Yukari Nishikawa-Technique-Top

Vol.27 西川ゆかり
グリップは最重要課題

2007年9月

ダーツを投げるときに一番注意していることは?
大事にしていることは…ゲーム中は色々なことを考えていると全然入りません。逆に色々考えないこと、考えすぎないことに気をつけています。技術的には一杯ありすぎて、飛びもそうだし、コントロールもそうだし…。今一番気にしているのは「ダーツの回転」、ダーツを回転させたいのです。PDCのプレイヤーは、みんな左回転させていますよね。あの左回転になるように練習しています。無理に回転させるのではなくて、自然に親指で押すことで、左回転を生み出したいんです。今は、無回転なんですけど、無回転だとダーツ自体が死んじゃってる気がするんです。もっと生きたダーツを投げたい…フィルテイラーもキングも回してますよね。
う~ん、でもこれはひょっとして究極の課題なのかもしれないですね…。日本でも昔からダーツをされている方は少し回しているように感じます。投げ方ではダーツを押し出すスタイルではなくて、腕を振るスタイルにしたいと練習しています。

ダーツが上手くなったポイントはありますか?
何回かありましたね。う~ん…でも口では表現できないですねぇ。私こう見えても意外と研究熱心なんです。しょっちゅう色々なことを試しては、試行錯誤してスタイルを変えることは度々ありますね。長いことダーツをしていると、自然にダーツが変わってくるようです。
むかし私は、帽子を被ってはダーツが投げれなかったんです。ダーツがツバに当たっちゃって、それが今は邪魔にならないんですよね。肘が下がっているということでしょう。それが原因で自分のダーツの軌道が見えづらくなっています。今はこれを直すポイントを探しています。これが、良い調子が長く続かない原因だと考えています。

それを克服していくには…?
本当に左手で投げようかと思いました(笑)。実は左手で投げるとダーツの軌道がしっかり見えるんですよ!ちゃんとダーツを引くことができるんですよ。左手で何度か練習して、この感覚を右手でと思っても、それが右手だと上手くいかないんです。

グリップについてはどうですか?
グリップは今でも悩んでいますけど、一番悩んだポイントですね。グリップさえしっかりしていれば、ある程度のダーツは投げる事が出来ると思います。トーナメントに出場していると、大きくフォームを矯正することは厳しいですよね。そんな時にはグリップをしっかりさせることに重点を置いていました。
グリップでいちばん気をつけていることは、親指です。親指にダーツを乗せながら最後にダーツをはじくことを理想に練習しているんですけど、まだまだ出来ないですね。親指にダーツを感じられるように常に気をつけています。今使用しているスティールダーツは23gですけど、そのダーツの重さがあまり感じられないんです。7gのダーツを投げていた頃は、軽いダーツの重みを親指で感じていたはずなんですけど…。

これから目標としているものは?
正直言って、以前ほどの明確な目標がなくなってきていますね。以前は英国のトリナ・ガリバーさんを倒すことが目標でした。彼女こそ「真の世界チャンピオン」です。できると信じていた…だけど…彼女年々強くなってきているし…。言葉は悪いけど彼女「ダーツの化け物」ですよ。でもまだ諦めたわけではありません。
あとは、日本の男性プレイヤーと肩を並べられるようになること。まだまだ男女のレベルの差はかなりあります。でも、「へ~、ダーツって男も女も関係ないんだ」って思われるようになりたいです。実際関係ないと思うし…。日本の女の子達にそれを見せてあげたいです。

目指すダーツプレイヤーは?
強いプレイヤーになりたい。「上手くないんだけど…なんか強いんだよね~」と言われるプレイヤーに…。これまでも気合だけで勝利してきた感じですからね。勝負強さだけは持ち続けたいな。そしてもし、強くなくなったとしてもダーツが大好きなプレイヤーでい続けたい。「あの人と投げるとダーツが楽しい!」と思われるKーPONのようなプレイヤーに…。KーPONは強くて楽しいダーツが投げられる天才です。

