No.48 ジストニアという病気

2019年9月

ジストニアという病気って言って良いのかな?
とにかく先天性と後天性があって、2011年頃からかな?なんか指が上手く動かないなぁと思いながら生活していました。
この頃はちょうど、色々な事で企画書を製作する機会が多い一年だったんですね。
最初は、今まで使用していたキーボードから新しいものに変えたので、それが原因かなと思っていて深くは考えなかったんです。
「まぁ、そのうちにこれ(新しい薄型キーボード)にもなれるだろう」と、それよりもそそくさと仕事の書類を作っていかないといけない状態だったので、そのままやり続けていました。
そして、暫くは気づかなかったというか「いつまで経っても慣れないキーボードだな」と新しいものから何回も違うものを買って試してみたり、逆に昔のものに戻してみたりと、試行錯誤の日々。
キータッチは独学ながらも結構早いタイプだったし、「なんか指が引っかかる」状態のままスピードだけは変わらないように打ち続けておりました。

完全におかしいなと思い始めたのが2013年頃から、レッスンでダーツを投げている時。
なんだかんだと日々色々と忙しかった(今考えたら、今と比べると全然忙しくなかったんだけど)事と、どちらかというと病院に行くのが面倒だったというのが大きな理由で、なんかダーツでも上手くグリップ出来なくなったなぁと。
でもこれも2009年頃から違和感を感じでいたので、もしかしたらこっちの方が先だったかもしれません。こればかりは自分でも曖昧で冷静に考えてみても、どちらが根本的な原因で今の症状である「後天性ジストニア」所謂「局所性ジストニア」という病気になったのかは定かではありません。
とにかく「軽微な違和感」だったので、そのままにしていたというのが良くなかったんでしょう。

そして、2016年。ちょうどウォーキングしていた時に右手の親指がものすごく硬直して手のひらの内側に入り込んでいるのに気づいたことから「これは絶対になんかおかしい」とすぐになんかの指の病気かもしれないと、指や腕の病気等の権威と呼ばれている医師に診てもらう事に。
直ぐに「これは僕では治せません。ジストニアという病気を知っていますか?」と言われて、何せ初めての単語だったので紙に書いてもらい、なんの治療も薬ももらわないまま大学病院へ行った方がいいと。
今でも通っていますが、家の近くの大学病院で診察してもらい、脳のMRIから手に直接針をつけての筋肉の動きの検査等、様々な検査をしてもらい、ここで初めて「ジストニア」という診断をされました。
これは、脳の一部分が勝手に誤作動を起こしていることから発症する脳の病気だと説明されました。
診断されると、主には3種類の治療法があり、内服薬での治療、ボトックス注射による治療、外科治療という選択肢があります。
内服薬での治療法としては、抗不安薬やてんかんに使用される薬を服用します。薬の名前としては「アーテン」というてんかんに使用される薬か一般的な抗不安薬での対処しかありません。
非常にまだ珍しい病気ということで薬が開発されていないという事と、僕の場合にはたまたま指に症状が出ただけで、出てくる部位の症状は様々なんだそうです。
暫くは内服薬での治療という事で服用していましたが、僕の身体には合わないらしく首から下に力が入らなくなり、フラついてしまうので直ぐにアーテンは服用を止めて、抗不安薬のみに。これも気休め程度なものなので、根本的には症状が軽くなるような感触は得られません。
寝る前に飲むので、寝つきが良くなった程度のものだと想像してくれればいいでしょう。次はボトックス注射という選択肢。手に直接注射して感覚を鈍らせると言った方がわかりやすいかな?これも改善に繋がる人もいれば、定期的に打たないと半年くらいでまた元に戻ると。

2017年にスペインでジストニアに対しての研究が盛んだという噂を聞いて、実際に外科的治療も行われているという話を母が聞きつけ「一ヶ月くらい行ってくれば?」と呑気なことを言われましたが(笑)。仕事もありますし、海外でも仕事が出来ないわけではないですが、英語も通じにくいだろうしなぁという理由で断念。これがアメリカだったら、住んでいた経験もあるし、馴染みがあるし直ぐに行っていたかもしれません。
そんな時に、また母がたまたまテレビを観ていたら「日本にも外科手術が出来る先生がいる」という情報で、それならばということで一度診てもらうだけでも診てもらおうと診察してもらう事に。

診察結果は勿論、変わらずジストニアという診断。
今までと違うのはここからで、実際に外科手術するかどうかという事。この時にたまたま「集束超音波治療」という新しい治療の治験を行なっていた時期で、従来ならば頭に2センチの穴を開けて治療するという方法から、開頭せずにMRIを改良したもの(ダーツマシンで例えるとダーツライブ2のコンバージョンキット)で行えると。
まずはこれからやってみてはどうかと提案されたので即決。10分後には担当の看護師さんから具体的な治療法やら、治験者としてのビデオ撮影をされていました。
ちょうど3ヶ月後に予約が取れたというので、11月末「集束超音波治療」の手術を受ける事にしました。
正直、手術を受ける事に関しての恐怖感はあまりありませんでした。他界した父が生前散々手術を受けていたので、「擬似的に慣れていた」というのが大きな要因だと思います。
更には、2泊3日という超短期な入院で済むという事。

