2018年5月号
13-15 April 2018 Hong Kong
 この数年アジアではダーツが大ブームだ。
 昨年、一昨年は台湾に赴いたが今年は久しぶりに香港ADA大会を取材した。14回も続いているだけに会場は満員御礼状態、世界から選手が集い本当に熱い舞台になっていた。改めてソフトダーツ大会について考える良い機会だった。

 
 
 

会場はどこも盛り上がっていた

日本代表 インタビュー
 馬上 亮一 Ryoichi Magami 真ん中
 本当に楽しい三日間でした。イラガンに勝てたので自信になったし、いい思い出になりましたね。これを機会に日本に帰ってからも良いダーツが打てるような気がしています。いやぁ、また来たいですね。こんなにも刺激になるとは思っていませんでした。
佐藤 将央 Masahiro Sato 左
 日本代表ということなのでプレッシャーはなかったですが、緊張はしました。とてもエンジョイできました。予選ではスペインに勝つことも出来ました。個人成績がふがいなかったのが残念ですが、また挑戦できればしたいですね。
高田 広喜 Hiroki Takada 右から二人目
 僕は今、中国に住んでいて突然呼ばれての参戦となりました。実は正式メンバーではありません。試合前日にLスタイルのジンタさんからお声をいただき、駆けつけた次第です。そのためご迷惑をお掛けしたと思います。試合では足ばかり引っぱっていて申し訳ありませんでした。でもめっちゃ楽しかったです。
佐川 香織 Kaori Sagawa 右
 世界は広くて、いろんなプレイヤーがいるんだと実感しました。海外の選手はレベルが高いですが、でも今の日本のトップのプレイヤーなら勝てると思います。
 自分個人のプレイとしては、悔しかったとしか言いようがないです。自分の実力が足りてないことを痛感しました。悔しいけどこれが現実ですね。また頑張ります!
馬上 琉希 Ruki Magami 左から二人目
 結果は出ませんでしたが素晴らしい経験になりました。各国のユースプレイヤー強かったですね。世界大会は初めてでしたが、とても勉強になりました。これからさらにダーツの練習に励みたいと思います

 
インターナショナルマッチはフィリッピン優勝
世界の優勝選手 インタビュー

Men’s Top Gun Winner Alex Reyes
 このトーナメントにはどのくらい参戦しているのですか?
 昨年に初めて来て、今年が2回目ですね。
この大会はフェニックスの大会でザ・ワールドに出場しているプレイヤーには参加しにくいのではないですか?
 僕は関係ないことだと捉えています。ダーツにおいてボードメーカーを必要以上に意識することはかえって良くないと思います。
日本ではあなたはよく知られているプレイヤーですが?
 きっとザ・ワールドに多く出場しているからでしょう。ステージ1のラスベガス大会では優勝、ステージ6の香港大会では準優勝、年間ランキングでは3位という成績でした。
そしてスーパーダーツの舞台に立ちましたが、いかがでしたか?
 信じられないような舞台でとても言葉では説明できません。特にフィル・テイラーと試合ができるなんて…。ダーツ人生でドリーム・カム・トゥルー、心の底から感激しました。忘れられない出来事ですね。
今年のチケットはインターネットであっと言う間に完売しました。
 フィルの効果ですね。そこまで偉大で影響力のあるプレイヤーなんです。ソフトダーツにとって歴史的な一幕だったと思いますね。
ザ・ワールドは今年参戦されるのですか?
 全部出場したいと考えています。昨年以上の結果を出したいですね。
この大会ではトップガンで優勝されましたね?
 昨年はクリケット・シングルスで優勝しました。昨年も今年も楽しんでプレイできたと思います。とてもフレンドリーでいい大会ですね!
日本では今、二つのソフトダーツ・プロ大会が開催されていますが、その状況をどのようにお考えですか?
 アメリカにもあったらいいですね。正直羨ましいかな。大会数も多いし、賞金額も満足のいくものと聞いていますので、世界に拡げて欲しいです。
日本では本気でPDCに挑戦する機運が高まっています。アジア・ツアーも始まりましたが?
 素晴らしいことですね。アジアでスティールダーツが盛り上がっていくことでしょう。アジアではダーツが拡大していることを感じます。
これからの目標や夢を教えて下さい。
 ダーツをすることによって世界を旅するようになりました。もしダーツをしていなかったら、こんなにも各国を巡るなんて想像できなかったことでしょう。勿論世界No.1にはなりたいです。ですが一方、友人が多くできたことを大事にしていきたいと思います。これから夢を一緒に歩けるかもしれませんからね。
最後に読者にメッセージをお願いいたします。
 みんなの力でダーツをもっと世界規模で広めていきましょう。私も努力していきます。 今年きっとまた来日すると思うので、お会いした時は声をかけて下さい。