ダーツに携わってきて、ダーツとはいったい何だと思いますか?
色々な意味で、自分の可能性を試すことが出来る存在だと考えます。あまりにも生活に密着しているので、完全に生活そのものになっていますね。これからもダーツを辞めることは無いでしょう。

心に残る試合は?
二試合あります。まずは日本のハードの試合で上位32名で争われるマスターズで勝てた時ですね。7〜8年前のことですが当時は男女混合だったため、本当にきつかった。それだけに感慨深いです。ゲーム数はベストオブ11だったと思うんですが、決勝は平賀選手。フルレッグにもつれ込んで、たいへんな思いをして勝った方がやはり心に残りますね。次がラスベガスオープンのクリケットゲームでステイシーに勝った試合です。アメリカでトップの女性にクリケットゲームで勝てたのは、大いに意義があると感じました。
ソフトでは、去年のブルシューターシカゴ大会で大内麻由美選手とのダブルスで優勝!したのが一番嬉しかったかな?二人で力を合わせて勝ち取った優勝って、シングルス戦にはない喜びがありますね。麻由美は私のベストパートナーです。

読者へひとこと…
私が、20年近くダーツを続けてこれたのは、単にダーツが楽しいだけでは無かったと思います。やはり周りの仲間に恵まれたことが一番大きいですね。ダーツをしていると常に新しい仲間が増えていきます。これはまさしくダーツをすることによるものです。ダーツによって知り合うことのできる仲間を、もっと大切にすることができれば、ダーツは更に楽しくなると思いますよ。

ダーツ以外でのご趣味は
この年になってはじめてお料理に興味を持ちはじめました。最近は素潜りを始めたので、そのうちサイパンに行ってダイビングのライセンスでも取ろうかなと思っています。潜るのって難しいですよね。一生懸命、潜ろうとするんだけど、浮いてきちゃうんですよね。でも私、実は泳げないんです……。

グリップ”で一番気をつけているところは?
私にとってグリップは一番の最重要課題です。最初の頃は実に不思議なグリップをしていましたが、今の3フィンガーに矯正してからは、あまり大きくは変わっていないと思います。親指と人差し指が浅くなったり、深めになったり…。実際にダーツを飛ばすのは指だし、グリップがしっかり持てていないとダーツに力は伝わらない。でも、しっかりといってもグリップに力が入ってしまうと、手首も腕も硬くなってしまいがちで、手首のスナップが効きにくくなってしまいます。なるべく力を抜きながら親指にしっかりとダーツの重さを感じることにポイントを置いています。ダーツを飛ばすのに大きな役割を果たしているのが親指、高さや方向を決めるセンサーになるものが人差し指と中指だというイメージでしょうか。私が見てきた外人プレイヤーでダーツが左回転をしながら飛んでいく人が多いというのは、リリースする瞬間にダーツを親指で押し出しているんです。それができれば安定した生きた飛びが得られると思います。

グリップでダーツの”重心の掴み方”について?
私の使用しているDMCのファルコンは前重心なので、ダーツの前側を持っています。でも、必ずそのダーツの重心を持たなければいけない訳ではないと思います。例えば、ダーツの後ろ側を持つ場合には棒状のものを投げる感覚、前の方を持つ場合にはパチンコ玉みたいな”球…球状のもの”を投げる感覚になるんじゃないかな?昔、ハードの上手なプレイヤーで、バレルではなくポイントを持って投げる方がいましたよ!(笑)

スタンス”はどこに気をつけていますか?
最初の頃は斜めに構えていました。それが今はスローラインにぴったり横になっています。この構えにしている理由は、”腰”をしっかりと入れたいからです。腰がしっかりしていると、上半身の力が抜け、安定して体が前に突っ込まなくなります。ダーツボードに向かう際に、まず腰をしっかり決めてから、上体を起こす…これが一連の動作になってきていますね。上半身はなるべくこじんまりしないように…胸を張って大きく構えるように気をつけています。私は股関節が柔らかいので、左足をほぼ90度に向けていますが、これはしっかりと地面に左足をつけることを意識しているからです。

