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No.11 ダーツは小さい運動

2014年5月

女子プレイヤーの待遇改善が業界を盛り上げる
ソフトダーツプロトーナメント2014PERFECTツアー第四戦仙台大会においてチームASUKAを草創期から支える田中純佳がプロツアー参加苦節八年目にして初優勝の栄冠を飾りました。
彼女は岡山県倉敷市在住のママさんプレイヤーで「Food&Bar、 Unplugged(アンプラグド)」のオーナーでもあり家庭とお店を切り盛りする三足のわらじプレイヤーさんです。ただでさえ大変な全国プロツアーに草創期より参加し、彼女の状況からすると心身共に過酷だったと容易に想像できると共に本人にしか分からない辛さがどれほどあったかと思います。そんな状況の中彼女は明るく挨拶もしっかり、負けたとしても女性らしい柔らかな応対の出来る正に私のタイプの選手でそれは今現在でも当時から変わっていません。
草花や景色に目もくれず頂上に駆け登る選手が多い中、時間はかかりましたが田中純佳は足元を見ながら虫や草花を踏まないように歩いていく本当に強いタイプの選手なのだと思います。
女子プロプレイヤーは本当に過酷です。そんな彼女達が日の目を見、報われる日が来ることを心から願い待遇面でも改善される事を微力ながら努力して参りたいと思っております。

運動エネルギーを効果的に使う
体力的に男女差が付き辛そうなダーツ運動。しかしアベレージで考えるとやはり男性が優位になると思います。それは何故か?答えは簡単で所謂「個体差」です。身長・体重といった個体の大きさがそのまま男性はアドバンテージになるのです。「高さ」や「重さ」はエネルギーの源になり「個体の移動」により最大値が比例します。

下半身を固めるのは百害しかない
私が運動技術のポントの一つに挙げているのが体重移動(重心移動)です。これはうまく身体を動かす事が出来ないイップス症状にも非常に重要なファクトとなります。野球の送球イップスやテニスのイップス等でも、下半身を動かしながら行う遠投やランニングボレーではイップス症状が緩和もしくは発症しないという話をよく聞きます。私のレクチャーでも腕が出ない等のイップス症状の方でも、歩きながらであればボードにダーツを投げる事が出来るのは明白です。

運動エネルギーを体幹から腕に伝える
この体重移動にプラスして重要になるのが「肩軸」です。この肩軸とは体幹と腕を「繋げる」という意味を指します。筋肉(骨格筋)は主に骨格を動かすために存在し、この骨格を動かす為「テコの原理」の構造となっています。更に運動力学にとっても重要なテコの原理を活かすための方法論が身体の使い方ひいては技術論でもあると思います。ではテコの原理を活かす為にはどうしたら良いのか?それが「肩軸」なのです。

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手で道具を扱う運動の作用点は指や手になると思います。その作用点が力点になってしまう事で運動に不整合が起こり、力は伝わらなくなってしまうのです。何故作用点に力が伝わらないのか?それは体幹・下半身で起こす体重移動(重心移動)によるエネルギーが肩関節を介して伝える事が出来ない姿勢(フォーム)になっている事が挙げられます。

軸=支点=関節
肩周りの作用(動き)は複雑で、屈曲・伸展の他に拳上(肩を上げる運動)・下制(肩を下げる運動)・上方回旋(手を挙げる「挙手」運動)・下方回旋(挙げた手を下げる運動)・外転(手を横から挙げる運動)・内転(挙げた手を横から下げる運動)・外旋(肘を曲げて外側に手を向ける運動)・内旋(肘を曲げて内側に手を向ける運動)など多種多様な動きが出来る事や、下半身と違い地面と接地していない事で支点(軸)が作り辛い側面を持っています。(例えば空中や水中の中だと足も支点(軸)を作り辛くなり、逆に地面に接地していれば容易に支点(軸)を感じられると思います。)
肩軸を感じる簡単な方法としては壁に対し腕や肘でもたれ、身体を肩で支えている(支点になる)感じになる姿勢は肩軸が出来たと言っても過言ではないと思います。

曲げ「た」から伸ばせる
生理学の軸の概念とは「軸=支点=関節」です。関節とは結合する2つ、あるいはそれ以上の骨と骨の間に一定の間隙(かんげき)があり、運動において「便利」な構造となっています。便利とは、もし人間の身体の構造が一本の骨だったとしたらどうなるでしょうか?多分何も出来ないと思います(笑)。そうです多種多様の動きに対応できるよう関節は存在しているのです。その上で関節に付着している筋肉により「曲げる」と「伸ばす」という運動が可能になり様々な(曲げ伸ばし)「連動」によって「自前の出力」を起こす事が可能になっているのです。そして「曲げる運動が準備」で「伸ばす運動が出力」と言っても過言ではないと思います。この関節における支点(軸)を曲げる運動で力を蓄え(準備)伸ばす運動で放出(テコの原理)する全身連動が運動力学なのだと思います。

力を伝える事だけ考える
ダーツは小さい運動です。しかし小さい運動「ゆえ」に腕の出力に頼る事で力みを生み、イップス症状を発症してしまい身体を意図通りに動かす事が出来なくなってしまうのです。
ダーツが上達しない事も高レベルで安定しない事もイップス症状になる事も理由は同じです。ダーツ運動の特徴で昨日まで出来ていたことが突然出来なくなる事があります。もしくは1レッグ目は良かったのに2レッグ目には別人になることもしばしばあるのではないでしょうか?この不調の波を無くし安定的にダーツを楽しみたいと努力の日々を過ごしていると思います。このイバラの道を抜けるにはいかに「力を伝える」事ができるかにかかっているのです。

肘が気になっても肘そのものに原因はない
ダーツ運動でよくテイクバック時に肘が下がる事を気にされ矯正しようと頑張っている方がいますが、肘が下がるものを「下がらないようにする」事で改善出来ません。無理やり矯正したとしても良い事は残念ながらきっと起こらないでしょう。一番問題なのは本人が気にしていないにも関わらず周囲が指摘し改善策も無く無理やり矯正する事です。この力を伝える上で必要な動きを封じ連動しなくなった身体に負担がかかりイップス症状を発症するのです。しかし肘が下がったり内側に入ったりと「別の力」を感じ明らかな「不整合」と感じるようならご相談頂きたく思います。原因はその箇所にはありません。レクチャーチェックポイントは①下半身②手首③肩④指の四点です。手首や指は想像以上に全身(下半身まで)に影響を及ぼします。合気道の技は指や手首を抑え相手の動きを制したり投げ飛ばしたりします。肘関節は肩や上腕そして前腕の筋肉の「交差点」です。肘の痛みもその箇所の運動によるものではない可能性が高いのです。肘を動かすのは指や手首や肩であって肘そのものではないのです。

力が伝わればイップスにはならない
イップス症状は例外なく力が伝わる状況にありません。この力が伝わらない状況から、力が伝わらない上での方法論を身に付けてしまっては身体を壊すばかりです。ダーツは的を狙う競技ですがコントロール性ではなく力学、つまり力を効率よく伝える事が出来るかが重要で、力さえ伝われば逆にコントロール性も享受し更にはイップスにならないのです。

スポーツ界を悩ますイップスの原因を解剖学で、どのように改善するかを解剖学的力学で説明する「POWER CONTROL LECTURE~チカラの正しい伝え方」運動の決定的な間違いがそこにあります!ダーツ・野球・ゴルフ・テニス・卓球・バドミントン・スポーツ問わずご相談ください!