No.23 スティールダーツをプレイしてもらう環境作り

2022年7月

梅雨が明けたとニュースで流れてきても、ジメジメとした日は続いているし、なんなら雨も梅雨時期よりも多いのではないかと思いながらパソコンに向かう気分はそんなにいいものではありません。ただそんな時期の隙間にひょこっと見せる天気の良さは本格的な夏の到来を感じさせて、小学生であればウキウキしていることでしょう。

さて今年も後半に入りました。ダーツ業界も国内外問わず重要な試合が各地で行われ、みなさんも試合を見ることが忙しくなってくると思います。ここ2〜3年で大きくみなさんが注目しているFIDOを使用した試合にもPDCへつながる試合が設けられることになったりと、その規模は毎年大きくなっています。今年の9月には福岡で日本のみならずアジアチャンピオンシップなるものが開催されたり、日本のプレイヤーにとってPDCや世界のスティールダーツがどんどん近づいてきました。
この大会に優勝すればPDCのメジャー大会にも出場できる枠があるなど、その注目度はPDCからも認められるほどです。
PDJという大会は以前から開催されており、優勝者には世界大会への出場権が与えられることは続いていましたが、それ以外にも多くの枠ができたことが驚きです。数年前までは、まだまだ日本でソフトのプレイヤーがスティールの大会に出場することはそんなに多くないことでしたが、実力的に見ても商業的に見てもやはりダーツというものは「PDC」という団体が一番だとFELIXの社長である福永さんが日本にもPDCを、日本人もPDCプレイヤーにとの思いで活動されてきたことがどんどん形になってきています。

その活動の発端はスティールダーツをプレイしてもらう環境作りだと自動計算式のスティールダーツマシン「FIDO」を輸入し、少しずつ感じ始めたソフトダーツ業界へのマンネリとスティールダーツの敷居をぐっと下げることに成功したことで一気に各地に広がりました。そしてコロナ禍でもなんとか試合をということでオンラインを用いたツアーを開催し、今では多くのソフトダーツの有名プレイヤーも参戦しています。このツアーは一気にスティールダーツの実力の底上げをするものとなりました。まるで海外の試合を見ているかのようなスタッツの試合も多く見ることが多くなりましたし、このFIDOで行われる試合もJAPANやPERFECTのように試合数も多く、いずれは賞金額も増えてくることでしょう。

そうなってくると、いよいよ日本からもPDCのスター選手が生まれてくると思います。もちろん時間はかかることですし、世界は甘くありませんがこのような流れになっていること自体がスティールダーツを追いかけている僕にとっては嬉しいことなのです。イギリスにいる頃のコラムでも書きましたが、日本でPDCにトライできるならばその方がいい。負担が少なくPDCに挑める選択をしない理由はありません。海外ではすっかりコロナの規制も緩くなり、おそらく日常生活において日本ほどストレスを感じることもなくなっているとは思いますが、ビザの問題や金銭的な問題も海外を拠点にするということにはついて回ります。

そして数年前までは、そういった選択を取るしか現実的にPDCにトライできなかったのです。これだけの流れで、これだけの盛り上がりを見せているのに現状日本のトップ選手は海外を拠点にしている選手は一人もいないのが現状です。この流れの中で、日本からPDCのトップ選手を輩出できなければこの先また何年かは底上げは期待できないでしょう。どのような競技もそうですが、たった一人でも本場でトップランカーに上り詰めることができる選手がいればメディアの露出やそこを目指そうとするプレイヤーの生産など、多くの面でポジティブに働くことは想像できます。
PDCの世界で活躍するということは多くのスポーツと同じであるように、経済的にも知名度も一気に高まり、まさにダーツドリームを掴むということなのです。

僕は昔から「ソフトダーツの延長線上にはPDCはない」と考えています。もちろん似ている部分は多く、競技性や技術などにおいてもさほど違いはありません。
しかし今までの歴史が示すように、今日まで日本から世界トップ選手は出てきていません。PDCで活躍するということを目標にとらえた場合、まだ誰も成し遂げていないのです。それなのに活動といえば10年前から変化はしておらず、ようやく新しい風が吹き始めました。この流れに乗ることはプレイヤーとして重要ですが、この流れを止めないことやもっと激しいものに変えていくことも大切です。

そしてまた今までの各団体の活動も尊重することも然りです。先日久しぶりに再開したJDOのツアーに参加しました。長く歴史のある団体ですので、多くのベテランの方が参加される団体ですし、ソフトダーツに出場される選手の顔ぶれとはまた違ったものとなって両方を行き来する僕にはすごく新鮮で懐かしい空気でした。1日を楽しく、そして真剣に過ごすことができましたし、こういった団体の活動も次に繋がるものとして残していかなければならないと感じました。