめておけ」と言っていたものを頼む。直後にピーピーになるのを覚悟して。
初めて韓国に降り立った感想は日本とはあまり変わらないかなといったところだろうか。沖縄より近いんだから、それもそうかと思いながらTAXIから覗く街並みやハングル文字。試合前なのか、なにかいつもと違う高揚感のようなものを掻き立てた。
基本的に山ちゃんとはホテルにこもりっ放しのダーツニートになるわけなのでホテルに到着する前に滞在分のお菓子と飲み物をとりあえず買い込む。もちろん足りなくなったり、勢いで買ったりするものもある。ハズレ商品もあるから、その時のためにホテル周辺のコンビニは要チェックだ。幸いセブンイレブンとミニストップは近くにある。
ホテルに着くと初めて一息つく。普通ならここからどこか街へ出たりみんなでご飯に行ったりするものなのだろうが、僕らはすでに食べてしまっているし、その必要もない。荷物を片付けて試合の用意をすれば、各々が無言のまま携帯イジイジタイムが始まる。そんなこんなで

1日目は移動日ということもあり、何事もなく終わる。
2日目の朝、いつもの癖からか僕は朝早いので一人でムクッと起きて準備を始めていると山ちゃんも起きてきてシャワーを浴びる。イギリス滞在中に「男はポマードでビシッと」と山田イズムを刷り込まれた僕はもちろんのことポマードで頭を固めるわけだが、当の山ちゃんはハゲを気にしてか、そういった刺激が強い整髪料は使わなくなったようだ…なんとも悲しい。
そして今回から山ちゃんのユニフォームが変わっていたのだが(スティール用)背中一面に、ダーツ界で一番有名なサンドウィッチ屋さんであろう「ヤマダサンド」のデザインがはいっていた。どんだけ宣伝したいのよと思いながらも、サンドウィッチに人生をかけていると豪語する山ちゃんの熱意はものすごいので僕は応援する。あ、ちなみに3月下旬には福岡に店舗も出すみたいなのでみなさん要チェック、とらしくもない宣伝を。
話を戻そう。試合会場までは約1.5キロなのでTAXIを使わずに歩いて行くことにした。朝の韓国は日本と同様に肌にしみる寒さはあるが5分も歩けば平気なのでいい準備運動だ。会場はスポーツアリーナの中にあるが到着して思ったことは机がないこと、寒いこと、オキがないこと、タブレットが設置されていること、なんかいろいろ思うところがあったのだが要するに僕がイメージしていた、あのイギリスで経験してきた環境はなかった。
多少予想はしていたがこれにはやはりショックだった。出落ち感は否めないもののとりあえず練習しようと準備をしてボードの前に立つとやはりオキがないことに違和感を感じる。
いつも日本国内で使用しているダーツスタンド(L字型)なのだが普通は下辺が、支える役割とともにオキの役割を果たす。今回のそれは下辺が1m20・cmほどしかない、ん?と思ってよく見ると「あ!これ伸ばせるやつじゃーん」と気づく。安堵したのもつかの間、ビーっと伸ばしてみると引いてあるスローラインから10・cmほど前のところでビタッと止まる。40面全て伸びきらないスタンドになってしまっていた。いろいろなプレイヤーと同じく、次回からは設置してほしいという要望はここで表しておきたい。
さて今回のツアーからは点数計算の際に新しいアプリ、Dart Connectを使用するのだがこの使い方も、始まるまではわからなかった。僕も堕ちすぎたおバカではないので1度経験すれば卒なくはこなせるのだが操作云々よりも、他のアジアの国の人たちはスティールの計算に戸惑っていたようだ。
スティールでいえば初歩的な計算もまだまだスティールが浸透していない地域のプレイヤーには難しいのだろう。少し前の日本と同じ状態なのだから僕らは見守るしかない。
僕は一回戦目のチョーカーだったのだがプレイヤーとして現れた女性に目を疑った、Tシャツ、デニムにスニーカというスーパーカジュアルウーマンだった。
いやいや、日本ではみんなユニフォーム規定や靴に関して不安だからと、いつもと違うユニフォームを着てきたり、革靴を履いてきたりしているんんですけどぉ!。  運営に1ミリぐらいの憤りを感じながらも、まぁいいかと受け入れてプレイヤーたちに「練習してください」と声をかける。練習スローが終わりコークなのだが、ここでもダイナミックカジュアルウーマンが炸裂しており、1本目はチョーカーの僕の体ギリギリに飛んできてサラウンドの淵ぎりぎりに刺さるという流石に仰け反ってしまわざるを得ないショットで僕の心に攻めてきた。
彼女からの「ソーリー」でなんとか気を持ち直し試合を始めた。チョーカーは慣れているのでさほど苦戦もせずに終わり、いよいよ次の試合なのだがチョーカーの後に休憩なしで試合を入れられてしまうので、これはこれで気持ちのコントロールが難しく感じた。