構える際の”肩”で気をつけているのは?
肩が上がりすぎないことに気をつけています。私は構える際に、下からすーっと自然に腕をあげることで、肩が上がり過ぎないようにしています。上から腕を下ろしてしまうと、肩が上がってしまう場合があると思います。私はテイクバックに力が入っていないので、肩自体が動いてしまうことはないですね。

大切なポイントでもある”肘”については?
私、肘が動きっぱなしなんです(笑)肘で気をつけているポイントは…気をつけてはいるんだけど、上手くできないんです。左目が利き目なので、どうしても肘が内側に入ってきて、最近では肘が下がってしまう。強”振るダーツ”をするのが理想なんだけれど、肘が下がってしまうことで、押し出すダーツになってしまっています。肘が下がること自体が悪いわけではないと思いますが、私は肘が下がると窮屈になって、”振るダーツ”ができないので、今は肘が下がることに気をつけています。

テイクバック”については?
テイクバックで引ききった際、手首に力が入らない前でテイクバックを抑えることに注意しています。引いた際に手首を返しきらないように注意しているのです。手首には余裕を持つ程度の返しきらない状態で投げたほうが、手首のスナップがより効いてくると思います。テイクバックを引いて来た時に、手首を返しすぎるとしなやかさが失われてしまうような感じを持ちます…そう鞭の感覚ですね。ダーツの飛びが悪くなってくるとリストバンドを手首にして、あまり手首が返り過ぎないように矯正したりしています。

“フォロースルー”については?
私はフォロースルーを真っ直ぐ出すようにしています。でも、最後まで腕を伸ばしきる必要は全然ない。フォロースルーは、テイクバック、リリースといった一連の動きの後に自然についてくるもので、腕を伸ばすことを目的としてしまうと大事なリリースポイントをずらしかねません。私はリリースポイントはなるべく早いほうがいいと思っているのですが、それが遅くなると、フォロースルーの最後に手首が垂れた感じになってしまいます。あと、スナップが効かずに「よっこいしょダーツ」になっている時も手首が垂れてしまいますね。

ダーツを投げる際の”リズム”については?
外国人のプレイヤーは、一本一本投げるリズムが早いですよね。日本人のプレイヤーは”じっくり狙ってゆっくり投げる”プレイヤーが多いと思います。私も海外でゲームをして国内に戻ってくると、投げるリズムが早くなりダーツの調子も良い状態になっています。じっくり狙ってダーツを投げるよりも、ある程度は”リズム”を早めに投げることは必要だと思いますね。そのほうがダーツを投げること自体が楽になるように感じます。実は…以前メトロノームを使って、ダーツのリズムについて練習したことがあります(へぇ~)でも…あまり意味があったかどうかは不明です(笑)。対戦相手のリズムによっては、自身のリズムを保つのが難しい場合もありますが、やはり長いゲームでは”リズム”が非常に大切だと思います。リズムには早い遅いと個人差があると思いますので、基本的にはダーツを3本投げるリズムを一定に保つことが大事だと考えています。3本投げる=1セットになることですね。

ハードとソフトの違い、気をつけていることは?
ソフトダーツでの経験はあまり長くはありませんが、ソフトを始めた当初、ポイント(チップ)の「素材の違い」「形の違い」に苦労しました。ダーツ自体については、それほどハードとソフトに違いはないと思います。ただゲームは、試合感とか、なんとなく全く違う競技のような感覚を持っています。ハードは全てダブルアウト。最後にダブルアウトするまでゲームが決まらないので、どんなに上手いプレイヤーとでも挑戦できる気持ちになれますね。それに比べてソフトは、上手いプレイヤーには挑戦しづらい。絶対に勝てないと思って尻込みしてしまいます。ソフトダーツは実力差がはっきりでてしまうと思うのです。ただ、ソフトダーツは本当に楽しくプレイすることができますね。笑いがでたり、会話をしたり…ハードダーツをプレイするときは、どうしても無口になってしまいます。決してソフトとハードで、真剣さが違うってわけではないんですけどね。

