2021年1月
1.「 PDC World Darts Championshipについて。
2020/21 PDC World Darts Championshipとは、2020年12月15日から2021年1月3日にかけてロンドンのアレクサンドラ・パレスで開催された、PDCの世界選手権である。優勝者には£500,000(約7000万円)という超高額賞金が設定されており、ダーツ最高峰の大会となっている。
参加資格を有するものは96名で、
(1)PDC Order of Merit(賞金ランキング)上位32人(シード扱いとなり2回戦から参戦)。
(2)Pro Tour Order of Merit(Players ChampionshipとEuropean Tourで獲得した賞金ランキング)で、PDC Order of Merit上位32人を除き、残った上位32人。
(3)各予選を突破した32人。
の3つに分類される。
2.日本から挑んだ選手たち。
日本からは、鈴木 徹、Edward Shoji Foulkesが参戦した。鈴木 徹は1回戦、ラトビアのMadars Razmaと対戦、全てのセットでフルレッグになる接戦となるが、チェックアウト力の差で、3-0(Set)で敗北。惜しい試合であった。Edward Shoji Foulkesは1回戦、ベルギーのMike De Deckerと対戦、Mike De DeckerはPDC Development Tourを3回制している実力のある選手だったが、Edward Shoji Foulkesがアベレージ90.97チェックアウト率50%を叩き出し、3-0(Set)でホワイトウオッシュ、衝撃的なデビュー戦勝利を果たした。
2回戦は、北アイルランドのBrendan Dolanと対戦、彼は2011年にダブルインスタートルールで初のナインダーツを達成したことで有名な選手だ。この試合、Edward Shoji Foulkesは奮戦したものの、PDCランカーの圧倒的な実力を見せつけられ、3-1(Set)で敗北となった。
3.大波乱の1・2回戦、次々に消えていく有名選手・勝ち上がっていく新星。
「アレクサンドラ・パレスには魔物が潜んでいる」と言われるくらい、毎年1・2回戦では大波乱が起きている。3Leg先取の1Setを3Set先取という、短いゲームフォーマットであるからこそ、有名選手を新星が倒す、といった下剋上が度々発生するのだ。
今年、まず魔物に喰われたのは、Rob Crossだ。彼は3年前にこのWorld Darts Championshipで優勝しており、以来Premier Leagueにも毎年選出され、賞金ランキングは4位、というトップランカーの選手だ。
そんな彼の2回戦の相手が、オランダのDirk van Duijvenbodeであった。Dirk van Duijvenbodeは、2020年度、好成績を安定して残し続け、賞金ランキングをぐんぐん上げている、絶好調の選手だ。
この試合は、お互いに自らの先行セットを譲らない展開で、フルセット(2-2(Set))・フルレッグ(2-2(Leg))となった。そして最終レグ、Rob Crossが138残りを126点削る事で12残りとした後、Dirk van Duijvenbodeが99残りをT19→S6→D18と見事に上がり、勝利した。この99残りを上がったのは本当に見事としか言えない、素晴らしいダーツであった。そして、敗北したRob Crossはまさかの2回戦敗退という結果になった。
その他にも、賞金ランキング9位のMichael Smith、元ユースチャンピオンのLuke Humphries、ワールドチャンピオンを2回獲得した事のあるAdrian Lewis、等々、数々の名だたる選手達が、この魔物に喰われてしまったのである。やはり、「アレクサンドラ・パレスには魔物が潜んでいる」というのは、紛れもない事実だ。
4.個人的には今回1番の試合!準々決勝・Joe Cullen vs. Michael van Gerwen.
準々決勝で対戦する事になったJoe CullenとMichael van Gerwen。
試合が始まると、Joe Cullenは180を連発し、MvGをダーツで圧倒、セットを着々と獲得していき3-1(Set)とすることで、先にリーチをかけた。この状況は、Joe Cullenは圧倒的に有利であった事から、Joe Cullenが勝てるのでは!といった期待を、当時私は感じた。
だがしかし、ここからMvGの猛攻撃が始まった、優勢だったはずのJoe Cullenは、チャンスを上手くものにできず、気づけば3-3(Set)と追いつかれる展開となり、最終セットへ突入。最終セットは、お互いに自らの先行レグを譲らない展開となり、迎えた最終レグ。ここで、Joe Cullen は痛恨の59スタート、この好機をMvGは見逃さずに見事な180スタート、流れは完全にMvGのものとなった。その後、MvGは確実にスコアを削り、最後のD8を決めた後、心の底からの雄叫びを会場全体へ轟かせた。
この試合で、ワールドチャンピオンを3回獲り7年間賞金ランキング1位を維持し続けた男の本気を、「ビーストモード」と呼ばれて誰も手を付けることのできなかった数年前のMvGのダーツの片鱗を、見ることができた。そして、そんなMvGを相手に奮戦したJoe Cullenの素晴らしいプレイは、間違いなくこれからの活躍を期待できるものであった。そういった事から、この試合は素晴らしい試合であり、歴史に残る名試合だと、私は思っている。
5.Gerwyn Price堂々たる優勝、名実共に世界一へ。
決勝はGerwyn Price vs. Gary Andersonの組み合わせとなった。
Gerwyn Priceにとって、この決勝は非常に大切な試合であった。何故なら、もし勝利した場合、ワールドチャンピオンになると同時に、PDC賞金ランキングにおいて、7年間不動の1位であったMichael van Gerwenを抜き、新たな1位になれるからだ。
そんな試合は、出だしこそGary Andersonが好調だったものの、直ぐにGerwyn Priceがスイッチを入れ、終始スコア力・チェックアウト力共に圧倒していた。何と試合途中まで彼はDouble20を10本連続で決め、全く外さなかったのだ。
結果、アベレージ100.19チェックアウト率44.64%という超ハイレベルなダーツをプレイしきった、Gerwyn Priceが優勝。見事、新たなワールドチャンピオンとなり、PDC賞金ランキングにおいても、新たな1位が誕生したのである。