Ladies Top Gun Winner Zhou Momo
 トップガン優勝おめでとうございます。この大会にはどのくらい出場しているのですか?
 ありがとうございます。2015年最初に来てから毎年出場しています。今年で4回目ですね。2014年にダーツを始めて、翌年からADAに参戦しているということです。
4年目ほどのダーツ歴で世界のトップが集結しているこの大会で優勝したということですね?
 練習の成果でしょうか。長らく毎日8〜12時間ダーツに費やしていました。最近は3〜5時間ぐらいでしょうか。それと性格がのんびり屋なので、あまり緊張を感じないからかもしれません(笑)。
今回の大会の印象はいかがでしたか?
 この大会は大好きな舞台です。なんと言ってもトッププレイヤー達と戦えるからですね。試合は接戦ばかりで本当に楽しいです。今回は優勝できましたが厳しいゲームばかりでした。だからこそ勝てて特別な気持ちに浸れるのだと思います。
 また世界のプレイヤーたちがとても優しくて親切で最高です。必ず来年も来たいと思います。

中国のダーツ事情はどんな状況ですか?
 少しずつですが投げる人も増えています。残念なのは、例えば、ここ香港のように女性ダーツプレイヤーがあまりいないことですね。歴史が浅いので仕方がないことではありますが…。
 新しい試みも始まっています。高校や大学でダーツクラブが誕生しています。大いに期待したいですね。数年後にはきっと成長した中国人プレイヤーが、この大会で大活躍することでしょう。
スポンサーが日本ブランドですね?
 4年前にお声を掛けていただきました。松本メグミさんが紹介していただき推薦してくれたようです。とても感謝しています。彼女は尊敬する大好きなプレイヤーです。
これからの目標は何ですか?
 もっと世界に出て経験を積んで、たくさんのトロフィーを獲りたいです。
 そして最近、スティールダーツに興味を感じていますので、夢でしょうがWDFやPDCの大会にも出場したいですね(笑)。

Super One (Men) Winner Thanawat Gaveenuntawong
 優勝おめでとうございます。今日はどうでしたか?
 ありがとうございます。昨年に続いて勝つことが出来ました。本当に嬉しいですね。皆さんに感謝したいと思います。
何か昨年との違いはありましたか?
 同じような感じでしたね。世界からトップ選手が集結しているので、どの試合も気が抜けませんでした。タフなゲームばかりで疲れました。でも本当に楽しいので、毎年この大会に出場しています。
この大会にはどのくらい出場しているのですか?
 たぶん5、6回目だと思います。
日本の選手とは試合をしたことはありますか?
 勿論ですよ。セイゴ・アサダともしましたし、たくさんの大会で同じステージに立ちました。どの選手も強くて素晴らしい選手ばかりでした。PDCアジアンツアー・マカオにも行く予定ですので、きっとそこでまた対戦することでしょう。
タイのダーツ事情はいかがですか?
 それほど盛んにダーツが投げられているとは言えない状況ですね。周りの人に一生懸命ダーツを紹介しているところです。
これからの目標は何ですか?
 う〜ん、目の前にある試合でベストを尽くして優勝することでしょうか。
 もっとダーツのレベルを高めて世界で活躍できるようにがんばりたいですね。

Super One (Ladies) Winner Krissy Grimal
 優勝おめでとうございます。どんな一日でしたか?
 どの選手も凄いダーツを投げていて、たいへんな試合ばかりでした。そこで勝てて嬉しいですね。ありがとうございました。
この大会にはどのくらい参加しているのですか?
 今回で3回目になります。前回は2015年でした。どの選手もマナーがよくて親切で大好きな大会です。今年も本当に楽しむことができました。
毎日時間が長いのでたいへんではなかったですか?
 そうですね。5時間の睡眠時間では正直眠いです(笑)。
アメリカではどんな仕事をされているのですか?
 ダーツコーディネーターをしています。ダーツリーグを立ち上げて運営したりですね。
状況はいかがですか?
 最近は盛り返しているように感じます。少しずつ参加する人が増えて来て、リーグや大会も以前と比較して活気が出て来ました。