練習方法については?
ハードダーツでお薦めしたい練習方法は、外国人プレイヤーから教えてもらった練習方法なんですけど、170残りを2人で練習する方法です。2人で170を、9本以内で交互に投げて上がる練習をするんです。9本以内で上がれたら、次に5点増やし175点で練習する…。これを繰り返して200~300点まで続けるんです。点数が上がってくると9本上がりが難しくなってきますが、点数を取る練習にもなるし、アレンジを覚えることもできる。普通にゲーム練習をするより、ゲームの最後の締めの部分を練習する方が非常に効果があると思いますよ。私も最近良くやっている練習方法のひとつです。ソフト…あまり練習しないから(笑)。うそうそ練習しますよ。ソフトは主にゲーム練習をしています。

ダーツの”飛び”ついては?
求めている”飛び”は強いダーツではなくて、伸びるダーツ…生きてるダーツが目標です。アラシ君が投げているダーツのような飛びですね。当然地球には引力があるわけですから、全く直線ということではなくて、ある程度”弧”を描きながらすーっと伸びる”飛び”が理想でしょう。ダーツの軌跡の”弧”は、なるべく小さいほうが狙いはブレないと思います。それにはリリースポイントを常に一定に保つことが重要ですね。

メンタル部分について、特にゲームでの集中力については?
色々なタイプのプレイヤーがいると思いますが、私自身は…特に大事なゲームのときは、あまり他の人との接触を持ちませんね。自分の世界に入っちゃうんです。ゲームとゲームとの空き時間もずーっとその世界に居たいから、空いているダーツボードで一人練習をしています。ちょっと暗くて、自分の中に閉じこもるタイプですね。最近はあまり無くなりましたが、以前はトーナメントの前の日に眠れないこともありました。「このゲームに勝ったら… ワールド・カップへ行ける…」そんな時は、前の日から緊張していましたね。ゲームの当日、短い時間に集中力を高めることができるようになるには、かなりの経験が必要だと思います。
プロのプレイヤーを見ていると、例えさっきまでリラックスしてお酒を飲んでいたとしても、壇上に呼ばれると瞬時に”パッ”とスイッチが入りますよね。まだまだ私にはそれはとてもできないですから、前の日から、わざと自分自身にプレッシャーを掛けるようにしています。自分が緊張していることを認識するように、仕向けているんです。

毎日いるので遊びに来てください
Palmsがオープンして以来、ずっとホームにしてきました。ずっとお客として来ていたんですが、今年の4月からBOSS(通称シンさん)のアシストとしてスタッフ?のような事をしています。といっても私はお料理、カクテルなどは作れないので、主にお客さんと飲みながら遊んでいます。(遊んでもらっているのか…?)営業ダーツは一切いたしません。(笑)でも、よく負けます…。ガッツリ投げたい人は、BOSSに挑戦してみてください。アホみたいに入ります。最近、ダーツと共に人気なのが「Wii」です。コントローラーが4つあるので、4人で「マリオパーティー」で盛り上がってます!そのうち、「Wii」でPalmsハウストーナメントをやろうかと思っています。(笑)ベランダの手作りデッキは「海の家」風。夜風にあたりながら飲むお酒がまた美味しい。営業時間が朝6時までなので、朝まで粘ってくれればベランダからすばらしい朝日が見れます。私は夜9時以降でしたら大体いるので、是非遊びに来てください!
そして、勇気のある方は…「ゆかりしゃんが作ったカクテル」を注文してみてください。思いもよらない味に出会えるかもしれません…。