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No.18 ダーツとお酒

2015年7月

ダーツとお酒の関係
ダーツとお酒の関係はよく取り沙汰され、業界を憂う方にとっては関心の高い話しだと思います。ダーツ競技は元々お酒を扱うバー等で盛んに行われその裾野を広げてきました。故にお酒を嗜みながら行う事は必然で「遊び」としての要素が大きい事は言うまでもありません。そんな中お酒離れを促進したのがソフトダーツマシンによる、インターネットで繋がり一枚のカードにその成績が明らかにされるコンテンツが出来「ゲーム」として一気に広がった事だと思います。この爆発的に広がったオンラインゲーム機は非常に利益を生みお店としてはダーツマシンを「置くだけ」で儲かった時代があったのです。この辺は本書NDLコラムKTM.さんの記事を読んで頂ければ間違いないと思います(笑)。
そんな中飲食を売るお店にとって飲食ではなく、ダーツマシンに入るコインが収益の何割かを占め売上のバランスが崩れた事によって、お酒を飲まなくてもダーツが出来る環境が整っていったのだと思います。そしてプロ化がそれに拍車をかけ、遊び・ゲームから競技として行い、プロ競技者の待遇や業界の未来を考えた時に「お酒」というキーワードが良くも悪くも出てくるのです。ダーツはスポーツなのか?スポーツコンテンツとしてメディアに取り上げられ大型スポンサーが付き選手の待遇やステイタスがあがっていくのか?その目指す場所を阻んでいるのがお酒なのか?少し考えてみたいと思います。

オリンピック競技になると何が変わるのか?
そもそもなんですが、スポーツコンテンツでビジネスとして成り立っている競技は何があるでしょうか?それと共にメディアに取り上げられればスポーツコンテンツとして成功を収められるのでしょうか?オリンピック競技であるフィギュアスケートは関心も高く有名選手も多数輩出しテレビでも放映されます。しかし一般の方がスケートリンクに足を運び業界自体が潤っているかと言えばそうではなく、止む無くスケートリンクが閉館になってしまう等の事実があり、一見華やかに見える業界であっても裏側では大変な苦労をされているのです。一つ言える事はメディア露出する事で必ず業界躍進に繋がるとは言えません。国内人気スポーツのプロ野球でも一時期の人気は影を潜め、視聴率が上がらない事で広告スポンサーも少なくなりTV中継もどんどん放映されなくなっています。冬季オリンピックで話題になるカーリングですが、皆さんカーリングはやったことありますか?

成り立っているスポーツコンテンツはあるのか?
よく野球やゴルフのように自動車メーカー等の大型スポンサーが付けばと言われますが、ダーツ競技は無理だと思います。野球というスポーツは子供から大人までを対象に広い郊外で行うスポーツです。その郊外に行くためには車が必要になります。そこには家族というキーワードもあり車販売の需要が、野球というコンテンツを企業が促進する事がビジネスに繋がっていく事で広告価値を生んでいるのです。ゴルフにしても同じで競技対象者が高齢で高所得といった側面があり、更には野球と同じく郊外に出かける為にゴルフバッグが何個か詰める大型車が必要な競技なのです。

選手としての品格ではなく人としての品格
誰もが知っているスポーツが必ずコンテンツ化するという事自体が間違っているのだと思います。僕も様々な趣味がありますが、単純に楽しいからやっているのであって特別業界イメージやステイタスの為にはやっていません。そんな事は考えなくても必要ならば世間に求められるでしょうし、不必要なら求められないだけで、わざわざ訴え掛けるものではないと思っています。選手も資質を求められ、その佇まいで業界が左右すると言われますが、今の倫理観では考えられない事を昔のスポーツ選手は悪い意味でもっと酷い事をしていますし、場合によっては逮捕者が出てしまうような事件すら少なくないと思います。ちなみにプロ野球最高峰アメリカメジャー歴代最多安打(4256安打)打者ピート・ローズは野球賭博に関わったとして球界とは離れています。ボクシングのマイク・タイソンしかり一流選手が人格・品格ともに優れているとは言えない例が沢山あるのです。人格や品格は何をやっているからとかは関係ありません。普通に粛々と生活していても凛とし人格・品格の素晴らしい方は沢山おられると思います。どんな競技・業界でも素晴らしい人もいれば残念な人もいるのです。

