No.19 チップへの『こだわり』について 最終回

2018年9月

ダーツのパーツの中で、最も消費されているチップ。色や形状など種類も様々あるのに、最も軽視されがちなチップ。
バレルやフライトやシャフトなどと比べ、比較的こだわりを持ちづらいパーツだと思います。
あらためて現在普及しているチップの違いと、それを選ぶポイントについて書いてみたいと思います。

ダーツを自分好みにセッティングする時に選択できるパーツは「バレル・シャフト・フライト・チップ」があります。今ではそれぞれ多くのメーカーから様々な商品が販売されています。
僕が働くディースリーでもパーツごとに、沢山の種類を取り扱っています。現在では選択肢が豊富になりましたので自分の思い通りにダーツのセッティングをすることが出来る様になりました。
その一方で、ダーツを始めたばかりの方・初めてマイダーツを買う方にしてみれば、選択肢が多過ぎて選ぶのが難しいのではと感じます。ショップでお客さんに商品説明をする際、できるだけ簡潔にわかりやすくするように心がけています。
ダーツを続けていくうちにそれぞれのパーツにこだわりがうまれ、あれこれ選んでいると思いますが、どの様に選んでいますか。今回はその中の1つ、ソフトダーツの「チップ」について書いていこうと思います。

「チップ」はダーツの先端部分のパーツのことです。「ティップ」「ポイント」と呼ばれることもあります。刺さる部分であり、何度も刺しては抜いてを繰り返すため、他のパーツよりも交換の早い消耗品です。
僕がダーツを始めた頃を思い返してみれば、マイダーツのチップの規格は2BAのみでショートとロングと呼ばれる2種類の長さの中から選んでいた記憶があります。
カラフルなものが多く、今よりも価格が安かった反面、耐久性はあまり良いとは言えないものでした。その為、中には1000本入りのチップをまとめて買う方もいましたが、今はあまり見かけなくなりました。
あらためて考えてみると、現在販売されているチップの耐久性は、当時と比べて本当に優れたものが多くなったと思います。

現在普及しているチップは、「2BA」・「4BA」・「No・5」そしてお店の貸し出しで使われている「ハウスダーツ用のチップ(1/4BA)」の4種類の規格があります。他の規格のチップと併用が出来ませんのでバレル側の規格に合ったチップを選ばないといけません。逆にチップの規格にこだわり、チップの規格に合わせてバレルを選ぶ方もいます。
最も種類の多い2BA規格のチップだけでも、本当に沢山の種類があります。ショップで取り扱っているチップだけで、30種類以上あります。

ダーツを買いに来られる初心者の方の中には、チップの違いどころか種類がたくさんあることも知らなかったと言われることがあります。数が多く選びきれないからと、人気のあるチップはどれかと聞かれることもあります。
チップの選び方のポイントをいくつか挙げてみると、耐久性・刺さり方・長さ・根元の形状・カラーなどがありますが、チップを購入するお客さんの声を聞くと、一番重要視されているのはやはり耐久性だと感じます。「チップが欠けた、曲がった」など、チップを交換するタイミングは人それぞれですので、耐久性の考え方も様々だと思います。
まず、選ぶポイントとしてよく話に出てくるのが刺さり方です。ボードに対して確実に刺さるかどうか。ボードに刺さらずよく弾かれるという方が、チップを変えただけで刺さるようになる事もありますし、反対に深く刺さり過ぎて抜きにくくなったと感じる人もいます。
ほかにも刺さり心地というのもあります。長いチップほど刺さった時の「しなり」が大きくなるので、ボードに刺さった瞬間のダーツの揺れを気にして短いチップを選択する方もいます。逆に長いチップを使うことで、刺さっているダーツとの接触を緩和する働きがあるなど、「しなる」メリットもあると思います。
チップの長さに関しては、グリップの際にチップに指をかけてダーツを支えるのに利用する方や、ダーツの向きの目安にしている方もいます。
また、チップの根元の形状に関しても、グリップ時の指がチップに触れる感触が変わることで良くも悪くも影響が出ると感じている方もおられるようです。
チップのカラーも、バレルをオシャレに見せるだけでなく、チップを明るい色にすることで構えた時などに視覚的に見やすくするという使い方もできます。
色々と選ぶポイントが多く考えられるのに、チップの選択はこだわりを軽視されているように感じます。
軽視される要因としては、他のパーツに比べて値段も安く、消耗品という考えから耐久性のみに着目されているからではないかと思っています。
また、プロの選手の中にはメーカーさんとの契約上使用するチップが限られているので、選手からあえてチップの話を掘り下げるようなことはあまりしないのではと思います。このようなこともチップのこだわりについての話の幅が広がりにくい理由の一つではと思います。
チップの選び方は、プロに限らずダーツ歴の長いプレイヤーのほうが、多くのこだわりを持っているように感じます。チップの進化とともに様々なチップを使用してきたので、それによってパフォーマンスの違いを理解していると思います。
周りのプレイヤーと話をすれば、チップの太さやカラーなどの違いが、ダーツを投げる上でどのように影響があるかなどのチップのこだわりを持つようになり、自分のチップへの選択肢の幅が広がるようになるかもしれません。
他のパーツでは当たり前のように選択肢のある「重さ」。先日ショップで「重いチップがあったらいいのに」という話が出ました。
「素材はプラスチックだしそんなの無い」と言ってしまえば終わってしまう話なのですが、僕自身は調べた事が無いので「重い素材はないのか」「重りが付けれるようにすれば」など、考えれない事もないのではと思いました。言うのは簡単なんですけどね。

チップの開発はダーツマシン(ボード)・バレル・ユーザーの3方面の条件をクリアしなければならないので、非常に難しいと聞きます。
最近ではロングチップや複数の長さを展開しているメーカーさんもありますし、ネジ部がプレイ中に緩んでこない・緩みにくい工夫がされている商品もあります。

チップの選択肢が耐久性だけであるならば、現状のチップのクオリティーでさほど問題はない気がしますが、ユーザーがこだわりを持てばもっとアイデアが出てくるかもしれません。

昔は長いチップの利点・短いチップの利点などをお客さんと話していた記憶があります。どれが正解というわけではありませんが、今はチップに関してユーザー同士での意見交換は少なくなってきていると感じます。僕自身そういった話し合いが楽しいと感じていたので少し寂しく感じています。
ダーツになくてはならないパーツでありながら軽視されやすいパーツだからこそ、もしかするとまだまだ盲点を突いた新しいアイデア商品が出てくるかもしれないチップ。
だからこそ、違いや活用のアイデアを考え、伝えていくのがショップの役割なのかもしれません。