実際の経過を。
手術前日の午後に入院して、その日は夜に髪をスキンヘッドに。これが嫌という人はお勧め出来ません。これにもなんの抵抗もなかったので(笑)。その日はそれで終了。病室でゆっくり過ごすだけ。PC持ち込んでいたので仕事していましたけど。
そして、当日は昼頃からスキンヘッドを更にスキンに。髪の毛が少しでも残っていると(剃り残し)があると手術出来ないらしく、丁寧に1時間くらい掛けてツルツルに。
手術時間は最長4時間程度なので「大人用オムツ」を着用。これが後々に術中の辛さの1つになるんですが…。
担当医の方がやってきて、「じゃあ、用意しようか」と車椅子で連れて行かれ、頭を固定して絶対に術中に動かないようにするためにステンレス製のリングを取り付けるのですが、これが第一の関門。
頭の4箇所にネジで固定するために、頭にそのまま太い針で注射を。まぁ想像して頂ければわかりますが、相当痛いんですけど5分後には効いているので痛いのは5分だけ。
実際、MRI室に移動するエレベーター内にちょうど鏡があったので見れたのですが、ちょっとしたサイコホラーみたいな出で立ち(笑)。
そして、MRI室に入る前に頭に大きなゴム(これはコンドームをイメージして下さい)を被せられる。ここに水が入り、それが循環される事によって照射した後に冷やす効果があるらしい。
それでMRI室に入ると、治験ということもあり外国人の研究者らしき人が何人か。最初は術前のMRI撮影。これが約40分くらいだった気がします。
さて、本番です。毎回照射は30秒程度なんですが、徐々に温度が上がっていきます。脳の一部分を焼いて死滅されるというわけです。
最初はなんだ、こんなもんかと思っていたのですが、温度が上がる度に今まで感じたことのない痛みが。偏頭痛の100倍痛い超局所版です。イメージとしてはスターウォーズのライトセーバーを30秒くらい突き刺されている感じです。
脳は痛覚がないのですが、その周りの神経が熱さを認識することで痛みが発生するとのこと。あ、因みにこの検査は意識がないと症状が緩和されたかどうかわからないので、麻酔で寝ている間にとかではありません。しっかりした意識がないと治療出来ませんから。
照射する度にMRIから出されて、指のチェック。ダーツは鉄製なのでMRI室に持ち込み不可なので、それを術前に相談したらKINGS JAPANのヒデちゃんがプラスティックで製作してくれたので助かりました。キーボードはできる限り鉄製のものを外して使用。
これを何回も繰り返す。照射した後には頭を冷やさなくてはいけないので、冷たい水が頭の上を循環する。これが尿意を催し、そしてとにかく寒い。
いくらオムツを履いているとはいっても、45超えたオトナですから我慢…。
もうこれ以上の温度に耐えられないというところで、あと2回照射。合計4時間掛かりました。
人によっては吐き気やめまい等の体調不良を訴えるらしいのですが、僕は術後すぐに立ち上がり、そのまま歩いて病室に戻れるレベル。何も食べていないので、既に買ってきてもらっておいたセブンイレブンのおにぎりとうどんを一気に食べて一安心。呂律が回らないという事もなく、無事に手術は終了。
では、完治したかといえば、正直40%程度だと思います。ただ、明らかに常に感じていた不快感はなくなり、出来なかった指の動きも出来るようになっています。
しかしながら、何年もジストニアだと分からなかった故に、「癖」というのはなかなか治らない。指が上手く動かないなりにいつの間にかついてしまった「癖」というものにはいまだに悩まされています。
気をつけてはいるんですが、まだダメなんでしょうね。
もう一度今度は開頭手術を試みてみようと思っています。集束超音波の場合、焼く適正温度まで身体が痛みに耐えられないので「生焼け」状態ということがあるようです。
本来ならば、70度近くで焼きたいらしく僕は55〜58度くらいでギブアップしているので、生焼け状態なんじゃないかと本人的に思っています。
次回は開頭手術なので約1週間の入院が必要らしく、今年実は何回か打診はあったのですが、既にレッスンが入ってしまっているために都合がつかない状態で2回パスしています。

次の連絡が来たら、生徒さんに事情を話して受けようかと。それが年内になるか年明けになるか分かりませんが、その時にはまた少しでも症状が軽くなればいいなぁと思っています。