No.19 変化した新たな僕、変わらない僕、色々なナカニシエイキチを…

2021年11月

前回のコラムから僕の環境は大きく変わった。
仕事は変わり住む場所も変わったが、大きく変わったことがある。
この度TRiNiDADとのスポンサー契約を結んだ。僕がダーツを始めて憧れていた山田勇樹選手や当時女王と呼ばれた松本恵選手など有力選手が多数今も所属しているメーカーだ。
まだPerfectのプロとして試合に出ていた頃は上位勢のユニフォームのほとんどは白のユニフォームで、体つきも良く、いかにも戦う集団というイメージもあったし、その強さは誰もが認めていた。
その頃には他のスポンサーと契約していたので試合を勝ち進んでいく上で高い壁であったことは間違いないし、そこを超えることが自分のプレイヤーとしての箔をつけるために必要なことだと躍起になり対戦していた。
実は数年前にTiTOの面接を受けたことがある。
名古屋に出店の際にオープニングスタッフを募集していたからだ。
当時僕は某ダーツショップのスタッフとして働いていたし、プロ活動も並行していたので環境を変えてみようということで応募した。面接結果としては「辞退」という形をとったが、なぜ辞退したのだろうかなど鮮明には覚えていない。当時働いていた店とは距離的にも目と鼻の先にあったものだから迷惑をかけたくないとの思いもあったと思う。ただそのことを当時の担当者も覚えてくれていたり、試合の際には声をかけていただいたりもした。挨拶だけではなく、食事にも連れて行ってもらったし、当時から加入への誘いはしてくれた。
ただ僕は当時のスポンサーへの恩義もあったし、なかなか話に乗れずにいた。
そしてそのスポンサー企業の社員として働くこととなり、ますますそんな話からは遠くなっていった。ただそういった話は抜きで担当者の方とは仲良くしてもらっていたし、会場で会えば話もした。そして僕が今年その企業を退社することとなり、同時にプレイヤーとしても卒業することとなった。もちろんそういった挨拶を方々にするわけだが、一番最初に声をかけてくれたのがTRiNiDADだった。

正直2020〜2021前半はダーツも満足に投げることができず技術的にも一番落ち込んでいた時期だった。試合に出ても勝敗など考えることもできないほど、ひどい状態であったしモチベーションを上げることにも苦労していた。しかし担当者からは「ゆっくりでいい、必ず前以上になると思ってる」との声をいただいたし、「永吉のPDCで投げているところを見たい」との言葉もあった。お互いの共通目標があり、そこに向けて共に戦っていく姿勢が僕に時間を与えることなく「お願いします」と言わせていた。
共に戦っていくということで僕も再度頑張ろうという気持ちが明確に湧いてきたし、そのために団体も移籍して数多く試合をこなすということにもようやく気持ちが向き始めた。
確かにまだまだ技術的なことや自信など積み重ねていかなければならないことは多い。
ただ久しぶりに練習もさせていただける環境も近くにあったりとモチベーションの高さはイギリス滞在時にも負けてはいない。
今は、もう一度がむしゃらにダーツをしている。
PDCに行くことはなんとなく自分でわかっている。
あの舞台で戦うんだろうなという予感もある。
ただの自惚かもしれないがそういった馬鹿さ加減も戻ってきた。だから僕は世界と戦うためにTRiNiDADを選択した。

加入の際にシグニチャーモデルのバレルとコンドルの発売も決まっていた。
今この記事を書いている段階で既に発売するモデルはできているが、決定するまでにかなりの図面を書いてもらい、納得のいくモノができるまで担当者には苦労をかけた。
僕は自分が最高だと思うバレルしか発売したくないとの思いで今までバレルを作ってきたし、発売してきたモデルの完成度が高すぎて、これをどのようにして超えていこうかという壁があった。
もちろん前作と同じようには作れない。
前作を超えることができなければ出すことに値しない。
前作のバレルは受注生産ながらかなりの注文をいただいたし、スティールダーツのみでもかなりの方に使っていただいている。
評価をしてくれている分、同じようなモノがいいのか、別のスタイルで作り上げるかなどを何度も担当者と相談を重ねた。
結論から言えば過去最高のモノができたし、僕自身のモデルだけではなく今まで出ているスティールダーツの中でも相当の完成度といえる。
僕自身のバレルの特徴を残しつつ新しいカットや重量、タングステン比率など試せるものは試し、できることは全てしてもらった。
その結果、TRiNiDADのプロモデルの中でも唯一のスペックとなっており、バレルの外観やスペックを見ると癖があるかと思われそうだが実際はそうではなくバランス設計から投げやすさを考え、外観もスタイリッシュかつクラシカルに仕上げた。
これがスティールバレルだと言わんばかりのモノだ。
バランス設計においてはコンドルAXEを装着した際に理想のものとなるようにした。
まだ試したことがない方にはぜひコンドルAXEを使用してみてほしい。
確かに「硬い」ということは否めない。ただそれが「弾かれやすい」や「邪魔になる」などということにはつながらない。「硬い」からダーツは拾われて、ターゲットに入ると僕は使用して感じた。

スティールダーツというのはソフトダーツと違い刺さりなども計算して自分のダーツスタイルを作り上げていかなければならない。
その上でフライトの質も重要な要素の一つとなるのだ。
軽いこと、薄いこと、丈夫なことが当たり前とされていた中に現れたコンドルAXEは紆余曲折ありながらも素晴らしいクオリティのフライトになったし、今では多くのPDC選手が使用している。契約外選手も少なくはない。
「本当に良いモノ」として、彼らが使用していることで証明されているわけだが、実際に手に取り使ってみるとさらにその信頼度は高まる。
そんなコンドルAXEからも僕のモデルが発売される。
こちらのデザインは今までの僕のデザインものと違い、全く新しいものとした。
今までは名古屋をベースとしたデザインが多かったが、今回は自分のルーツや生活に根付いたデザインにした。ベースカラーは昔から使用しているクリアだ。
自分の飛んでいくダーツが見えないことは僕にとって集中させてくれる大きな要因でもある。
そのためにワンポイントのデザインとして、あまり目立つことなくそっとフライト面に乗っているようなさりげなさを出した。デザイン自体はアメリカンな雰囲気だが内容は日本的であってそのギャップも楽しんでほしい。

今後チームへ加入したことで色々な商品開発にも携わっていきたい。今までの経験を惜しむことなく応援してくれている皆さんに伝えていければ良いと思っている。それはモノとしてコラムとして、そして映像としてさまざまな形で発信していくことになるだろう。
変化した新たな僕、変わらない僕、色々なナカニシエイキチを今後も楽しんでいただきたい。