2018年11月号
今、誰が最強プレイヤーなのかと言ったら、誰もが彼の名前を挙げることだろう。取材後にソフトダーツプロツアーPERFECTでは4連覇を達成した。今年から始まったPDCアジアン・ツアーでは上位に食い込み、さらにPDJでも優勝、PDC World Championshipの出場権利を射止め、勢いは止まらない。弊誌で最初に登場したのは2009年9月号だったがそれから9年を経て、なんと成長したことか。今までの道程、現在の状況、最も知りたいプレイヤーが心の内について語っていただいた。インタビューでも分かるように彼は本当に忙しい人物だ。今回の企画では長い時間を割いていただき感謝を申し上げたい。
「PERFECT、4連覇」
ユニコーン契約プレイヤー
今ではダーツ界で知らない人はいないほどのスタープレイヤー浅田選手ですが、改めてダーツとの出会いはどのようなものだったのでしょうか?
何回かお話ししているかと思いますが、兄がダーツをやっていたのがきっかけです。専門学校の学生だった時に「何か面白いものはないかな」と兄に聞いて、ダーツに誘われたんです。
当時兄はちょっと有名だったこともあり、一緒に行ったダーツバーで「ダーツをやるならうちの店で頑張れよ」というところから始まりました。これが真剣に投げ始めるきっかけになりました。
それは何年くらい前ですか?
12年くらい前です。2004年が初の大会出場でした。
PERFECTにはいつから参戦していますか?
初年度の4戦目か5戦目からです。最初のプロテストは関東で、その頃はわざわざ受けに行くほどのプレイヤーでもなかったので、地元大阪に来てから受けようと思っていたんです。
大阪でのテストが確か3月頃だったと思うので、それ以降からの参戦になりました。ダーツを始めてから半年くらいの頃でしたね。
2018年度はすでに13勝という圧倒的な強さですが、年間チャンピオンはどういう形で決定しそうですか?
次の久留米大会で3位以内に入れば自力優勝が決定します。2位の山田選手や3位の知野選手との状況によってどうなるかですね。
今年もチャンピオンになると何連覇になりますか?
4連覇です。
今年のツアーの流れはいかがですか?
技術面でもメンタル面でもいろいろありますが、一番大きなポイントはユニコーンプレイヤーになったことだと思います。
世界のビッグメーカーであるユニコーンプレイヤーとしての自覚ももちろんですが、マエストロというポジションをいただいていることがとても光栄です。マエストロというのは本当にすごいことで、ワールドチャンピオンの一つ下に位置しているんです。
そこまで評価していただいている以上、アジアのPERFECTのチャンピオンがどこまで出来るのかを見せなくてはなりません。必然的にモチベーションが高くなるので、やる気もテンションも高いままツアーに臨めている状態です。それが結果につながっているのではと思います。
「PDC アジアン・ツアー」
日本人みんなで戦えてとても良かった
今年のPERFECTで特に印象に残っている試合はありますか?
いくつかありますが、どれも楽に勝てた試合はなかったですね。
一つは山田選手との試合ですが、誰が言い出したのかファンの人達からは『浅山対決』と呼ばれていて(笑)、見応えがあるという意見をいただいています。
浅山対決は3〜4回ありましたが、どれも渋い試合ながら手応えを感じる内容でした。それを制すことができたので、ひとつひとつの試合が印象深いです。
それから、予選から1レッグも落とさずに完全優勝できた新潟大会は忘れられないです。これは自分にとって大きな自信に繋がったので、この気持ちを世界にぶつけていかなければならないと思っています。
PERFECTの顔である浅田選手から見て、改善してほしいところなどはありますか?
僕は選手なので、選手目線から言うと改善してほしい点などはいくつかありますが、それがすべての関係者にとって良いことなのかどうかは分からないです。
ただ、見に来てくれているお客さんにとって、もっと楽しくもっと応援しやすい環境を作ってもらえたらと思いますね。具体的には、試合を応援する時とファンサービスの場とのメリハリをつけてもらえるといいかなと思います。
これは事務局の方がやってくれると思うので、もっとお客さんが増えて、そういう状況が必要になる様に僕たちは頑張っていいダーツを見せるようにしないとならないと思っています。
今年からPDCのアジアンツアーが始まり浅田選手も参戦されていますが、どのような印象ですか?
韓国から始まって、マカオ、日本、マレーシア、台湾と回りました。
THE WORLDのように『日本vs世界』といった感じでお互い応援し合い、良い関係でダーツができたと思います。でも正直、遠征費もたくさんかかりましたね。
今日PDJで優勝されたので、今後はこちらを優先されるということですが。
アジアンツアーではそこそこ結果が出せて満足できた部分もありますが、やはり費用もかかりました。今日のPDJ優勝により今後の動きについてはいろいろなご意見があるかと思うのですが、そこはプロダーツプレイヤー浅田斉吾として頑張った結果として、プライドを持って受け止めています。みなさんにはご理解いただきたいと思っています。
去年に続き2度目のワールドチャンピオンシップ出場になりますが、いかがでしょうか?
