Vol.95 樋口 雄也
夢のある世界

2019年1月号

グリップ 「今の形は自然な感じだと思います」
最初にダーツに触ったときのグリップを覚えていますか?
いやぁ、さすがに覚えていませんが、きっと摘んで持っていたと思います。人差し指と親指で指先で摘んでグリップしていましたね。

長いダーツ歴でいろいろ変遷があったと思いますが、グリップでは苦労してきましたか?
そうですね。だいぶ研究して変えてきました。今の形は自然な感じだと思います。

グリップは重要なので試行錯誤されましたか?
グリップが決まらないと何もできないし、思い悩むこともありましたね。

人のグリップなども参考にしましたか?
最初の頃はずいぶん真似しました。ダーツを始めた時にNDLにたくさんグリップが掲載されていましたが、活用させていただきました。PDCの選手などは他に情報がない時代だったので嬉しかったですね。
バレルに触ってみて、このグリップだとこういう理由でこの部分にカットが入っているんだな、と考えていました。
今は特別に意識しないで手の自然な形を活かそうと思っています。自分のグリップについて理解が深まっているので、型にはめないで握っています。

ゲーム中やトーナメントごとにグリップは変わりますか?
そうですね。日によって立ち方も変わるように当然グリップの角度なども変化します。そのバランスには気をつけています。試合中にグリップだけを変えることはありません。

今グリップで一番大事なポイントは何ですか?
指に力が入っていないことですね。自分の手はこのような形をしているのだから、バレルを持ちやすいように、が最優先です。

冬や夏で温度、湿度も違いますが、なにか工夫していますか?
僕はそれほど手汗をかかない方ですが、乾燥は意識しています。指がカサカサになるとダーツが握りにくいですよね。自然に持とうとしても滑るとやはり違和感があります。潤いのあるようにクリームなどを使っています。

グリップが全くしっくりこない日などもありますか?
あります。昔からいろんな選手が「グリップが壊れた」などと言っていますが、基本は壊れるなんてことはありません。手の形も使うバレルも同じなのですから。
やはり構えた位置かテイクバックの軌道が変わっているのではないでしょうか。しっくりこない日はグリップではなく、それ以外のことを検証した方が良いと思います。

立ち方 「バランスが大事でしょう」
スローラインはどの場所に立ちますか?
僕は真ん中に立ちます。わりとオープンなスタンスなのですが足の踵から人差し指まで、狙いたいターゲットに向かうように立つようにしています。

立ち方としてはオープン、クローズ、場所も右、真ん中、左と選べるんですがいろいろ試しましたか?
そうですね。工夫してきました。今は腕がターゲットに一番よく伸びやすく、上半身の使い方ができる立ち方をするようにしています。さきほどわりとオープンと言いましたが、若干クローズぎみになることもありますね。これもバランスが大事でしょう。

ターゲットがかぶった時には立ち位置を変えますか?
変える方です。邪魔になって見えにくいと入る感じがしません。

右足の角度はスローラインではどのくらいですか?
ほとんど垂直ですね。その日の膝や腰の体調で少し斜めになっている場合もあります。

両足の力の配分はどのくらいですか?
僕の場合はまず一度後ろに下がってから、左足で身体を前に持っていくという独特なルーティンがあります。ダーツを投げるときは右足7、左足3ぐらいでしょうか。左足に荷重してから前足に移る感覚を重要視しています。そのため少しずつ毎日変化しています。
上半身が動いているのでそれを下半身が受け止めるということですね。テイクバックしている時に少しだけ腰が後ろに下がったり、リリースしてダーツが飛び出していく時には、左足が上がることもありますね。
でも投げ終わった時には元の位置になるように心掛けています。

「特別なルーティンが話題になっていますが?」
僕を真似する人がいるんですが、手をぶんぶん上げたり下げたりしていますね(笑)。実はそうではなくて右手を肩の楽なところに上げて、それから下ろしているだけなんです。その位置がターゲットに向かっていれば、自然な身体の動きができるというコンセプトなんです。
腕や肩をターゲットに力で向けないための結論なんですね。そのためルーティンがうまくいかなかった時にはやり直します。

肘、テイクバック 「無理やり力で動かさない」
特別なルーティンがあるのでノーセットアップですか?
さきほどお話したように肩、手の自然な動きが最重要ですので、肘の位置や高さなどは意識していません。構えるということは力を使いますよね。なるべくそれを無くして腕全体がスムーズに流れるように意識しています
でもこの号が出る頃には、アレ?しっかりセットアップしてるじゃない!なんてことになっているかもしれません(笑)。
セットアップしている時期もあるのですが、やはりそのときのシュート力、結果次第でやりやすいほうを選んでいます

