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No.12 考え方や思考を変えるには「欲望」を強くする

2014年7月

イップス論の理屈ではダーツを人生で初めて投げる一投目にイップス症状が出る可能性が十分にあり、野球の送球イップスではプロ野球始球式時にアイドルがイップス症状を発症し、会場では上手く投げる事が出来なかったと認識されていますし、それで正解だと思います。そうです、イップス症状とは上手く投げる事が出来ない延長線上にあるだけの話なのです。

スポーツとメンタルの関係性
ダーツは些細な心の持ち様や心を揺るがす状況において勝敗が左右する事が多くそれがメンタルスポーツだと言われる所以だと思います。小さい物音や対戦相手の挙動に惑わされ崩れていく様相や、逆に仲間の応援に鼓舞しいつも以上の力を発揮する選手もおり、「心の持ちよう」で大きく結果が変わり、起因していると思います。

ダーツプレイヤーを悩ます「イップス」は1930年頃活躍したプロゴルファー「トミー・アーマー」がグリーン上でのパッティングでこの症状に陥り引退を余儀なくされた事で多くの方に知られることになりました。このゴルフプレイヤーを悩ますイップスは勝負を決するショートパット(短い距離のパッティング)時に起こる事で原因が主に「メンタル」だと言われ今現在でもイップスを解消する手立てとしてメンタルトレーニングが用いられています。(※ちなみにゴルフのイップスはパッティング時だけではなくドライバーショット・アプローチショット等様々な状況で起こります。)

強くなるにはメンタルの前に技術
しかしメンタルトレーニングによりイップスが解消する事やスポーツにおいてメンタルの重要性に私は正直疑問を持ちます。心の持ちようはスポーツに限らず大事だと思います。
しかしその目的は心願を成就させる為のものではなくあくまでも「受け止め方」「事を継続させる」為であり結論や結果ではなく「プロセス」に対して重要なキーワードなのだと思います。最後の上がりが決められない事や大事な場面で上手くいかない事の原因をメンタルに押し付け、具体的に何をやるのでしょうか?逆に事を達成し勝利したプレイヤーさんはメンタルが強いのでしょうか?かつての名プレイヤーが勝利出来なくなるのはメンタルが弱くなったからなのでしょうか?

緊張に負けない技術の構築
自己啓発セミナーや書籍等で多くのメンタルトレーナーさんが「強い言葉」を発しやる気にさせてくれます。そし
て誰もが共感し信じ疑いません。しかしその信じ疑わないにも関わらず成功者の数は比例する事はありません。それは当然です。勝者の定数は決まっておりダーツの優勝者であれボクシングのチャンピオン・経営者であれ少数に限られ、全員が勝利者になる事は絶対にあり得ず1%にも満たない確率の中で事を行っている現実があるのです。その中で最前を尽くし、心技体を充実させる必要があり努力とは技を磨き何某かを「続ける」事が非常に重要なのだと思います。
その「続ける」に必要なのがメンタル論であると考えます。ある人は勝利するモチベーションで続けるかもしれません。そしてある人は一緒に楽しむ仲間や場所もしくは誰かとの約束など様々な「やる理由」があると思います。それは早くてもいいしゆっくりでもいい、自分で決めた自分なりの目標に向かって「楽しむ」事が重要なのだと思います。

イップスは傍から見ても分からない場合がある
しかしダーツ競技に危惧される事はダーツを「やめる」方が数多くいる事です。何故趣味で始めて初めは楽しかったダーツをやめる必要があるのでしょうか?それはダーツを投げるという単純動作にも関わらず自分の腕じゃないような感覚で競技する状態になるからです。この「傍から見ても分からない」所謂イップス症状は周囲の人に理解を得られない場合が多くプレイヤーさんを苦しめます。
よくイップス症状に悩まされている状況で「狙わず投げろ!」「的を見るな!」とか平然とアドバイスされる方がいますがダーツで的を狙わず目をつぶって投げて面白いでしょうか?狙った的に入るか入らないかに一喜一憂しているのではなく思い通りに投げられるかどうかが重要なのです。しっかり矢に力が伝わり快心の一投を投げる事が出来れば後悔はなく、逆に的を射たとしても力が伝わらなければ首を傾げ舌打ちをしてしまうのではないでしょうか?