PDCのワールドチャンピオンシップは世界最高峰の舞台で、これ以上のものは無いと思っています。ここで優勝した選手が世界一だという考えなので、ワールドチャンピオンシップに出場できる権利を得ることは大変なことだと思っています。
アジアンツアーの成績ですでに権利を持っているのに、またこのPDJで権利を得たことについては、ただ遠征費が出るからじゃないかという意見もあるかもしれません。でも僕はプロとして日本で活躍している以上、全部獲りにいくという選手でありたいという姿勢で戦っています。
ワールドチャンピオンシップに出て結果を出すこと、これ以上は無いんです。出来る限りの力で結果を出して、みなさんの期待に添う様に頑張りたいと思っています。
「ソフトもスティールも追いかけたい」
毎日しんどいほどダーツ、今でも投げています
アジアンツアーでもスティールのアベレージが高いので、そろそろ本気でPDCに挑戦するのではないかという意見もありますが?
PDCにはもちろん挑戦したいですし、イギリスやオランダで本気で修行してみたいとも思っています。
でもそこまでの段取りをどう取ったらいいのか、スポンサーさんとの兼ね合いをどうしたらいいのか、実際に行動に移すまでにはいろいろありますよね。
もうすぐ40歳になるという年齢を考えると、そろそろ本気で考えないと遅いというのも分かってますし、行けるなら行きたいという気持ちは大きいです。実現できるように頑張りたいと思っているので、一人でも応援してくれる方がいたらありがたいです。
PERFECTやアジアンツアーを始めその他多くの試合に出場されていますが、体調管理も大変じゃないでしょうか。
本当にヘトヘトなんですけどね(笑)。移動日入れてイベントやって試合出て、週7日MAXでダーツ投げている状態です。週休2日とかいう話を聞くと「ふざけんな」って言いたくなりますよ(笑)。
このサイクルを繰り返してほぼ365日ダーツやってるので、そのおかげで成長したのかなと思う部分も大きいです。
よく「どうしたら上手くなりますか?」って聞かれるんですけど「週8で投げたら上手くなるんじゃないの」って答えたいです(笑)。ですからダーツプレイヤーのみなさんに言いたいのは、やっぱり練習が大事だということですね。
練習量がすべてではないかもしれないけど、もっと高みを目指すというか、例えば世界に出たいという目標があるなら、そういうモチベーションに必要なのは練習だと思うんです。
もっと練習して考えて、「こうやるといい、こうやったらダメだった」というのを繰り返していくことが重要だと思います。僕は今でもそれを続けています。
昨日PERFECTの試合が終わってから夜中に移動して、今日はPDJでお疲れの中のインタビューで申し訳ないですね。
いえいえ、大丈夫です(笑)。
プロダーツプレイヤーは活躍すると大変ですね。
PERFECTに出場した選手は京都から移動していますが、新幹線が遅れてすごく大変だったと思います。JAPANの選手は山形から移動していて、こちらも大変でした。
みんなすごく疲れてると思うんですけど、 それでもどの選手も優勝目指して必死に戦うんです。
これはプレイヤーのみなさんに伝えたいことなんですが、楽しむことも大切だけど、やはり優勝することにハングリーになることが大事だと思います。
若いプレイヤーにアドバイスはありますか?
一週間に何回も「どういう練習をされてるんですか?」と聞かれるんですけど、練習方法はともかく「こうやったら出来た、これはダメだった」というのをよく考えながら投げてほしいと思います。
それから「プロダーツプレイヤーって職業として成り立つんですか?」とも聞かれるんですけど、答えは成り立ちます。
フィル・テイラーのように世界のトップじゃなくても、日本のトッププロもちゃんと生活出来る様になってきました。もちろん努力は必要ですが、その努力に見合ったそれなりの収入を得ることも出来る時代になってきました。
これからはもっと規模も大きくなっていくと思うので、ダーツプレイヤーを職業として目指してもらってもいいんじゃないかと思います。
今年からユニコーンプレイヤーになられましたが、契約に至ったいきさつなどを教えてください。
たくさんのメーカーさんからオファーをいただいてとても迷ったんですが、去年までお世話になっていたトリニダードとも取り引きがあった兼ね合いもあり「世界を目指すためにユニコーンへ」というお誘いを受けました。
ユニコーンとは一体どのような企業なのかという疑問をお持ちの方も多いと思うのですが、やはりダーツでは全世界で知られているメーカーです。世界チャンピオンを有するメーカーと契約できるということは、自分自身の大きなモチベーションになります。
十分な内容で契約して頂いていますし、どこに行っても知られているユニコーンプレイヤーとして恥ずかしくない様にと、必然的に意識も高まります。
ソフトでもハードでも活躍されていますが、今後はどちらの方向に進んでいかれるのでしょうか?
ソフトは自分が今まで培ってきた土壌でありこれからもやっていくつもりですし、同時にスティールにも挑戦していく気持ちに変わりありません。
確か去年の取材で「来年はスティールに力を入れていきたい」と答えたと思うんですが、実際は予想以上にしんどかったです。
メチャメチャしんどかったけどメチャメチャ頑張れた結果、今年はPERFECTの年間チャンピオンを目の前にして、スティールのアジアンツアーでもワールドチャンピオンシップの権利を得るトップ4に入ることができました。
ソフトで年間チャンピオンを獲りながらスティールでも結果を出すことは本当にきついですが、とてもやり甲斐があり得るものは大きいです。
来年はソフトだけとかスティールだけとかいうことなく、いろんな人に恩返しをしながら自分のやりたいことを頑張っていきたいと思っています。