2017年1月
【技術の作り方】
皆さんも多く考えているであろう、スティールの技術についてですが僕は現状ではあまり考えていません。
一昨年ぐらいから「~抜き」という言葉が出てきて自分はこのタイプだとか、どうしたら「~抜き」になるかなどスティールを設置してあるお店では話題になったことでしょう。今もそうかもしれません、僕もその話をする一人です。
スティールとソフトの技術の違いというものをなんとなく感じ、スティールを続けています。そしてそれをただ考え、議論することだけに留めず、実践レベルにまで上げていくことが重要です。
そのためには「変化をさせるレベル」から「変化をしていくレベル」にあげていくことです。
こちらに来て約4カ月、僕はきっと日本にいるころよりも楽しくダーツを投げられていると感じています。
ダーツに触れる時間も多くなったり、毎週リーグに参加したりと今後のために有意義なダーツライフを送っています。自然と投げ方や練習方法も変わってきています。それこそダーツの技術もより実践的なものになってきているのではないかと感じています。
そして大事なことは、これが考えて導き出したものではなく、体が反射的に順応し作られてきている点です。毎日、長い時間練習するのと練習の度に長いレグ数をこなすのとでは、その中身や疲れ方などは全く違います。長いレグをこなしているうちに、それに順応するように体は反応して修正してくれるのです。
僕には考えることよりもダーツというものを五感で感じ、体に反応させるほうが合っています。いろいろなことを経験していく中で凝り固まった頭を少しずつ柔軟にしていくことで、蓄積したものを信用することができるようになり、結果フォームが出来上がっていくのです。
例を挙げて言えば、「ダーツの刺さりは上向いたほうがいい」というのは上向いたことでどうなるのか、その場合に自分はどう感じるかを知ることが重要です。その結果「なにか違う」という感覚があればやらないほうがいいと思いますし「俺は上向かないでもグルーピングする」と思えばダーツを無理に上向かせる必要もないです。
周りが言っていることを聞くことと自分の考えがないということは紙一重で、様々な意見の中で自分を見失うことのないようにしっかりと自分がいいと思うこと、気持ちがいいという感情を信用することが大切であり、あくまでも自分の考えが幹であり大木でないといけません。周りの意見は枝葉ぐらいの考えでいいと思います。
しかし、自分のフォームや飛びを研究することは大切なことです。それこそが日本人に合っているスタイルだと思います。ここ10年で日本のソフトダーツレベルは急激に上がりました。それは先輩プレイヤーたちによる研究の賜物ですし、業界全体の取り組みの成果だと思います。
そして、ここ2、3年ほどでスティールダーツが広まりつつあり、今後レベルが上がってくる時期に入ってくることでしょう。その時、自分がそれを牽引していくのか、取り残されてしまうのか、それとも抜きん出るか、それはこれからの自分次第です。
そうやって皆で切磋琢磨し全体のレベルを上げることができれば、ソフトダーツのように世界に誇るダーツ大国として、日本のスティールダーツがイギリスやオランダに並ぶことも夢ではないと思います。
【リーグを経験して】
人の縁と言うのでしょうか、こちらに来てまだ4カ月経たないですがいろいろなプレイヤーと知り合うことができました。もちろん日本人のプレイヤーやダーツ以外の知り合いも増えました。
またその関係から複数のリーグにも参加させてもらえたり、世界選手権を観に行けたり、とても貴重な時間を過ごせています。そしてそうした時間の中、日本との違いを感じることもできています。
僕は現在3つのリーグに所属しています。1つは個人戦のリーグ、残りの2つはチーム戦のリーグです。チーム戦のフォーマットはすべてシングルスのベストオブ7セット・ベストオブ7レグです。最低参加人数は7人、各々ベストオブ7を戦い4つ取れば勝ちです。
BDOの世界選手権出場経験者も多く、すべてがアマチュアクラスというわけではありません。実力的にはPDCにいてもおかしくないレベルの選手も在籍しています。そして対戦はすべてくじ引きで行われますので、誰と当たるかはわかりません。
日本では強い人がシングル2つ目(名古屋でいえば)などなんとなく暗黙の了解がある気がするのですが、こちらでは完全にランダムです。
試合はホームチームがスコアラー、アウェイチームがコーラーとなっています。スコアはすべてn01のようなスコアソフトで管理されていて、すべての成績が記録されます。
上位リーグでは平均スタッツが28以上の選手もいます。とはいえ、これもあくまでひとつの都市の地区リーグでのレベルにすぎません。個人戦も同様に上位ディヴィジョンになると強いダーツを打ってきます。個人戦はすべてのディヴィジョンで8レグ先取、7|7の引き分けありのベストオブ14レグのフォーマットです。日本のようにベストオブ3は採用していません。
やってみてわかるのですが、スティールダーツの面白さというのはただターゲットに入れるということだけではありません。長い試合では必ず流れというものが存在し、その流れを作る1本を感じ取ることができます。
それはどのレベルでもあるもので、それを作り掴み乗るということがゲームを制するうえで非常に大切な要素になっています。
一発勝負の短期決戦にも面白さがあるように、長いレグの試合には長期決戦ならではの面白さがあるのです。個人的にはスティールダーツというものは長いレグ数でやってほしいですし、そのほうが楽しめるのではないかと思います。
またそういった長いレグを経験しておかないと、いざ世界と戦うとなった時にその経験が勝敗に大きく影響してしまうはずです。
日本では現状のフォーマットをいきなり変えるということは難しいかもしれません。それでも、店で対戦をする場合や自宅で練習する場合は長いフォーマットでやることは可能です。まずはベストオブ9からやりましょう。対戦ばかりでなく、ときにはスコアラーやコーラーをするのもいいと思います。
どの役割であれ、その役割ならではの楽しさを感じることができるはずです。
そしてそれが本場のプレイスタイルだということを知ってほしいです。
技術やメンタルの部分で差があることはすべてのプレイヤーが感じていることですが、それはこれまでに積み重ねられた歴史の差であって、今後続けていけばその差は必ず埋まるものだと信じています。しかしながら、本場のリーグ環境や店舗など日本ではなかなか知られることのない部分での違いに注目している人はどれだけいるのでしょうか。
練習や試合だけがダーツではなく、その周りの環境を含めて「ダーツ」だと思います。
まずは取り入れることができる部分から少しずつ取り入れていき、日本ならではの良さとうまくミックスしていく。
そういう積み重ねが大事ではないでしょうか。
PDCやBDOばかりに注目するのではなく、「ダーツ」というものを俯瞰で大きく捉えて全体のレベルを上げていく。それこそが日本のダーツ発展に繋がっていくのではないでしょうか。
僕の望むことはイギリスに来なくても日本で世界レベルの選手達が生まれ、活躍することです。もちろん自分がその中の一人になることも。
今回のPDC世界選手権は歴史上初めてイングランドの選手がBest4に残れない大会となりました。
これも各国のダーツ環境が上に挙げたような積み重ねを発揮してきた証なのでしょう。日本はこれからです。いずれ彼らにとって脅威となる国になれるように頑張りましょう!