Vol.108 松田 純
この年なので先が短いです(笑)

2021年5月号

最初のダーツとの出会い
もともと高校生の頃からビリヤードをやっていて、まだ20年経っていないくらいの時にそこにダーツのマシンが入りまして、友人たちとプレイするようになりました。そしてその後に引越をしまして、日曜日に近くを散歩していたところダーツバーがあったんです。どんな所なのかと入って、マスターとプレイしたんですがボコボコにされたんです。負けず嫌いだったので、そこからですね。彼を倒すために、毎日練習を始めてすっかりはまってしまいました。
練習はけっこうスティールボードでやっていました。ターゲットが小さいので、それで入ればソフトは入るだろうと安易に考えていたんです(笑)。
ダーツ歴としてははっきり覚えていませんが、多分18年くらいではないでしょうか。

スティールダーツに熱いと聞いていますが?
ダーツってなかなか上達しないですよね。最初はソフトを一生懸命投げていました。
札幌はスティールの環境が整っていて、10年くらい前にスティールを投げていた方々にお会いして始めるようになりました。ソフトはいろいろゲームがありますが、スティールはひたすら501ですがそれだけに奥深いんです。すぐに魅了されてしまいましたね。

グリップ
重要なポイントは?
グリップは基本、持ちやすければいいと思うんです。持った時に違和感、強く握らないと保てないのはダメです。それ以外は2本、3本、4本どれでも良いのではないでしょうか。決まった型は無いと思っています。

自分で探していくということですか?
それもそうですし、どれも間違いでは無いですね。中指にかかっていようが、薬指にかかっていようか、間に挟んでいようか、自分の思ったようにリリースできるのであればどれも正解だと思います。

今までにグリップは変えて来ましたか?
最初は先の方で摘んで持っていて、ある程度は上達したんですが(ダーツライブ、レーティング10)、あまり先で持たない方がいいよ、と助言を受けました。それで試してみたら指の腹で持った方がリリースしやすいことを発見しまして、その時に大きく変えました。その時はさすがに1週間は全く入りませんでしたね。ダーツを始めて2年後くらいでしたが、グリップを変えたのはその1回だけで以後は変化していません。
グリップを変えるのはリスクが高いですね。バラバラになってしまいます。今、考えると先で持っていてもいいのではないかと思います。力が伝わり過ぎると言われたのですが、そういうグリップのトッププレイヤーもいます。

他の人のグリップは参考にしますか?
プロのグリップは全部よく見ていて、気になったときには一度参考にします。理にかなっているのか、研究しますね。グリップで悩んでいる人は多いですが、悩み始めると沼にはまってしまいます。

立ち方
構え方、立ち方はどのようにしていますか?
スタンスは重要です。僕はブルを中心に20の縦ラインを見て、つま先とかかとを構えるんです。PDCの多くのプレイヤーは構える時に下を見ませんが、僕はスローラインを見てから上を見ます。足を合わせてから体重を前、真ん中、後ろなのか気にします。どこがベストなポジションなのかは構えたときに視界で分かるんです。足を合わせて体重をのせたときに、体がどっちに傾いているのかが分かるんですが、それで身体の左側で固定するんです。
がっちり固めると動きづらいので身体がぶれない程度です。左足が少し開いたようになっていますが、その場所と形が僕にとっては理想のポジションです。
身体に力が入るとスローにも影響するので、研究する大きなテーマだと思います。これができている、いないでは入り方は極端に違ってくると思います。構えた瞬間に不安がある時はだいたいスタンスが崩れていますね。

重心の配分について
ソフトとスティールは全く別なものとして考えているので異なります。スティールは7:3くらいですが、ソフトでは9:1です。

その理由は何ですか?
狙い方ですね。スティールでは基本ダーツを再現させることがメインなんです。1本目は20トリプルの上を意識していて、その後は20トリプルに叩き込むことしか考えていないんです。そのためにはスローを合わせることが求められます。スローを合わせるためにリズムが大事になってきて、そうすると前に体重がかかり過ぎると前足が疲れるので、ぶれる可能性が高くなります。そこで安定させるために若干左に体重をかけています。
ソフトは3回再現させるというよりは、1本ずつ狙っています。先がプラスティックなので再現してダーツに当ててもはじかれるんです。狙い重視のため前体重になっていますね。
同じと考えて投げている人もいるでしょうが、僕にはできません。

以前インタビューでフィル・テイラーも全く違うと言っていましたね。
あぁ、よかったです。神様がそう言ったらきっと間違っていないですね。彼にとっては1本目にぶつけていったら、はじかれたなんてありえないでしょう。どのダーツもまっすぐ刺さるのも違和感があるでしょう。
PDCのプレイヤーでもソフトがへたな人いますよね。スティールではバチバチなのにソフトでは途方に暮れているのを見ると、それがよく分かります。

