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No.9 2021/2022 PDC World Darts Championship

2022年1月

今年も、PDC World Darts Championshipは多くのダーツファンの心を鷲掴みにし、その1試合1試合の内容に釘付けになったことだろう。
今回のコラムでは試合を振り返るというよりも、私なりに気になった・気になる事を幾つかピックアップする。

・3発も出た9ダーツ、そのうち1発は…なんと。
本大会で9ダーツが出た事は、きっと多くの人が知っているだろう。やはり9ダーツ達成の興奮に勝るものは無いので、その1つ1つを振り返ろうと思う。

①ウィリアム・ボーランド VS ブラッドリー・ブルックス(180,177,144(60→60→24))
この9ダーツに関しては衝撃的過ぎて、強烈なインパクトのあるものであった。何と言ったって、ラストセット(2-2)ラストレグ(2-2)で、レグを取った方の勝利という最もプレッシャーのかかるような状況下、まさかのまさか9ダーツでフィニッシュしてしまったのだから。
更に、この9ダーツはPDC歴史至上、TVマッチ初の9ダーツで勝利を収めた試合となり、永久にダーツの歴史に名を残すものとなったのだ。凄い、凄すぎる、ウィリアム・ボーランド。(2回戦でライアン・サールにボッコボコにされてしまったが、ウィリアム・ボーランドのこれからに期待したい。)

②ダリアス・ラバナスカス VS マイク・デ・デッカー(174,180,147(60→51→36))
失礼だが、今大会の他の9ダーツと比べてしまうと圧倒的に地味な9ダーツであった。ラバナスカスの素晴らしいシュート力が光った9ダーツであった事は間違いが無い。更に悲しいのは、この9ダーツ達成後、ラバナスカスは思うようなプレーが出来ずに試合には負けてしまったことだ。

③ガーウィン・プライス VS マイケル・スミス(180,180,141(57→60→24))
世界1位VS今大会調子最高という神カードのセミファイナル、9ダーツも含め試合内容は最高of最高という位素晴らしいものであった。
3セット目の2レグ目、プライスが180・180と決め、3ラウンド目の141残り、1投目が57に入った瞬間、「あ、これは出るわ」と直感で思ったのを覚えている。その感は当たり、2投目・3投目は綺麗に60・24が決まり、見事9ダーツの達成となった。
達成後、スミスが大きな拍手をしながらプライスとグータッチでお祝いする光景は、とても見ていて気分の良いものであったし、スミスの人柄が出ているシーンの一つだなと思った。

・広がるコロナ感染、物議を醸す。
今大会、一番の悲劇は何か。それは間違いなく、マイケル・ヴァン・ガーウェンを始め、ヴィンセント・ヴァン・デア・ヴート、レイモンド・ヴァン・ヴァーナベルト、デイブ・チズネルの4名がコロナに感染してしまい、不戦敗を余儀なくされた事であろう。
この選手間でのコロナ感染、その原因となったのはオランダ勢での会食がRound3直前に行われていた事ではないかと予測している。
このコロナ感染について、PDC側に苦言を呈したのがガーウィン・プライスだ。自身のインスタグラム上で、「コロナによって素晴らしいプレイヤーを不戦敗とする事は、トーナメントの価値を下げている上、不公平である。私は優勝の為に最高のプレーをしたいのに、最悪の気分だ」と述べ、トーナメントそのものの延期を求めた。
そして、今回の事態を見通していたのか、マイケル・ヴァン・ガーウェンはトーナメントが始まる前から、「今回のWorld Darts Championshipはコロナの大爆弾である」と述べていた。観客からのコロナ感染対策が欠如していた事が理由らしく、今後のトーナメントでPDC側はコロナへの対応を選手に対しても観客に対しても上手く行う必要があるのではないだろうか。

・賞金ランキングが大きく変動、今後の展望。
今大会、大きく順位を上げた選手が多くいる。激闘を数々乗り越え素晴らしすぎるプレーを魅せながらも惜しくも決勝で敗退となってしまった”マイケル・スミス(大会前9位→大会後5位)”、若干23歳ながらクオーターファイナルまで勝ち上がりピーター・ライトと死闘を繰り広げた”カラン・リズ(大会前36位→大会後30位)”、Qスクールでツアーカードを勝ち取ってから1年経たない間に大物選手を次々撃破している”アラン・スーター(大会前77位→大会後51位)”等だ。彼らは今年度の活躍が期待できるのではないだろうか。
そして上位3人に注目してみよう、今大会終了後の賞金額は1位・ガーウィン・プライス(£1206,750)、2位・ピーター・ライト(£1191,500)、3位・マイケル・ヴァン・ガーウェン(£656,750)、となっている。3位のMvGはやはりコロナ陽性となり3回戦で強制棄権となった事が大きく響き、大きく賞金額を落としてしまった。その結果として2位と3位の差が大きく開く事となった。
そして、ピーター・ライトの優勝により1位と2位との差はたったの£15,250となった。この僅差が故に、2月から10月までに計28回開催されるプレイヤーズチャンピオンシップ(フロアトーナメント)での複数回の優勝(£12,000)・準優勝(£8,000)等の好成績を収める事、3月に開催されるUKオープンで上位入賞する事、等々で1位と2位の順位が逆転する可能性が大いにある。ピーター・ライトが世界チャンピオン兼賞金ランキング1位という真の世界1位を達成する日が近いのではないかと予測する。

・【マニア向け悲報】来年度World Darts Championshipのメインスポンサーが変わる。
このニュースを聞いた時衝撃だった、来年度のWorld Darts Championshipから、メインスポンサーが”CAZOO”にかわる事が発表されたのだ。つまり、2015年度からのメインスポンサーであった”William Hill”では無くなってしまうのだ。
それが故、アレクサンドラパレスで”William Hill”だからこその、青く・綺麗で・皆が憧れるようなステージを見る事がもう二度と無いのかもしれないと思うと私はとても悲しい。
PDCを沢山見ている方々ならお分かり頂けると思うが、”CAZOO”がメインスポンサーしてきたメジャートーナメントのステージは灰色を基調としており、正直綺麗とは言い難く、地味で華々しさが無いのだ。来年度のWorld Darts Championshipがそんなステージにならない事を祈るばかりである。