2016年3月
ダーツのパーツの種類は、バレルを始めフライト・シャフト・リングなど、それぞれ多種多様化しています。
多くの種類の中から選ぶ楽しさがある反面、サイズや形状をどう選んでいいか迷う方も多いのではと思います。
フライトやシャフトは、ダーツの性質を変える重要なパーツだと思います。どのようにチョイスすべきかを深く考えると、意外な発見や考え方があるはずです。今回はその考え方の一部を書こうと思います。
なんとなく存在する、「初心者は大きめのフライトを使うと良い」という言葉
いわゆる「スタンダードフライト」と言われているフライトが大きめのフライトにあたると思うのですが、このネーミングもよくよく考えてみれば違和感があります。
スタンダード=標準。この意味からすると、初めてマイダーツを買おうとする方は、まずここからスタート、ということになるのでしょうか…。
10年ほど前のダーツアクセサリーは海外メーカーのものがほとんどで、種類は少なく、大きく分けてスタンダード・ティアドロップ・スリム・カイトといったところでしょうか。このあたりが実用的なモノとして使い分けされてきたと思います。
僕がショップの店員をはじめた頃、RUTHLESSやR4Xなどのスタンダードはやや大きくて、UnicornやHarrowsのフライトは比較的小さいという説明で販売してました。
Harrowsのフライトはやや下に向かって細めになっており、「装着した時のダーツの見た目がかっこいい」という理由からプレイヤーからも一目置かれていたと思います。元をたどれば、「ハローズ社」は「シェイプ」の形状を「ハローズシェイプ」と呼んでおり、「ハローズ」以外から同形状が発売されるようになって「シェイプ」と表現されるようになったと記憶しています。実際は「シェイプ」の元祖は「ハローズシェイプ」なんですかね?
「シェイプ」って直訳すると「形」ですよ。形っていう形も変ですよね。いつか「シェイプってなんでシェイプって名前なんだろう?」という疑問をもつ人が出てきてもおかしくないと思ってましたからね(笑)。
シェイプの話はさておき、ここからが本題。よく耳にする、大きめのフライト「スタンダード=初心者向き」というのは本当にそうなのか?と思うことがあります。「スタンダード」というネーミングも違和感がありますが、実際にショップに立っていて、小さいフライトが投げやすいという初心者の方も少なくありません。
より深く考えてみようと思ったきっかけは、つい先日「リアルダーツの旅」をしているお笑い芸人の阿部洋佑さんがディースリーに立ち寄ってくれた際に話してくれたこと。彼はもともとダーツショップの店員をされていて、ダーツのことにとても詳しく、特にスチールダーツの話はいろいろと勉強になったんです。
その中で、「海外では小さいフライトが初心者向けって言われてる」と言っていたこと。その時は、「へぇ!」で済ませてしまった話でしたが、後になってよくよく考えてみたんです。
ここでの海外とはハードダーツのことだと思います。これは想像ですが、もしかすると「ブリッスルボードに対してダーツを刺すのはソフト程難しいことではない」「刺さるように投げるのはフライトに頼るのではなくちょっとしたコツを掴めば誰でも刺さるようになる」と考えられているのではないでしょうか。
まずは直感的に高さを取りやすくするために、空気抵抗の少ない小さいフライトでボードに飛ばせる方が、空気抵抗を加味して山なりに飛ばすよりも初心者にはダーツが簡単に思えるのではないだろうか。
もっと考えを進めてみると、ソフトダーツの場合、ボードに刺さるように投げるには、ボードの穴とチップがうまく刺さるための向きが重要で、ボードとダーツが垂直に近い方が刺さりやすい。フライトにかかる空気抵抗を利用したスタビリティー(姿勢復元力)に頼って投げないとスチールほど簡単には刺さらない。
しかし、ボードに刺さるダーツの角度に関して、ソフトはスチールほど深く考えなくていい。スチールの場合、どう刺すか(スタッキングなど)というのを考えだす頃になってから、フライトの大きさによって調整すればいいのではないか。
これまでの考えをまとめると、僕の中では「初心者は大きめのフライトを使うと良い」というソフトダーツの風潮と真逆の考え方があってもおかしくないのでは…。
ソフトダーツが主流の日本メーカーのバレルのセットについているフライトはスタンダードやシェイプが多いが、海外メーカーのバレルセットにはさまざまな形状のフライトが付いています。
日本で呼ばれている「スタンダードフライト(標準)」というのは、はたして海外でも「標準(スタンダード)」として扱われているのか? そんな疑問も出てきちゃいますね。
フライトについての考え方は、ソフトとスチールでも違うと思いますし、国や環境が異なれば変わるかもしれません。
「セッティングの好みは人それぞれ」と言われますが、これだけは「人それぞれ」ではないところがあります。それは、「物理的な働き」は人それぞれではないということです。
地球にはみんなに重力が働いています。そして人とダーツボードの間には空気があります。ダーツは、これらをうまく利用して「的」にダーツを運び入れる技術の精度を競うという見方もできます。
セッティング本来の目的は「ダーツをどう飛ばすか」ということ。ですから、物理的にダーツにどんな力を掛けようとしているかが重要になります。
イメージする飛び方になるよう、またコントロールしやすいように、ダーツのセッティングを調節することです。
重力に逆らう力をリリース時にどう作るか。フライトは空気とどれくらいの衝撃でぶつかっているか。ボードに到達するまでの速度やタイミングは長さによってどうかわっているか。
これらの物理的な働きは、「ダーツの飛び方」となって目に見える形となり、見えるからこそ、自分の感覚でコントロールできるようになりたいと考えるのだと思います。
しかし、どうコントロールしたいのかは「人それぞれ」違うはずです。ですから、結果的にセッティングも人それぞれになるのではと思います。