肘について
高い方ですか、低い方ですか?
僕は下がっても上がってもなくて、水平の位置だと思います。これには何のこだわりも無いですね。上げると振り下ろすことになり、下げると押し上げるようになるのですが、どちらも僕には向いていません。
僕にとっては一番シンプルな位置なんです。

肘は動かないようにしていますか?
固めてはいません。そうすると肩に力が入ってスムーズなスローが出来なくなります。肘、肩、手首は連動しているので、気を付けないといけないポイントですね。日々の練習で高さを探して、肘はリラックスさせた方がいいですね。
肘でダーツを投げるわけじゃないので、多少動いてもいいと思うんですよ。指を使う人もいますが、基本投げるのは手首から上の部分です。

プロプレイヤーは肘、肩をよく痛めますよね?
多いですね。僕は整体とかは行きますが、それほどケアしていないです。それは試合後に肩の辺りや腕に違和感がある時は、力が入っていた証拠なんで次に活かしてリラックスして投げるようにします。今のところ深刻な症状はなく、それで対応できています。

テイクバック
最初の始動はどうしていますか?
最近は下からダーツを持ってくるようにしているんですが、構えてからは何も考えていません。自然に倒して1本目を投げます。
2本目は1本目の刺さった結果が見えているので、次のテイクバックで修正します。右に行っていたら多分左に引いているのだろうから、まっすぐ引くようにします。そこで止まってしまうとリズムが変わってしまうので、気を付けています。
よくポンポン投げていると言われますが、けっこう考えていますよ(笑)。

テイクバックの軌道が明確にイメージできているということですね。
今まで長くやってきたので、その中で自然に力まないで引ける場所が身に付いていると思っています。ですので身体に任せていますね。

引く最終点は決めていますか?
決めていません。いろいろな人の動画を見て、練習中に真似ることはあります。深くしたり、浅くしたりして試しますが、最後にはやはり細部にこだわり過ぎないようにという結論に達します。
力が入らないテイクバックの仕方、それを目指してやっています。

スロー
狙う場所によってスローは変わりますか?
スローというよりはリリースポイントが変わります。自分の目線で上と下では変えていて、下の場合では若干ポイントを遅らせています。ダーツを投げて刺さるまでの見え方でいうと、上は上に飛んで刺さる、下は山なりが小さくなって刺さると思っています。20を投げた後、次に19に行く際それほど感覚的には遅らせてはいないんですが、結果的にそうなっているように思います。

投げ終わった後の手の形は気にしていますか?
いやぁ、考えていないですね。投げ終わった後は離しちゃっているので、気にしなくていいんじゃないでしょうか。PDCのプレイヤーはけっこう、あっちこっち向いていますよね。やはり気にするべきはテイクバックの場所だと思います。
右や左に引いたりするので出ていった後に、手の形がバラバラになるんじゃないでしょうか。それからグリップも関係していますね。緊張した場面で人差し指や親指が強かったりすると、やはりバラバラになります。

リズム
どんなことを心がけていますか?
今はリズム命です。入っていてもリズムが崩れているダーツは良くないです。それはたまたまなので、きちんとリズムを整えて投げるようにしたいですね。特にリズムが大事だと思うようになったのは、スティールを投げ始めてからです。1本ずつ狙っていくとターゲットが小さいので疲れてしまいます。リズムよく投げてダーツを集めていく方が正解だと思います。

対戦している時に相手のプレイヤーのリズムには影響されますか?
極端に遅い、早いなどのプレイヤーはいますね。僕はそもそも相手を見ていません。本当は見たいんです。浅田斉吾のダーツはどんな感じで飛んでいるのか興味はあります。でも見るとそのプレイヤーのリズムに影響される可能性があるじゃないですか。なので絶対見ないで横か下を見ています。

ダーツの飛び
気にしていますか?
3年前くらいまでよく知らなかったんですが、自分で見えてる飛びと撮影した飛びって違うんですよ。自分ではまっすぐ飛んで最後にちょっと落ちるように見えていたんですが、動画で見るとすごく暴れているんです(笑)。
矢先が下、上、下と向いて最後に刺さるんですよ。そこで思ったのは縦ブレはまだしも、横ブレはちょっと嫌だなということです。それでも毎回同じだったら許容できますが、違っていたら問題ですね。
僕の知っているプロで回転して飛んでいる人がいます。バレルが回転しているのではなくて、渦巻のように飛んでいるんです。それが毎回同じでよく入るんですね。そうなると飛びもそれほど気にしなくていいのかな?と考えるようになりました。
スティールに関しては自分の飛び方を理解して、どう刺さっているのかを知っている必要があります。スタックさせて集めるときに飛びの特性を知らないと、どう狙ったらいいのかが分かりません。ソフトは必ず真っ直ぐに修正されるので、知らなくても結果は変わらないと思います。
僕の場合3年前から自分の飛びを知ってから、セッティングを研究するようになりましたね。全体を長くすると暴れ方が小さくなり、短くすると大きくなります。バレル、シャフト、フライトの長さをいろいろ試して、どう刺さるのかを検証しました。