アジアではソフトダーツがブームですが、どのように思われますか?
 日本ではプロツアーなども始まっているようですので、アメリカでもそんな機運が生まれるといいですね。アジア全体でもとても盛り上がっているので、負けないように頑張りたいと思います。もっとスポーツとして捉えて真面目にダーツに取り組む必要がありますね。アジアではいろいろな組織がアイデアを出し合って、切磋琢磨しているように感じます。だからこそ進歩も早いのでしょう。
最後にメッセージをお願いいたします。
 もっとアジアに来て多くの事で刺激を受けたいと思います。どこかでお会いしたら一緒にダーツを楽しみましょう。

大会主催責任者 インタビュー
 ASIA DARTS ASSOCIATION
 Chairman  Joseph Kwong
 どうしてダーツを仕事にしたのですか?ダーツとの出会いなどについて教えて下さい。
 実は私とダーツの出会いはとても古いんです。アジア人の中でも最も最初に興味を持ったひとりなのではないでしょうか。
 私の実家の仕事は元々酒屋だったんです。カラオケ店やバーなどかなりの数のお店と取引があって、配達があるんですが、とても重くて重労働なんです。ビールが50ケースもあると、見ただけでシビレますよね(笑)。それは本当に毎日が戦いのようでした。
 当時はジュークボックスが流行っていました。毎回お金を入れていたので、けっこう儲かっていたんですね。しかしジュークボックスはいつも音楽を入れ替えなければならない、というのが難点でした。それなりに再投資する金額も小額ではないんです。
 そこでダーツマシンをジュークボックスのようにリースしてビジネスにできないだろうか?と考えるようになったんです。比較するとダーツマシンをリースできれば、より利益が出ると思っていました。
 最初にダーツビジネスを始めたのは1996年香港です。順調に伸びていたので、さらに拡大するためにアメリカ、シカゴにあるアラクニッドのオフィスを尋ねたんです。それが1998年のことですね。そこでは思いかけず話が進んで、以降マシンについてもパーツ制作などもお手伝いするようになっていったんです。
 中国とは勿論、各方面にパイプがあったので、いろいろな人達や工場を紹介しました。一緒により良いマシン制作について考えたので、私もダーツマシンには詳しくなりました。
 日本とも関係が深いのでDー1グループで一時期マシンを販売しましたが、それも一緒に関わっています。どうですか?興味深い経歴の持ち主でしょう(笑)。

今回ADAは14回目の開催となり、長い歴史を刻んできましたが?
 ADAは2002年に立ち上げ、最初の大会は2003年に企画しました。
 ところが当時、香港はサーズが大流行したんです。テレビ、新聞も大騒ぎして、ついに政府が不要な外出禁止令を出したんです。当然ダーツ大会などは論外ですよね。とても残念でしたが、しばらく開催は見送る事になりました。
 そんな経緯で最初に開催できたのは2005年のことでした。もしそんな事件がなければ、きっと今年は16回目の大会となっていたことでしょう。
最初の第一回大会では参加者はどのくらいだったのですか?
 8カ国からの参加で人数は300人以下でした。
 今ではずいぶん小規模だと思われるでしょうが、当時はそれが精一杯でした。それほどダーツも知られていなかったですからね。日本からもご参加いただきましたよ。