イップス症状はお酒で緩和するのか?
ところでお酒を飲むとイップス症状が緩和するという方が多くいらっしゃいます。イップス症状が無い方でも緊張感をほぐすためにお酒を積極的に摂取される方も多くいらっしゃいます。どちらかと言えば殆どの方がアルコールに頼る傾向があると思います。
人間には自律神経という不随意運動、すなわち自分自身でコントロールできない神経があります。例えば心臓を意図的(随意運動)に止める事はおろか早める事も遅れさすことも出来ません。これは意図的(随意運動)であると不都合だから機能として構築されているのです。もし意図的(随意運動)に行わなければならないのであれば寝ている間は心臓及び内臓器官が動いてくれなくなってしまうのです。
自律神経は交感神経と副交感神経とがあり主に起きて活動的な時に働くのが交感神経で、睡眠時に活動停止状態で働くのが副交感神経です。この二つの神経は人間の行動や感情によっても働きが促進され、この辺が一般的に言われるメンタルという仕組みなのだと考えます。

人間の高機能は自分では制御できない
お酒を飲むと楽しくなる人もいれば、突然泣き出す人もいます。激昂する方もいれば寝てしまう方もいます。これはアルコール成分が自律神経を促進し交感神経・副交感神経どちらかに作用した表れでもあると思います。イップス症状においてアルコール摂取は人により有効な手段だと思います。アルコールを飲む事で副交感神経側が促進されれば筋肉はゆるみ「反射」が起きない可能性が高いのです。ちなみにこの反射という機能は二足で「立っていられる」という機能もあります。お酒に酔いつい転んでしまいケガをおってしまう方がいらっしゃると思いますが、これは「立っていられる」機能が低下しているのです。よく電車でウトウトしながら隣の見知らぬ人に寄りかかってしまう方がいると思いますが、あの状態も反射機能が切れ姿勢を正常に起こしておくことができない状態になっているのです。

イップスの正体は反射機能
イップス症状の正体は身体の機能による「反射」です。反射とは機能であり人間が生活する上で重要で便利なシステムです。何故便利であるはずの反射システムが仇になってしまうのか?それはダーツ運動及びイップス症状を発症する運動や動作が「自分自身が嫌な動作」を助長するからです。その高次元機能である反射が不随意に切れてしまう可能性のあるアルコールが、イップス緩和の作用をもたらしているのだと思います。しかしお酒は一方的に副交感神経だけを促進するわけではありません。場合によってはアルコールを飲むことで目が爛々とし交感神経が高まり眠れなくなる方もいると思います。その場合は逆にイップス症状がひどくなる事もあり得るので、あくまでも体質や体調などによるところが大きく、一概に言えないと思いますのでご注意して頂ければと思います。

コンテンツ化ではなく文化的発展を目指したい
お酒は上手に付き合えればコミュニケーションが進み楽しい場を演出してくれますが、度を超すと場を壊すどころか命の危険にまで繋がっていきます。競技をする上でお酒を飲むという事は何らかの効果効能に期待してだと思います。初めに書きました業界として目指すところや、様々な商業活動において議論が分かれるところだと思いますが、ダーツの楽しさであるコミュニケーションツールだという事を忘れず考えて行きたいと思います。
ダーツをやっていて涙が出るほど嬉しい体験をさせて頂いています。社会人になり大人になり悔しい思いや泣けるほど嬉しい思いをする事はそうそうありません。そんな体験が出来るダーツは本当にそれだけで素晴らしいと思います。私たちが目指すのはコンテンツ化ではなく文化にする事だと思います。