2013年9月
私のダーツに携わる上での活動の一つは生活してくためのビジネスです。ビジネスをしていく上での弊害がダーツ業界には沢山あり、その一つは自身もそうなのですが趣味の延長線上に立つ経営者の方が多くどうしてもお客様目線や所謂「一般常識的」な観点が抜け落ちてしまう事です。「恋は盲目」ではないですが好きだけで行う事は、(一般のプレイヤーさんやユーザーさんは只々好きで遊んで頂ければ良いと思います)仕掛ける側の人間としてそれ「だけ」ではいけないと切に感じています。「お客様満足度=ビジネス」という相互関係よりも柵(しがらみ)やお山の大将気質の縄張り争いがこの業界を駄目にしている事はもはや言うまでもないと思います。
ソフトダーツとハードダーツの両輪が噛み合えば…
日本のダーツ事情は良くも悪くもソフトダーツを中心に回っています。イップス論の原点であるイップスを助長する方法論も「ソフト的」な考え方から来るものが多くあり、ソフトダーツを取り巻く環境に「一般常識」が取り残され、日本ダーツ界独自のガラパゴスダーツといった様相に拍車をかける状況があるのではないでしょうか?
しかし日本のダーツ界をソフトダーツがけん引している事は間違いありません。ソフトダーツプロという環境が整備され、少数でも「職業プロ」を輩出している事は非常にありがたい事だと思います。しかし世間の認知度は低く問題は山積しています。大きくなっては分かれ、無くなっては出現するこの業界の未来は何処へ…そんな事を勝手に危惧する影響力を持たない小さな小さなお山の大将のコラムが本コラムだとお考えください(笑)。
日本からメジャーを目指す為の土壌を…
私は個人的にハードダーツを機会があればやって頂きたく思っております。それはダーツの最高峰と言えば本場イギリスのPDCが有名で、あのフィル・テイラーを擁し日本の団体とは比較にならない賞金額(昨年度1位フィル・テイラーが約1億5千万円)でランキング30位程度の選手でも1千万円超の賞金を手に入れる事が可能なのです。
昨今日本でもこのPDCに日本人を派遣しようとPDJ(プロフェッショナルジャパン)が組織され、PDC World Cup of Darts2013では村松治樹選手と勝見翔選手が大健闘しダーツファンの方は大熱狂したと思います。プロダーツプレイヤーには是非この海外の大舞台を目標に切磋琢磨して頂きたいです。
左回転の謎を解き明かす
このPDCなど海外で活躍するプレイヤーの特徴として話題になるのが飛んでいくダーツの「回転」です。俗に一流プレイヤーさんは「左回転」すると言われ、日本のプレイヤーさんにもこの左回転を方法論に取り入れる方は少なくないはずです。私は正直なところ所謂「推進性」での享受は?が付きます。当然形状等でロケットなどは回転した方が飛行安定する理屈は分かりますが、ダーツではフライト形状を考えるとちょっと違う気がします。ちなみに野球界でもジャイロボールが一時期話題になりましたが皆言う事が違い、とても学術的とは言えない意見が多数を占めていたと思います。
握り込みはやめない方がいい
ダーツの回転はどうでしょうか?実際一流選手のダーツの軌道を見ていると確かに「左回転」している傾向があります。特に海外選手の矢の軌道は確実にその傾向にあります。
ダーツのフォーム姿勢は、前腕骨と上腕二頭筋そして腕を動かす「神経」によりテイクバックが非常に困難な構造となり、更にはどうしても腕が「勝手」に伸びようとします。その勝手に伸びようとする腕を制御するためには「指」の使い方が非常に重要となるのです。海外選手の特徴として殆どの選手が指を「屈める」傾向にあります。これは日本で言うところの「握り込み」等であまり歓迎されていない方法論だと思います。しかし私がイップスレクチャーし問診した結果、イップスを発症する前段階で変更した方法論で多くの方が「テイクバック時の握り込みをやめようとした」と答えが返ってきました。
腕の制御が出来るのは「指」
フィル・テイラーは親指・人差し指でグリップしその他の指は最初から握りテイクバック時も軽く屈曲します。エイドリアン・ルイスはテイクバックと共に握り込みます。ジェームス・ウェイドはテイクバックと共に矢を回転させながら握り込みます。サイモン・ウィットロックは矢先が下を向けるほど握り込みます。その他多くのトップ選手が指を握り込むのです。この「握る」という行為は解剖学上「屈曲」を示しイップス論でいう所の「伸筋促進」即ち腕が勝手に伸びようとする動作を「制御」します。もっと言えばこの勝手に伸びようとする腕を止められるのは「指」しかありません。
何故たかが指が腕を制御できるのか?それは前腕にある筋肉の殆どが「指」を動かすための筋肉だからです。たった1ミリでも指を動かせば良くも悪くも腕に対する影響を及ぼし、グリップを「動かさないという運動」は伸筋を助長し、逆に握り込むなどの運動は屈筋を助長するのです。イップスの原因は伸筋の過度使用により引き起こります。その伸筋を促進させず屈筋を促進させる指の使い方を多くの海外選手は行っているのです。
運動で作用する物事は解剖学で説明できる
ちなみに飛んでいく矢の左回転の理屈はテイクバック時もしくは予備動作時には右回転に働くと思います。左回転をかける為に海外選手は親指を引っかけるように飛ばしているようには見えません。という事はテイクバック時または予備動作の時点で右回転に力を蓄えリリースに向かうにつれ左回転の力がかかるのだと思います。実はこのテイクバック時または予備動作時に右回転を促す行為が「屈筋」を使わないと出来ない動作で、逆にテイクバック時または予備動作で左回転を加える行為は「伸筋」を促す行為となり身体不整合が起きやすくなる可能性が高いのです。
日本の多くのトップ選手もくるくるダーツを回しながらセットアップする光景が見られますが皆右回転をかけながらセットアップしていると思います。
左回転の秘密は定かではありませんが、少なくとも「右利き」で左回転するダーツのフォームは屈筋が促され身体に優しい整合性の取れた良いフォームなのではないかと考えます。実際イップスレクチャーでもこの理論を取り入れ改善方法の一つとなっております。
左利きのプレイヤーに関しましてはまた「別の理論」があり、右利きの対称と考えるのは浅はかな可能性があるのでもう少し勉強してから発表したいと思っております。
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