No.49 「ちょうど中華テーブルに座れる人数」

2019年11月

まぁ、今年もあっという間に年末が近づいて来てしまいました。
なんか毎年の事ながら、結局ろくな休みもなく働いていた気がするなぁ。
別に僕的には非常にありがたい事なので良いんですけどね。何もないより常に締め切りに追われている方が気が楽ですし。

年末はゆっくり出来たら良いなくらいの気持ちでいるので、12月は比較的珍しく土日で空いている日が2週あるのでちょっとは気が楽ですかね。
その代わり11月は怒涛の出張と年末進行でのラッシュになる訳ですね、大体。それもそれだけ必要としてくれるという事で感謝ですけどねぇ。問題は来年の仕込みを中国の旧正月の関係で、今から計算していかないといけないことくらい。んでもって結局は休みといっても、家で作業している訳ですけどね。
今年が一番色々と忙しかった様な気がするなぁ。自分で自分の首を絞めている様な件ばかりなんですけど(笑)。
来年のロードマップもある程度は出来てるので、今年よりは楽出来る様な気がします。その前に色々と決断したり契約したりしないといけないこともあるんですけどね。

例えば、来年の選手契約。
これが一番重要になってくるんですけど、そろそろ次のステップに進む為にバスケットボールに例えると、「新しいロスター」を考えなければいけない時期かもしれません。
選手の方が契約としては「どこを選ぶか」という話になる場合が多いんですけど、僕の関わっているメーカーの場合には基本的に対等な立場を貫いているので、来年度だけ通用するロスターではなく、これから2〜3年を見据えて考えないといけない。
大きなメーカーならば布陣が揃っている場合が多いのでいいんでしょうけど、小さなところはそういうわけにもいかないんです。
メーカーを維持するというのはビジネスなので、こちら側もそれ相応の対処が必要ですし。
これって「不要な選手を切る」という言い方をされる場合が多いんですけど、単年契約の場合でも365日ある訳ですから、余程「飼い殺し」状態になっていない限り、メーカーも見ていますからね。
「切る」というよりも、「合わない」という言葉の方が正しいかもしれません。
こちらが想像している以上に貢献(これは試合の成績だけではありません。)してくれている選手であれば、試合結果がどうであろうと翌年の期待値を込めて契約UPもあるし、逆に結果をそこそこ出していても、メーカーに愛情がないと思えば、それはそれで他に行って下さいとなる。
大体は普通に契約条件守っていれば契約更改という形になるでしょうし、もしその選手が他からの打診で移るという以外は「日本式」ならばあまり大きく変わることはありません。
爆発的に選手が活躍して、もっと良い条件提示で他に移るというのも当たり前のことですし、メーカーとしてその選手の年棒と選手が考えているものが違えば、これも契約は終了となる。
勿論、メーカーと選手の繋がりが強くて、他のメーカーの提示を断る事例も沢山あります。これは普段からどれくらい関係性が密にあるかという表れでしょうし、日本的で考えるならば美しく見えるでしょうね(笑)。
でも、最近は欧米と変わらず選手がどんどん変わっていくことが多いですよね。それだけ活発になることはいい事だと思います。
かたや「メーカー愛」が強い選手なんかは絶対に離れないでしょうし。これもそのメーカーが選手頼りになるのではなく、選手がいなくてもちゃんと一本立ち出来ている状態であればそういう例が多い。

この一本立ちのためにMAX契約を何人と結んで、ロールプレーヤー何人と契約するかでだいぶ変わってきます。
バレルメーカーってそんなに儲からないですからね、今や。なので、設定されているわけではないのに「勝手にキャップスペース(年間に」選手に払える総金額)」が決まってしまうんです。
突然爆発的にヒット商品が出せればいいんですけど、そう簡単にもいかないし(笑)。
僕自身も厳密に言えば「外注」ですから、来年度の契約があります。まぁそんな話にはならずに気づいたら毎年通りになっていますが。

とにかく、そろそろザワザワとしてくる時期になるわけですね。
もう慣れたので誰がどこに行こうがあまり驚きとかはないですけどね。「あ、そうなんだ」程度の感じにしか思わなくなったというのは麻痺しているんだろうか。
そういうビジネスライクな動きもユーザーにとっては面白いし、逆に年数を重ねていく毎に信頼性が高まっているのが分かるメーカーと選手の関係も見ていて面白い。
どれが正解かなんてないんですけど、安定しているメーカーはやはり見ていても安心というか製品にもそれが伝わる感があるかも。
それか自由にやりたかったら、下手にスポンサーつけない方がいいし。そういう選手も増えてくれる様な気がします。まぁでも大体はその選手に「魅力」があれば付くとは思いますけどね。
これは実力だけではなく、人間性も問われることが多いので気をつけましょう(笑)。

とにかくゴシップとしては一般ユーザーからしたら、非常に面白い話題でしょうけど、主力選手がいなくなったメーカーとかは大変な事態に陥ることも多々あります。それでメーカー自体がなくなってしまう可能性だってあるし。
でも、これメーカーの中にいるとわからないんですよねぇ…。選手で持っているブランドを誰もが認知していても、当の本人(メーカー)は気付いていないとかね。
それまでにヒット作をどれだけ持っているかが、非常に大きなポイントになりますね。
いわゆるブランドオリジナルがしっかりしているところは、そうは簡単になくならない。老舗ブランドが大体そういう場合が多いんですけど、選手モデルの売り上げの方が伸びてくると、危険信号だと僕は思っています。
ちょうどいいバランスで売れているのがいいのかな。
逆に選手モデルが大幅に売れていない場合には、選手を総取っ替えしても変わらないわけですから。
実際、その辺のバランスは年単位で見ていますね。製作側から言うと。なので、来年はオリジナルモデル増やす方向でやろうと思っているメーカーもあるし、逆のしかりでオリジナルバレルが比率的に売れすぎていると、選手の入れ替えを考えたりもします。
メーカー自体が廃業しても困りますからね。その辺のバランスはしっかり想定しておかないといけない。
それを応用して、選手が育っていくまではオリジナルモデルで引っ張っていって、選手の育成を待つとか、選手モデルの売り上げにぶつからない程度にしておいて(選手へのインセンティブ低下防止)その時々に出すとか。

面白いのはどちらも共存というのはなかなか出来ないんですよねぇ。冷静に考えると。
まぁ日本のブランドの9割がOEMですからそういうことが起きるんですけどね。ブランディング勝負になるか、販路をいかに増やすかという流れになってくる。
ブランディングに成功していると利益率が上がるし、販路拡大はいわゆる「薄利多売」状態になるのでよほどの勝負を掛けないとキツくなる。
資金力が圧倒的にあるならば販路拡大路線でもいいでしょうけど、今の事情に合ってない気がします。
それはお金をたんまり持っているメーカーにしてもらって、ブランディングで利益率をあげた方が今からでも参入出来るのかなと。

僕が考える小さなメーカーの選手を抱える人数は「ちょうど中華テーブルに座れる人数」くらいがちょうどではないかと思います。
そうすれば、メーカーが各選手のプロモーションに力を入れられますしね。30人もいたら、逆にユーザー側もわからないでしょうし。

少数精鋭で行くか、ドバッと選手層の厚さを見せつけるかですかね。僕は両方やって来ましたが、少数精鋭の方が向いているかなぁ…。
そちらの方が各選手との意思疎通も取りやすいし、色々と面白いこと出来るし。
なので、僕が絡んでいるメーカーの布陣がガラッと変わることがあれば、「あ、何か仕掛ける前触れだな」と思ってくれれば。