No.51 「ダーツは生涯スポーツ」と言われておりますが…

2020年3月

自分で次の生き方を模索していかないといけないのが今の現状で、ダーツ業界で就職先があるかと言われれば、ないことはないにしても多くのプロ選手を抱えるほどのキャパシティはない。
更には、この記事が出る頃にはどうなっているのか分かりませんが、コロナウイルスによるパンデミックをきっかけとした世界恐慌は確実にリセッションへと向かっていると捉えざるを得ないでしょう。
まぁ、一番先に煽りを食らうのがナイトアミューズメントですし、漫喫と呼ばれている店舗もダーツ台では儲からないと、徐々に撤去している状態。これは今回のリセッションとは関係ないですけど、明らかにダーツ界にとって「生き残り戦争」の合図は出たでしょう。
生き残りをかけるには、色々な方策を練らないといけないのは当然のこと、その皺寄せが直接的に来るのがプロ選手でしょう。景気後退を理由として、契約金等が下がるのは当然のことイベントにおいても、これを書いている時点では大きな大会さえも自粛又は延期している状態で、人為的
なものならば別、今回のいつ終息を迎えるのか全く分からない状態であれば、そのしわ寄せは相当甚大なものになるでしょう。
そうなると、選手は「次の一手」を考えておかないと生きていけないわけで、どちらかといえば、まだ目先の収入減よりももっと大きな決断をしないといけない時期が訪れると思います。
ダーツだけで食べていけるというのはほんの一握りのプロ選手であると事実は今も変わらず、年齢を重ねた高給取りの選手から契約を切られていくのは、どのスポーツにおいても変わらない。「ただ投げていればいい」という時代ではなくなる時代が到来する可能性は大いにあり得る。
立場的には「夢」を語りたいし、偽りであってもそれがハリボテな未来であっても語らないといけないのかもしれませんが、現実的にいうならば、多くのダーツプロは 「兼業」することで成り立ち、メーカーにおいてもそうなるでしょうね。現にひっそりと縮小しているメーカーの数といったら。3年前くらいから相当数が退場していきかけていますよね。
ダーツバーも何もかも同じことが言えますよね、業界的に成熟しきっていないので崩れる時も早い。
ここまでは絶望的展開を述べてきましたが、「第一次ダーツバブル時代」を経験してきてそのバブル崩壊も実体験してきた身としては、「ピンチはチャンス」。
今までしっかりやってきた企業やメーカーはこの嵐を耐え抜けるはずですし、この時期だからこそもう最悪の事態に備えての準備は行っているはずです。
次の波は必ず来るので、この冬の時代をどう静かに耐え抜くかは誰でもやらなければならないことで、更に次の波のために仕込んでおくくらいの気持ちがないと早い回復に向かえない。
ダーツバブル崩壊を経験してきた老舗メーカーの人たちは既に考えているかもしれませんね。少なくとも僕が既に仕込みを入れているということは、他の人も当然入れていると想像しています。
こういう時は上と下の差がギュッと詰まる時期と考えているので、次の波が来る前に終息と同時にスタートダッシュを掛けられるようにしておかないと。
それでさえ成功するかどうかは波を読み切れるかどうかにかかっていますので、「〜そう」とか「多分」という曖昧な表現で予想していてもダメだと思います。
そういう時に、自分たちから「波を仕掛けらるか」が鍵となってきますし、大手であればあるほど「危機管理能力」は長けているでしょうから、その仕掛けにどういう乗り方をしていくのか、又はきっかけを作り出すのか。
ある意味焼け野原状態が想定出来る中で、その被害に応じてスルッと抜け出す策を講じているかどうかでしょうね。
これ、企業や業界の話に聞こえるでしょうが、選手にとっても同様なんです。彼らは「個人事業主」ですから、やることは変わらないわけです。
突然契約金が減らされる、又は契約解除される事を前提に先々と動いている選手はいくらでも実はいますよね。
「ダーツで成績が残せなくなった時」の為に、他業種展開している選手もいれば、今の現状を把握した上で早めに模索している選手もいるでしょう。トッププロとは言っても、悲しいかなまだダーツ業界自体は狭いわけで、今回のような大きな波が来れば、まず先に吹き飛ばされてしまうような不安定な職業ですからね。
男子女子に拘らず、これからの展開は相当大変だと思います。でも、活路は全然残されていますしむしろチャンスな選手も多いはず。悪い波に流されずに、何が今出来るのかを考えていけば、その選手は残っていけるでしょう。
今までの状況に甘んじていたわけではないにしても、次の選択肢を模索していなかった選手は「下手したら引退」も覚悟しなければならなくなります。
プロとして食べていける時間は短く、短いからといって他の大きな市場を持つプロスポーツと違って「引退しても、しばらくは遊んで暮らせる」ほど稼げる商売ではないので、即刻死活問題になってしまいます。
稼げる額に「かなり低い天井」があるのが今のダーツプロの実情。他のマイナースポーツ同様「マイナースポーツの性」と言ってしまえばそれまでなんですけど、それが「第二次ダーツバブル」の限界点なのかもしれません。ただ確実に成長はしていっていますけどね。僕が始めた頃から比べたら「天国」だと思います。
次の波でどこまで引き上げられるのかが課題となるでしょうね。このリセッションを超えたらまた波は絶対に来ますから、悲観モードに入らずに「ようし、この状況乗り切るぞ」とポジティブに考えられる選手は強くなるでしょうね。
試合中のメンタルとプライベートでのメンタルを比較すると、どうやってもプライベートでのメンタルの方が重いですからね(笑)。ただ、日常生活をしている中で自然と経験を積んでいるので、「慣れている」だけでしょう。時間制限も試合よりは長いので冷静に分析出来る時間もあり、ある程度は過ぎる時間が癒してくれますから。
今回は世界規模で慌てているわけですから、正直争っても無理でしょうしね。
状況判断とうまくすり抜けていく方法は人それぞれでしょうから、「考えること」が第一優先順位に。それくらい大きな衝撃ですからねぇ、対岸の火事ではないですからねぇ。ここまで影響が即効すると。
正直、昨年8月の逆イールドカーブ発生からこんなに早くリセッションが到来するとは思ってもいませんでしたけどねぇ…。来るとしたらオリンピック後かなと予想していたので。ダウの暴落から始まった時に、ここまでとも思っていませんでした。大体リセッションの時には2波は来るというのが、歴史的に言われているのでこれが第一波だとしたら、連続で波が襲ってくるのか、一旦引いてから2波が来るのか読めないですよね。
このコラムも3月中旬時点で書いていますから、出る頃にはどういう局面になっているんだか。ウイルスというのは本当に怖いんだなと改めて痛感しました。
SARSの時もリーマンショックの時も、確かに暴落し影響は出ましたけど、大会の延期や多くのスポーツの休止とここまで直接的にはなりませんでしたしね。
ただ、プロ団体もその他の関係組織も安全を第一に考えるのはこの3月の各組織の決定にみられる通りですし、プロだけではなく一般のダーツを楽しんでもらっているプレーヤーにも、今出来る最大限のことで楽しんでもらえるように模索中のはずです。でも、限界がありますからね。プロとして生業を立てている選手は、寄り掛かるのではなく自分の機転で切り抜けられるように必死に考える時期でしょう。
正解不正解なんて後でついてくるものなので、とにかく考える。今回は大きな力に寄り添う事は出来ませんからね。その大きな力でさえ揺らいでいるのに。