No.14 フライトの役割をあらためて考えてみる

2017年11月

初めてダーツを買う人によく聞かれる「フライトの形状が変わると何が変わるのですか?」という質問。
フライトについて個人的解釈・見解も交えて考察してみたいと思います。

「普通の大きさのフライトはどれですか」。お店でフライトについてよく聞かれる質問の一つです。質問してくるかたは「標準的・一般的なフライト」という意味で聞いているのだと思います。僕の場合、「面積が中間」という意味で答えることが多いです。現状のラインナップでは、ティアドロップやロケットと言われる形状がそれに当たると思います。

ところが、フライトに関しては面積が一番大きなものに「スタンダード」という名前が付いているのでややこしい。この「スタンダード」という言葉の意味を調べてみると、【標準。規準。また、標準的であるさま。】とありました。

   ▲フライトの面積表(L-StyleオフィシャルWEBサイトより)

確かに、フライト面積の大きめの商品がよく売れていると思います。周りを見ても6~7割くらいの人が大きめのフライトを使ってるので、ダーツを始めようとする人が「大きいフライトがいいのかな」と思うのも仕方ないのかもしれません。これは「スタンダード」というネーミングからくる影響も大きいのではと思います。
確かに大きいフライトを使用したほうがダーツの軌道は確認しやすいと思います。ですが、もし「スタンダード」という名前ではなく、「ビッグ」とか呼ばれていたら、違う形状のフライトがよく売れる商品になっていたかもしれませんね。
シャフトについても同じような質問をよく受けます。シャフトは中間の長さぐらいから試してみようって思われた方もいるのでは。

▲フライトをティッシュペーパーで代用

中間を選ぶ心理は「よく解らないから」ではないでしょうか。まだ違いがわからない初心者にとっては「スタンダード」という響きは安心感や信頼感がありますから、このネーミングによって使う人が増えるという自説が僕の中にあります。
皆さんが厳正かつ公正に自分に合った形をチョイスしやすくするためにも、今の「スタンダード」と呼ばれているフライトは、できれば「ビッグフライト」っていう呼び方に変わって欲しいんです。「シェイプ」の敬称も微妙ですが(笑)。

僕は昔からフライトを様々な形に切って実験をしています。シャフトにセットできる限界まで細く切ってみたり、マッチ棒の頭みたいに小さく切ってみたり。
様々な形に切った中で、大きいフライトの真ん中だけをくりぬいた形状で投げる実験をしたことがありました。このフライトでは、ダーツの軌道とダーツの姿勢が同じになるように投げた時はボードに刺さるのですが、軌道に対してダーツの姿勢を変化させると、ボードに刺さらないことがありました。

つまり、フライト面積は空気の影響を受けることでダーツの姿勢を変化させる大きな役割を持っているということになります。
僕はそのような現象をダーツを通じて肌で感じ、疑問に思ったことを物理的に照らし合わせて考えています。実際はダーツの速度やフライトの面積、ダーツの角度など要因は様々ですので、細かい数値は物理の詳しい方に聞いてみないとわからないのですが。

▲フライトを切って面積を変更

ダーツショップの店員としてセッティングを語る時に、どうしても外せないのがフライトが受ける空気抵抗の存在です。空気抵抗がピンとこないという方は、ご自宅のボードで「フライト無し」のダーツを投げてみて下さい。
思っている以上の速度で飛んでいるように見えますし、ほとんどボードには刺さらないと思います。(決してお店ではしないで下さい)

ダーツのセッティングを決める際に「空気抵抗も考えてほしい」と思っていますので、ティッシュをゴミ箱に投げ入れる時の思考を話すことがあります。

「ティッシュを丸めてゴミ箱に投げたら入りませんでした。再度ティッシュを同じ場所からもう一度投げ入れようとするときに何を考えますか」という質問をします。
みなさんはどうでしょうか。①投げる力を変化させる。②投げる角度を変化させる。③ティッシュを小さく丸めて空気抵抗を変化させる。

▲フライトの真ん中をくり抜いた状態

3つの選択肢の中で、③だけが投げる物を変化させています。僕は、③の考え方がフライトを変える事と同じだと考えています。
投げる力や投げる角度を変化させるということは「狙う場所の変化」ということに一番大きな影響をあたえる要因かもしれませんが、フライトを変えることも小さな的を狙う際に影響を与えないことはないと思っています。
ダーツをどのように飛ばしたい・刺したいかは、「人それぞれ」で、ダーツのセッティングも物理的な働きを考慮して「人それぞれ」でいいと思います。

フライトを改めて見れば本当にたくさんの形状があるんです。その中から、自分にあったフライト形状を見つけて、軌道を自分の理想に合わせることも必要ではないでしょうか。

ダーツの投げ方だけを追求するのではなく、道具の特性の違いを追求することも、ダーツが狙った場所に投げられるようになるための一つの道かもしれません。今のフライトを変化させることによってダーツの刺さる場所だけでなく、どの様な軌道・姿勢で狙った場所に飛んでいくのかを、確認しながら練習するというのはいかがでしょうか。