肘は怪我の多い部分でもありますが?
定期的に鍼灸治療院に通ってケアしています。でもどちらかというと肩、背中、下半身の方が気になりますね。
僕のコンセプトで言うと肘はスムーズに動きやすいと思うんです。それを無理やり力で動かすから、複雑な筋肉に影響して怪我に繋がるように思います。みなさんも気をつけて下さい。

テイクバック
最初の軌道の始まりは?
今のノーセットアップだと下からダーツを取った時になるのでしょうか。それから手を振り上げ、自然に収まった場所でダーツを放つ。多くの選手たちとはまるで違いますよね(笑)。
セットアップしていた頃は引くというイメージではなく、たたむという動きでした。その時には始動が明確だったのでしょうが。

そうなるとテイクバックの最終点とは?
当然決めていないということになりますね。自分で設定してそこに引くのではなく、自然な動きの中で決まるということです。

スロー、ダーツの飛び、リズム、練習 「スロー全体を一つの動きとして捉える」
スローについて
狙う場所によってスローは変えますか?
変えてるつもりはありません。ターゲットに向かってダーツを放り投げるだけですね。

上と下のターゲットを狙う場合の基準は?
どのターゲットを狙うにしても腕の動きは変えていないですね。全身の動きだと思います。勿論、腰や肩を意図的に大きく変えてもいません。
スロー全体を一つの動きとして捉えて、それを崩さずにターゲットに向けています。

ダーツの飛びは気にしていますか?
僕の場合はそれほど矢速が早い方ではないです。理想の飛びは無回転でスーっと飛んでいくダーツですね。スティールでもソフトでもそれでターゲットに吸い込まれていく、それを目指しています。

リズム
いろんな意味のリズムがあると思うのですが?
すべてのリズムを大事にしています。テンポが早いとか遅いとかが、日によって違うのは仕方がないことだと思います。それより常に一定のリズムがあるように意識しています。
例えばスローラインのオッキに足を付ける前に少し左右に揺れて、それから大きく動き出し足がついて、手を出してから後ろに戻って体重を前に乗せて投げるまで一連の動きのリズムですね。
時々ダーツを落としたり、うまく次のダーツを持てないこともありますがリズムを崩さないようにしています。

ダーツは対戦相手のリズムにも影響されると思うのですが?
あまり気にしていないですね。自分自身の問題だと思います。

ゲームですがゼロワンとクリケットどちらが好きですか?
う〜ん、好きなのはゼロワンですかね。特にパーフェクトはスティールのようなルールですからね。いつもしびれています。クリケットの駆け引きでも楽しんでいますよ。

ソフトとスティールの違いは何だと思いますか?
僕の場合はやっていることを同じにしたいので道具やセッティングを変えています。やはり距離もターゲットの大きさも違いますからね。もし全く同じバレルでセッティングも同じにすると、同じように飛んでいないと感じます。
感覚とやっていることを同じにするために、敢えてギアは違ったものを使っています。

練習についてですが、どんなことをしていますか?
基本ソフトでの練習が多いのですがカウントアップ、クリケット、イーグルアイ、ハーフイットを繰り返しています。それから1本ごとにスローラインに立って投げる練習。そして一点を狙って飛びの確認などもしていますね。

毎日しているのですか?
今はけっこうお仕事などをいただいているので時間が取れる日ですね。それでもダーツは毎日投げている状況です。

ダーツの魅力 「夢のある世界」
スピリットについて
勝つというモチベーションを保つには?
それが昨年の最大のテーマだったと思っています。今は一つの試合に向かって、後何日と気合を入れる時代ではないと思うんです。ほぼ毎週ですからね。それでもその中で結果を出している選手がいるのですが、僕は残念ながらうまくコントロールできませんでした。
試合が特別なことに考えられないので、明らかにハングリー精神が求められていますね。
昔はパーフェクトが年間13試合ほどで、終わると3週間あるのですが、その時に自分に課題を与えていました。
今年はもっと結果が出せるように工夫したいと思います。

ダーツ歴も長くなりましたが改めてその魅力を教えて下さい。
いろんな楽しみ方ができると思うんです。お酒を飲みながらみんなでワイワイできることは、とても大事だと思っています。そしてうまくなりたい、強くなりたい場合にはダーツバーを回れば、たくさん対戦相手がいます。
今となってはプロツアーまであります。とても夢のある世界ですよ。

今年の抱負は?
昨年はターゲット契約選手になったり、PDCアジアン・ツアーも回り本当に目まぐるしい一年でした。正直忙しかったです。それでもパーフェクトの年間ランキングは不甲斐ないですね。オフの期間を有効に過ごして、今年はみなさんに新しい僕をお見せできるようにしたいと思います。
頑張りますので応援よろしくお願いいたします。

※ 樋口プロは積極的にダーツ個人レッスンを行っています。ご興味のある方は!