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No.7 十六夜

2013年1月

Ayano_column_No.7-1

昨年の一月から連載させていただきまして早一年が経ちました。今年もひき続き、私のコラムでは『ダーツという競技に纏わる、男と女の生々しい話』を題材に書かせていただきます。

数年前からよく耳にするようになった「オレオレ詐欺」という犯罪用語。お年寄りなどを相手に、身内に成りすました人間が偽の情報などで金銭を騙し取る、いわゆる「振り込め詐欺」の通称ですね。

無論、日々ダーツの精進に励み、sexへの向上心を胸中に、このコラムを読んでいただいている皆様には「振り込め詐欺」等の犯罪とは無縁の事でしょう。私が今回お話しさせていただくのは犯罪の話では無く、ダーツという競技を通じてよく目にしてしまう「自画自賛詐欺」と「言い訳詐欺」についてです。

自画自賛=つまりは自身を過剰評価した言動と自惚れの意。別の言語では「手前味噌」とも言いますが、より現代の用語でわかりやすく比喩するため「自画自賛」という言葉を使わせていただきますね。

読んで字のごとく、自分の行為を自分で褒める=自慢する人の事ですが、ダーツという競技や遊びの中で、このような自画自賛をする人を見かける事はありませんか?思い出してみてください。多くの友人が集まる場所で、お酒を飲みかわす場所で、輪の中心にいる人が声色を上げて武勇伝を語りつくす様を。

自信に満ち溢れた姿は人々を惹きつけ、数々の武勇伝は賛美の眼差しを受けます。同性からは尊敬され、異性からは好意を持たれます。

しかし、何度も聞かされる「自慢話」は、聞く者を飽きさせ、嫌悪感を持たれてしまい、いつの日か人の足が遠のいてしまう存在ともなり得ます。簡単な言葉で表現するならば「ウザい」と思われてしまいます。

周囲の注目を集める為、尊敬される存在である為、または異性に「モテたい」という野心から、実力には程遠い過大評価で自画自賛をし、その「自慢話」を疑わせてしまう本来の実力は「言い訳」で誤魔化してしまう人=ダーツの世界での「オレオレ詐欺」を、私はこの目で何人も見てきました。

「オレだよ。オレ。」という振り込め詐欺の事では無く、実力に伴わない自慢話ばかりをする「オレが!オレは!」というダーツ業界の「オレオレ詐欺」。

こんな虚しいだけの行為を無意識に続けているうちに、気づいた時には周囲からの信頼を失い、大好きな筈のダーツの場で「忌み嫌われる者」になってしまうダーツプレイヤーは少なくありません。

皆様の周りにも、そんな「オレオレ詐欺」をしてしまっている人がいるのではないでしょうか?
例えば、挨拶を交わしただけの有名プレイヤーの名前を出して「あの人と友達だよ!」や、予選で敗退した試合でも「相手はたいした事ない。いつもの自分なら勝てる相手。」「今日の自分は朝から体調が悪かったから。」「試合には負けたけど、自分の方が良い数値を出した。」等、聞き手が思わず「はいはい。」と聞き流したくなるような話。とくに男性の方たちに多く見受けられますね。

私から見ると「目も当てられない程の情けない男の姿」にしか見えませんが、そんな「オレオレ詐欺」をする人たちが、自慢と言い訳をやめられなくなるのは「カモになる存在」があるからでしょう。

その人格をよく知ってしまっている人を相手に「オレオレ詐欺」という行為は全く効き目がありませんが、初めて会う人や素直に話を受け入れてしまう人たちからは、思い描く通りの賛美の言葉や眼差しが浴びせられるのでしょうね。異性に対しては、真面目に交際するつもりのない「一夜の相手」なら効果覿面、武勇伝に加えて相手を褒め倒し、わずかな弱さを見せて甘えれば、その日のうちにsexに持ち込む等は容易な事です。

その後に人格を知られれば、聞かされていた武勇伝が過剰な自慢話であった事や、己の未熟さを言い訳で誤魔化す幼稚さを知られてしまい幻滅されてしまう事でしょう。それこそ「詐欺にあった」と思わせてしまう言動です。

Ayano_column_No.7-2

日本には先人たちの残した美しい言語、賢い言葉がたくさんあります。

先に挙げた事例には「弱い犬ほどよく吠える」というのが適当でしょう。この言葉は日ごろから私自身がよく使う文句の一つでもあります。

真の強き者たちは余計な言動など一切なく、自信と余裕を持ち、他人の強さと自分の弱さにも向き合う事ができます。

逆に弱き者たちは足らぬ力を補おうと必死に言葉を撒き散らし、他人の強さを認めることが出来ず、自分の弱さを言い訳で隠そうとします。

その行為は「負の連鎖」を作り出し、いつまでも抜け出す事のできない闇を自分の中に抱え込んでしまいます。

海外から普及したダーツという競技。とくにソフトダーツにおいてはアメリカで生まれたゲームという形式上、近年は個性的なプロ選手と自己アピールが過剰なプレイヤーたちが増えてきています。しかし日本という国でその頂点を目指すならば、やはり日本人らしい強さと美しさが求められます。

日本の美学、それは「謙虚な姿勢」でしょうね。即ち 、自分の意見を持っていながら決して他人には押し付けようとはせず、他人の意見にも耳を傾け採り入れよう理解しようとする心や、卑屈にはならず他人を見習おうとする姿勢の事。

外国人に言わせると弱気で陰湿にも映りますが、「弱さ」と「控えめである」事とは大きく違います。謙虚であることこそが、日本のサムライ精神ではないでしょうか。

男性のみならず、女性にも、謙虚さを持った強く優しいダーツプレイヤーとして、自分の掲げた目標に向かって精進していただきたいですね。

本物の強さを手に入れた者は、多くを語る必要はありません。自分自身で語るものではなく、知らぬうちに語り継がれているものですから。

最後にバツイチ女の私から、素晴らしい日本の美学とも言える言葉を皆様に贈らせていただきます。

【十六夜】
ご存知の方も多いと思われますが、これは「いざよい」と読みます。旧暦の葉月=八月の十五夜の満月に比べ遅れて見える月から、恥じらうという意味合いを持ちます。

夜の遊びでもあるダーツの世界で、いつの日も皆様の心が日本の美学と共にあらんことを…。