緊張する事はあきらめる(笑)
私のイップス論ではイップスの原因はメンタルや精神性もしくは脳科学的なものでもなくあくまでも身体の使い方によって起こるという考え方です。そして腕が止まる・腕が(勝手に)動く・指が利かない等の所謂イップス症状から単純に上達が見られない、もしくはスランプ状態に対しても原因は「同じ」なのです。もちろんメンタルは起因し、同技術・同条件であれば「緊張度」の低いプレイヤーさんの方が有利だと思います。緊張している状態とは自律神経の交感神経が過度に働いている状態です。自律神経の「自律」というのは運動神経などのように意識的に働かせることが出来るものではなく、状態に応じて「自動的に」調節される神経系を指します。この自律神経には「交感神経」と「副交感神経」とがあり交感神経は主に身体を活動、緊張、攻撃などの方向に向かわせ手に汗握るようなときに最も働いている神経です。副交感神経は内蔵の働きを活発にして身体を休ませる方向に向かわせる神経です。
このように自律神経の働きによって身体の状態や周囲の状況に反応して心拍数は増えたり減ったりします。例えば運動をしたときには全身に多くの血液を送る必要があるので自動的に心拍数が上がります。これから運動をするからちょっと心拍数を上げておこうと意識的に上げるものでは無く通常は出来るものでもありません。

自分とは「自分」と「自身」で形成されている
このように本来自律神経というのは意識しないでも勝手に調整され身体をより適切な状態に持っていこうとしてくれる言わばありがたい神経です。これをいちいち自分の意識で調整していては大変です。ましてや眠っている間に調整などできるものではありません。イップス症状のように身体の不自由を感じるのは身体の機能(システム)による所が大きく、随意(自分の意志)よりも不随意(身体の意志)が優先されるのは解剖生理学上当然の事なのです。もし随意が優先されてしまうと寝ている間に呼吸は止まり心臓も停止してしまうのです。このような自分自身を防御防衛する機能が人間や動物または命あるもの全てに備わっています。人は大事な脳を守るために転ぶ事を嫌い、そして腕や足が不自由にならないよう筋肉や靭帯が「伸びすぎる」事を嫌い反射運動が起こるシステムになっており不思議な話ではなく非常に難しいですが学問により解明されています。

人間には転ばない機能がある
故にイップス症状は「自分自身」が嫌いなやりたくない行動を取る事で起こる「制御反応(反射)」なのです。身体がやりたい事やりたくない事は明白です。肘が下がる、グリップの握り込み、身体が動く等を指摘されそれらを「動かない」ようにするとイップス症状が現れ何かしらの不整合を呼び起こします。なってしまう動きに対し「ならない」ようにして対応する事は不可能です。どうしてその行動を「してしまうのか?」が重要なのです。

緊張を解く為には成功するしかない
緊張状態は必然です。そうそう解けるものではありません。大事な事、大事な場面、自分が思う重要な事態では誰もが緊張するのです。確かに初優勝と10回目の優勝では緊張度は違うと思います。しかし10回目の優勝を経験するためには必ず初優勝を経験しなければならないのです。ある種10回目の優勝を目指し初優勝が通過点の選手もいるでしょう。しかしその10回の優勝を考えるだけの自信には必ず裏付けが必要になると思います。緊張してしまう事に対し抵抗するのはやめましょう(笑)。出来ても深呼吸をゆっくり大きくするくらいだと思います。それよりも「緊張に強いフォーム作り」を目指し先ずは「技術的な安心」を努力練習により構築する事が大事だと思います。削りは良いのだけど肝心な上がりが上手くいかないのもメンタルでは無く技術的な問題です。狙う場所が変わった時に身体の使い方が変わり、イップス症状でも「どこ」を狙うと発症するかは顕著です。

メンタルを鍛える=言い訳をしない
メンタルを鍛えるのは容易ではなく、自分自身の考え方や思考はそうそう簡単に変わるものではないと思います。考え方や思考を変えるには「欲望」を強くするしかないと思います。欲望を強くし喉から手が出るほど勝利を願い何故勝利したいのか「理由」があればあるほど良いと思います。私の考えるメンタルトレーニングとは「我慢」です。我慢とは言い訳を一切言わないようにする事です。ツイッターやフェイスブック等SNSで多くの方が心情を吐露していますがあの行為は欲望の素を捨てている行為だと思います。良かった事はお陰様、悪かった事は身から出た錆、誰のせいでもなく全ての結果の源は自分なのです。自分の得たい状況や状態は果てしなく遠く感じるかもしれません。しかし我慢し黙って欲望を燃やし小さくても具体的な行動を取る事で活路が見出せるのだと思います。