練習方法
どんなことをしているんですか?
スティールだとダブルのラウンド、20から1まで最後にインブル、そして次に1から20までそしてインブルです。それから20だけを使って枠を外さないでトリプルを狙って1000点を出します。1とか5に入ったらゼロに戻ります。1本目がトリプルの下に付くと辛いんで、なるべく上に付けます。
それから暗算で501をやります。一人でポンポン投げると感覚が身につかないので、3本投げたらゆっくり戻ってきます。2連続15ダーツ以内が出来るまでやります。
この全部の内容が1セットで毎日それを3、4セットやっています。

ではけっこう長い時間練習しているんですね。
1セットやっては休んで、また次のセットと工夫してやっています。

ソフトはどうしていますか?
ブルのカウントアップ、2連続1100点が出るまでやります。そして60のカウントアップ1000点、ハーフイットで1000点、プロ501で4ラウンドで上がるのを2連続やります。ソフトに関してはゼロワンは4ラウンドを基本に考えていて、先行ではキープでき後攻ではブレイク出来るチャンスがあるからです。

スピリット
ダーツは最後は精神力とよく言われていますね。
う〜ん、僕はそれほどメンタル強くないのか、けっこうネガティブなんです。負けても力が出し切れていれば、相手が強かったから仕方ないと考えます。今までの経験からですと勝ちを意識した時は、いつも負けているんです。
パーフェクト横浜大会でも決勝まで進んで負けました。その敗因は最後のラウンド、ブル3本で終わりだったんです。1本目がブルのいい所に入って、そこでもう外れないだろうと思ったんです。ひょっとしたら次インブルかな?と思いきや2本外すという、まさかの結果でしたね。自分の甘さに呆れました(笑)。
そのためあまり勝ちたいとだけ考えないようにしています。勝負って必ずどっちかが負けるので、勝ちの追求より自分が全力を出せたかどうかに重きを置きたいですね。思っきりやって負けたということは実力が無いということなので、練習に戻ればいいんです。
負けて怒っている人がいますが、全力が出せたのか、実力はどんなものなのか、今後のためにも考え直したほうがいいと思います。

トーナメントでは必ず優勝者は一人ですからね。
誰もが敗者を経験するので、それほど熱くならなくてもちょっとクールになってもいいのでは、と思いますね。

一番重要なこと
あまり細部にこだわらず大きく捉えた方がいいと思います。グリップや肘の位置など気にしてる人は多いですが、大事なことはトッププロを見た時になぜ入るのかその理由を考えることです。グリップや肘の位置で入る訳では無いんです。そのプレイヤーはどういうリリースをしているのか?リズムはどうなのか?その人はどう見えているのか?などを想像して取り入れると、きっとその感覚、テクニックを学べるのではないでしょうか。
よく肘が中に入っているのは良くないと言われますが、PDCのプレイヤーではたくさんいますよね。全体の流れを研究して下さい。ダーツテクニックは幅広く奥深いです。

目標や夢
パーフェクトには2019年第24戦、北海道大会で初参戦、初優勝していますね。
もっと前から参戦したかったんですが予定が合わず、釧路大会からになったんです。優勝できるとは思っていませんでした。

ソフトはゼロワンとクリケットがありますが、どちらが好きですか?
2−2になった後ミドルで負けた時、5レッグ目のゲームを選ぶんですが、僕はほとんどゼロワンを選びます。クリケットは先行を取られてもチャンスがあるように思われていますが、トッププレイヤーには相当きついです。あの人達とクリケット打ち合うよりは、だったら501、9ダーツ勝負と考えます(笑)。やはりゼロワンが好きなんでしょうね。

これからパーフェクトにはどのくらい参戦する予定ですか?
北海道から参戦するのって、なかなかたいへんなので大会を選んで状況を見て出て行こうかと思っています。その際には応援よろしくお願いいたします。

目標や夢を教えて下さい。
この年なので先が短いです(笑)。なので夢ですが、やはりPDCのステージに一度行ってみたいですね。それと北海道のダーツをもっと盛り上げたいです。若い良いプレイヤーたくさんいるんです。でも表に出にくい面があるので、それに尽力したいですね。

※この後PDC World Championship、World Cupの舞台に出場、そしてパーフェクトでは2022年の年間チャンピオンに輝いた。