KTM_column_Top-36

No.36 滝沢あさひ

2017年9月

一時期は一斉を風靡した女子選手ですね。強くて可愛いということで考えたら、今のダーツ業界の流れの第一人者なのかもしれません。
ひょんなことから、ASAHIと面識を持つようになりダーツを教えることになったのですが、その前までは同じ業界でも全然会う機会がなかったので、初めて会った時なんて「うわ、あれが有名な滝沢あさひか!」と本気でサインでももらおうかと思ったくらいです(笑)。

僕はその頃、バリバリにburnやらTripleight/ASTRA
DARTSをやっていたにも拘らず、それくらいにメディアへの露出度も高い選手だったし、とにかく知らない人はいなかったんじゃないのかな?
本当に「なんで教えるようになったのか」は忘れてしまいましたが、とにかくダーツに関しての意識の高さというのは本当にすごかった。
当時は、「アイドル化されている自分」が非常に嫌だったらしく(まぁ本人のキャラじゃないしね)実力で評価されたかったというのが強かったのでしょう。
勿論、そういう子ですから気は強いし試合前になると、競走馬みたいに気性が荒くなるし大変でしたけどね(笑)。
でも、不思議とその気持ちをボードに向けられる子でしたね。勿論、負けたら泣くときもありましたけど、ちゃんと次を見据えていることが出来ていた子だった。

負けから学ぶのが上手い子と言えばいいのかな?
今でも忘れないのが「KTMさん、私をまずはアジアチャンピオンにしてください」と。
当時、いきなりそんなこという子もいなかったですし、アイドルキャラで売っているんだろうなくらいにしか思っていなかった子に言われたので、正直面食らいましたけど、目は本気でしたねぇ。正直、今僕がたまに教えたりアドバイスしている子の目とは全然違いました。なんていうんでしょうね、覚悟が出来ていたというか。
「あ、この子なら男子並みに教えたって大丈夫だな」とすぐに理解出来たくらい。その当時は太郎もいたしSHOGOもいたし、僕もまだ若かったので、そりゃかなりのスパルタだったらしいです(笑。)
今の時代だったら「パワハラ」とか「モラハラ」って言われかねないくらい罵倒もしたし練習もさせたし、とにかく細部までちゃんと出来るまで絶対に褒めなかった。試合で優勝しても「なんであのレグ取られてんの?」と叱責したり、クリケットの攻め方で怒ったり、普通優勝したら褒めるのにね(笑)。
でも、一応僕なりの考えもあったんです。女性の選手生命はどうしても男子よりも短くなってしまうし、その当時は世界大会といえば年に一回しかなかったので、チャンスは1—365しかなかったんです。今年はダメだったけど、来年は頑張ろうななんて悠長なことを言ってられなかった。
ダーツはスポーツではなく「勝負」と心から理解してくれている女子の一人だったというのもあります。
あの当時を思い出すと、オリンピックの鬼コーチとかの気分が痛いほどわかります。
負けた選手が辛いのは勿論、散々付き添って教えた僕の方も相当なダメージを受けるんです。自分の力量のなさに直面するというか、「どうしてもっと効果的に教えられなかったんだろうか」とか。
なので、一度僕に身を預けたのならば絶対に文句は言わせなかったし、「調子が悪い」と言われたら夜中だろうが車を走らせてフォームを観に行ったりしていた時期です。
当時お付き合いしてもらっていた彼女も、「ASAHIから電話きた」と伝えると納得して協力してくれていましたしね。
今のASAHIの旦那さんも非常に協力してくれたから出来たことなんですけど、とにかく環境を整えることに専念して、これだけの環境を与えられているんだから文句は言うなと。

ASAHI的には何度もダーツを辞めたい時もあったでしょうねぇ(笑)。
でも、弱音は吐かせなかったし次の戦いがあるのに、後ろ向きな考え方をさせてしまったら無駄な時間ばかりが過ぎてしまうと思ったので、僕の出張レッスンとかにも一緒に同席させたり、そこでもう何百回聞いたんだよという理論を何回も聞かせていました。
そして、実際にASAHIがチャンピオンになった時と太郎がburnを取った時の夜、同じ気持ちになったのですが「もうこういうがむしゃらについてきてくれるやつは現れないな」と(笑)。
僕がいかに伝え方が下手であろうが(まぁ、今は昔に比べれば少しはマシになった方だと思いますが、その当時は僕も手探りだったので)必死に理解しようとしてついて信じてくれたというのはありがたかったですねぇ。
二人ともにADAチャンピオンになってくれましたし、色々な大会で優勝もしてくれた。これは、完全に彼らの力であって、僕が出来るのは試合に送り出すまでの間ですからねぇ。

今もありがたいことに、アドバイスしてくれと来てくれる子たちはいるんですが、どうしてもあの時の彼らの目とは違うんです。そりゃ、僕自身が歳を取って丸くなったというのもあるかもしれませんが、「決死度」が見えてこない。
正直、僕もそんなに暇ではありません。それでも「決死度」を見せてくれればもしかしたらもう一度本気で教えられるかもしれない。
いや、今のレッスンが本気で教えていないということはないですよ(笑)。どれだけ効率的にというのを考えてきているので、前よりは無駄な時間が大幅に短縮されたので、簡略化されたというか、あの時よりも簡単に分かりやすく伝えられるようになったということ。
それに、今はDeepit.Laboもありレッスン生というお客様に教えているわけですから、冗談を交えながら教えている関係上、「丸くなった」といわれるのかもしれませんね。
つい先日、久しぶりにASAHIに会ったんです。
今では3歳の子供のおかあさんで、クラス委員かなんかしちゃってて「しっかりおかあさん」していて安心しました。
ふとASAHIがまた「ちょっとKTMさん、今度はブランクありますけど勝ちたいんですよね」と言われたら、真っ先にまた昔のように教えるでしょうし、ASAHIも勝負の厳しさをまだ覚えているようなので、多分時間が経っていても変わらず強くなるでしょう。なんか、優勝までのスキルを与えられる気がします(笑)。
今教えている子に言いたいのは「どんなにイライラしてても自分の損でしかない」ということ。
怒りを力に変えるのが上手になるには、予め想定して、その状態の時の気持ちの作り方と体の使い方を練習しておかなければならない。
今では、教えている時に「でも〜しちゃうんですよー」とか言われてもニコニコして「人間だしねぇ」と返していますが、あの頃にASAHIが同じこと言ったらお尻蹴ってましたからね(笑)。
「しちゃうんじゃない、するなって言ってんだろ」と。
ASAHIが引退を決めた時に、朝方連絡があり「私が取ったタイトルって、全部KTMさんが取らせてくれたんですよ」って言われた時に、全てが報われた気がしたのを覚えています。
久しぶりにASAHIに会って、最後にもう一度本気で叱咤して教えられる子が現れたらいいなぁと、ちょっと思ってしまいました(笑)。
もう、僕のこの業界への関わりもある時期までと決めているので、最後にそういう子に出会って優勝させて辞めたいのかも。

まぁ、この業界をもし僕が突然辞めても、ASAHIがカムバックする日が来たら業界に関わってなくても教えますけどね(笑)。
男子は同性ですから、必要とされていれば全然協力することはあっても、女子は今だにASAHIだけだな。
勿論、今の女子選手の中でも約3名「こいつは勝負ごとだって理解しているな」とプレイでわかる子がいますけど、他は僕の眼力がないのか見受けられません。僕はダーツの試合は「生死は伴わないけど、現代の立派な殺し合い」だと今だに思っていますから。

DARTS MANIAX