今年の会場は満員御礼状態でしたね。
 地道に築き上げた結果でしょうか。香港は勿論ですが各国の責任者や選手たちと密に連絡を取り、お互いに協力して来ました。海外の大会には私たちもチームを組み、参戦しています。世界大会を開催するのはたいへんな仕事ですが、やりきった後は満足感も大きいですね。
 実はこの地域で大会を開催するには保険を準備しなければならないという法律があるんです。とても厳しいもので、会場の面積で換算すると最大人数は1200名と決められています。そのためもっと参加したいという要望はあるのですが、応えられない実情があるんです。
 長らくこの会場で開催していますし、便利な地域でホールもダーツに合っていますので、しばらく場所を変えることは考えていません。
 大盛況になってたいへん感謝しています。
いろいろな選手と話をしますと誰もが楽しかったと言っていますが?
 それには二つの理由があると思います。まず世界から多くの選手が来ているので、いろいろなダーツスタイルと出会えることですね。同じダーツルールですが、やはり国によって個性があります。こんな攻め方があるのか?こんな投げ方があるのか?改めてダーツが新鮮に感じられることでしょう。
 そして次にこの大会に参加する選手が、みんな本当に素晴らしい人達ばかりなんです。たとえ言葉が通じなくても、ダーツによって心が響き合います。
 SNSを交換したりして、輪がどんどん広がっていきます。この大会で毎年、再会する選手も決して少なくありません。
香港のダーツ事情はどんな状況ですか?
 最初にソフトダーツを始めた時、スティールダーツ団体は我々のことを良く思っていませんでした。おもちゃみたいなダーツと感じていたのでしょうね。しかし今ではこの大会にも参加してくれるようになり、大きく状況が変わり進歩していると思います。これは画期的なことですね。
 ダーツロケーションは一時期、爆発的に増えましたが、今は落ち着いたという表現でいいでしょうか。選手も増えてリーグやクラブがいくつもあり、とても良い状態だと考えています。
 危惧している事は最近新しくマシンメーカーがいくつも現われ、少し市場を掻き回そうという動きがあることです。業界の安定のためには不安要素だと感じます。
アジアではダーツが何処の国においてもポピュラーになって来ました。次は中国だと言う方々も多いのですが?
 中国は広大な国で人口も多いため、ダーツビジネスをしている方々は大いに期待していることでしょう。少しずつ広まっていますね。私自身も中国政府と一緒に上海で活動しています。ダーツクラブをつくり、ダーツを教えています。特に学生、ユースに力を入れています。きっと将来そこから素晴らしい選手が育つことでしょう。
 日本人に申し上げておきたいのですが、中国にビジネス参入するのは思ったよりたいへんなことですよ。いつも政府が出て来て、全部支配したいという傾向が強いですからね。また何でもコピーするでしょうから、慎重に始められることを助言したいと思います。

これからアジアではダーツは何処に向かうとお考えでしょうか?
 ソフト、スティール共に競技人口は増えていくことでしょう。しかし私個人としてはソフトダーツの方があらゆる年齢層に向いているため、より受け入れられると思います。その理由は安全だということですね。ユースや高年齢層のプレイヤーにとっては、大事な要素です。その層に力を入れてダーツファンを拡大させたいですね。
 その中でも優れた選手がスティールを手がけPDCを目指すのが理想なのではないでしょうか。今中国はPDCを強く意識するようになっています。それでも上海の学校が選んだのはソフトダーツでした。プロセスが重要だということですね。
日本のソフトダーツ・プロツアーについてどのようにお考えですか?
 ソフトダーツの発展には、あまり貢献していないように感じてなりません。世界の選手を受け入れていないというのも不思議なルールだと言わざるを得ません。
 ソフトダーツの神髄は楽しむということです。その意味ではソフトダーツにプロツアーは必要なのでしょうか?非常に疑問を持って見ています。
 多くの意見があるでしょうが、私はソフトダーツのプロ化にはあまり感心がありません。
来年について、もう新しい企画などは考えていらっしゃるのですか?
 新しいソフトの導入を考えています。試合の進み方、結果は勿論のこと、どのマシンでどの選手がいつ始まって終了しているのか、などをコントロールで一括管理できるようなシステムです。選手もその情報を共有できるので、待ち時間も減りより運営がスムーズになると期待しています。
ダーツのオリンピック競技の可能性についてはいかがお考えですか?
 そうなったら大歓迎ですが、厳しいでしょうね。アルコールやタバコのイメージは簡単には払拭されないことでしょう。さらに英国本場では大きな賭けの対象ですからね。期待したいですが、実現するとしても長い時間が必要だと思います。
 世界で多くの国がダーツをスポーツとして確立することが求められることでしょう。そのような環境が整うと種目に上がるかもしれませんね。
これからの夢は何ですか?
 私は中国人です。中国でダーツを大きく拡大することに尽力し発展させ、大成功させたいですね。

 
 
大会最終日の夜は大パーティー
 この大会の取材は今回で3回目。実は縁があるためか第一回大会にも訪れていた。その時はまだそれほど大きな大会という印象ではなかったが、14年でここまでに成長した。驚いたのはこのパーティー。日本でも多くの大会に行ったが、これまでの大掛かりな席は記憶に無い。毎年開催しているということだが、日本と比較すると全く異なったダーツ事情を感じる。どのテーブルでも大騒ぎ。しばらく時間が経つと知り合いのところに出向き挨拶!乾杯!多くの人達と友達になったが、帰国するとホームページが大賑わい。見てくれた証拠だ。


 
 







