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No.4 眼について

2004年9月

Science_column_No.4-1

読者の皆様、暑中お見舞い申し上げます。
前回は当方の諸事情でみな様への原稿が遅くなり、一回お休みさせていただきました。そのお休みの間、ものすごい猛暑でしたよね。夏に本格的に入る前にすでに夏バテ、なんて方もいらっしゃることでしょう。でもかえってこの暑さの中、今ダーツライフをおいていらっしゃるお店では、ダーツに興じつつ、ビールもたしなまれる方が多かったのではないでしょうか。
一方、福井、福島、新潟では集中豪雨災害が酷かったですね。被害にあわれた方々に改めてお見舞い申し上げます。
さて、今回は視覚の話をさせていただきたいと思います。私がよく行くダーツバーはみな、雰囲気を盛り上げるためか、結構暗めのインテリアや照明になっていることが多いですね。行く時間帯にもよるのでしょうが。ダーツのボード部分周辺だけが照明に照らされ、その周りはほの暗い明かりで静かにお酒をたしなまれているところなど。

このとき、目の中ではどのように的やダーツを捉えているのでしょうか。科学雑誌なんかでよく書かれていますが、目はカメラの原理によく似ているんですね。眼球内面にはカメラのフィルムに相当する網膜といわれる黒褐色の膜が内ばりされています。その網膜に、見ている対象物が天地左右逆転して目に入ってきた光情報が写りこみます。
今の季節、浜辺ではつい振り向いて見てしまう、鮮やかな水着姿の女性が多いですよね。目を惹く色や形と言うのは実は光という波、難しい言葉で言うと,電磁波が色や形をあらわしているのです。この網膜では光という電磁波情報を電気信号に置き換えてしまうはたらきを持っています。こういった電気信号に置き換えるという作業は網膜の中の一番外側にある杆状体細胞と錐状体細胞が行っています。杆状体というのは円柱状の細胞で、光の明暗を感じる細胞なんです。錐状体細胞というのは細胞の頭に三角帽子をかぶったような感じの細胞で、この細胞は光の電磁波を感じて形を認識する細胞です。昔から鳥目って言いませんか?暗くなったらものが見えにくくなるといういわゆる夜盲症を指しますが、これは光の明暗の感覚がビタミンAが体内に少ないためまず杆状体細胞から十分機能しなくなって発生するんです。ビタミンAは、かぼちゃ、にんじんなどの緑黄色野菜によく含まれています。どうですか、ダーツのお店の方、暗い照明の中でダーツをやる代わりにといったら何ですが、お客さんには前菜で緑黄色野菜をふんだんに使った小料理などをおだししては?
さて、この光情報を変換され天地左右逆になった情報は神経細胞をリレーして、最終的に視覚中枢といわれる脳の後方部分に情報が入っていき、そこで視覚情報は分析され、他の記憶していた情報などと光情報を刷り合わせて目に入ってきた光情報、つまり視覚情報はなにか、を判断します。この上下左右反転というのは大変面白く、右の図に示すように網膜の上半分の神経は脳の下部分を走行し、また網膜の下半分の神経は脳の上部分を走行します。
またさらに、図の向かって左側の脳の中枢で考えると、右側の目からきた右鼻側の網膜由来の神経と、左側の目からきた左耳側の網膜由来の神経とが合流して、ものを見る中枢に伝達されるわけなんです。

読者の皆さんは暗いところから明るいところにでると一瞬「あ、明るい」とはじめまぶしさを強く感じ、ほんの一時、周りの色などを正確に感じることができなくなりますね。そのとき一般に白っぽく感じる方が多いと思います。これを明順応といい、通常1分間程度で慣れてしまうと思います。これと同様なものに、暗順応というものがあります。つまり、明るいところから、急に、たとえばダーツバーのような暗いところに入ったときに、はじめなかなか暗いところのものが見えにくく、徐々にものが見えるようになっていきますね。これが暗順応です。暗順応は明順応とは違い、ほんの1、2分で改善するものではないんです。通常、暗いところに入って約30分くらいで著明に改善し、約1時間程度で暗いところにほぼ慣れた状態が作られます。先程網膜の話で、網膜の光を感じる細胞には杆状体細胞と錐状体細胞の2種類があり、光の量を感じるのは杆状体細胞で、光の周波数、つまり色を感じるのは錐状体細胞とお話しました。杆状体細胞の暗順応は遅く始まるのですが、光の量を感じる能力は錐状体細胞より断然によいわけです。一方、錐状体細胞は杆状体細胞とは逆で暗順応は早く始まるのですが、光の量を感じる能力は杆状体細胞に比べて非常に弱いわけです。
読者の皆さんがダーツバーに入られたとき,店内が暗かったら、目の中ではこういった細胞がとても微妙に暗闇に慣れようとがんばっているわけです。そう、店内が暗かったら、少しお店で付きだし等を楽しみながら、談笑でもして、店内に入って30分を過ぎたころにおもむろにダーツに興じるとよいでしょうね。ちょうど目の中で暗順応が促進され、暗いところでも色や形の判断が、よい状態で可能になる時間になりかかっていますから。
ただし、読者の皆さん、食べ過ぎ、飲みすぎには十分注意を。糖尿病になんかなったら、網膜が傷められ、楽しみのダーツもできなくなりますからね。

今回はものの見え方についてお話させていただきました。
Have a nice Dart life with good condition!