一回戦目は勝利を収めたが2回戦で地元のプレイヤーに負け。ハプニングが起き
た。BEST32をかける試合まではBest・of7なのだがそれ以降は9になる。僕の2回戦目はまさしくフォーマットが変わるラウンドだったのだが僕と対戦相手、チョーカーの三人がみんなBest・of7だと思っていた。もちろん確認しない僕らが悪いのだがコントロールは何も言わない。
先に4つ取られた僕は負けてしまったなと二人に握手を交わし席に戻って、ぼーっとしていると、スタッフの方が「あ、あと1レグの残ってるみたいなんだけど…」と。ケースに片付けたダーツを再度用意して、よしこれからだ!と気合を入れてボードに向かうもチョーカーからいきなりの「ゲームオン」の声が。1スローもなし?と思ったが、まぁ相手も同じだし、いいだろうと試合を始める。
結果は何も言えねぇである。ちなみに山ちゃんは安定感抜群のダーツで勝ち進み惜しくもBest8。今回トッププレイヤーの多くも参加していたが、上位のダーツを見ているとやはりまだまだ自分には足りないものが多いなと痛感する。
悔しさもあるが、くよくよするのもふてくされるのもエネルギーの無駄なので山ちゃんと早々にホテルへの帰路につく。ちなみに僕はアルコールを嗜まないのでダメージはないのだが、嗜むプレイヤーを見ていると本当に命掛けてダーツしてるなと感じる。僕は朝からなにも食べていなかったので、帰路の途中でピザを買ってホテルで一人で食べた。なぜ一人かって、山ちゃんはホテルに着くなりお酒でダウンしてしまったからだ。

さて3日目の朝は山ちゃんからスタートである。1日目にホテルに着いて早々死亡しているので、起きるのは必然的に夜中でしかも空腹で起きる。本能のままに生きている男、それが山田勇樹だ。
2日目と同様に準備、そしてもちろん歩いて会場へ。トーナメント表もアプリを使用してドローされたものを確認できるのだが、さっと確認すると参加人数が50人も減っている。
同じ日に韓国のPerfectの開幕戦らしく地元のプロはごっそりそちらに行ったわけだ。なにもこんな日にとは思いつつ会場内は日本人だらけで、もうこれは海外の大会なのかと思ってしまうほどの日本人率。
日本はレベル的に見てもアジアトップクラスだが、そこに君臨しようとしてるのは日本だけではない、フィリピン勢がいる。もちろんかれらにはPerfectなど関係ないので、強い人たちがぎゅっとなっただけ。
そんなわけで試合に移るのだが当日は1回戦敗退で終了。次のラウンドにポールさんがドンッと待っていたからやりたかったのだが負けてしまったものは仕方がない。海外の大会は負けたらチョーカーは当たり前なので僕はポール・リムさんの1回戦のお手伝いへ。
フィリピン対シンガポールという、なんとも見応えのある組み合わせで、相応のダーツをお互い繰り広げていたが、試合前の注意事項の説明でPDCから来ていたラスが「隣で試合してるんだからあんまり叫んで喜んだり悔しがったりしたらだめだよ」というお告げがあったにもかかわらずポールは「カモォォォォン」的なステージ。
で見たことあるアレをばっちり披露していたのはレジェンド忖度が働いているのだろうか。
試合はフルレグでポールが勝ち。それで僕の韓国遠征は終わり、次のマカオに向けてまた練習を積むだけだ。
山ちゃんはどうかというと、しっかりと勝ち進んでいたが惜しくもBest16。悪くてもそんなとこまで行ってしまうところは流石だ。
敗退した後に同じく惜しくも負けてしまったグリコさんとせいやさん(朝倉聖也プロ)とでステーキを食いに行った。ホテルに戻ってからは、いつものようにダウンした山ちゃんを横に携帯をそのステーキレストランに忘れてきたことに気づいて、往復1時間の道を歩くことに。

帰国日、僕の飛行機は遅めなのだが、山ちゃんは早い。朝一緒に出発して僕は趣味の写真を撮りに明洞と東大門市場などを散策して空港へ。飛行機を待っている今、こうして記事を書いている。
いよいよ始まったPDC Asia Tourは選手目線から見ても課題だらけの大会であった。ただそういうことは他の方が伝えてくれると思うし、僕は僕なりの取り組みを記事にした。ただ次のマカオでも同じような感じであるならば問題提起をしてより良い方向へ向かってもらわなければならない。なんたって6月には日本大会が控えている。
久しぶりに海外の大会を山ちゃんと過ごした。イギリスでの1ヶ月のように、なんだかんだ言って学ぶべきところも多い。彼は間違いなく日本を代表するダーツプレイヤーなんだなとますます思わされた。
自分も追い越せるようにまだまだダーツライフを楽しんでいこう。次はマカオ編で。

追記 NDL15周年おめでとうございます。