Rin_column_Top-6

No.6 PDCワールドマッチプレイ2021展望

2021年7月

Rin_column_No.6-1

・ワールドマッチプレイとは。
PDCメジャータイトルの1つ、ワールドマッチプレイ。今年は7月17日から25日にかけて行われる。昨年2020年度はディミトリ・ヴァン・デン・バーグがギャリー・アンダーソンを倒して優勝し、初メジャータイトルを獲得した事が日本でも話題になった事を覚えている方もいらっしゃるであろう。
会場はイギリスのブラックプールにある、ウィンターガーデンズ。このウィンターガーデンズは、ビクトリア調の建築が特徴の会場で、世界最高峰の社交ダンスの競技会・ブラックプールダンスフェスティバルが行われることでも有名だ。
合計賞金が£700,000(日本円換算1億1000万円)優勝賞金は£150,000(日本円換算2300万円)と、ランキングイベント(賞金ランキングに反映されるイベント)ではワールドチャンピオンシップに次ぐ高額賞金のイベントとなっている。
ワールドマッチプレイへの参加資格を有する選手は、PDCプレイヤーの中の32人だけ(※)と狭き門であり、必然とハイレベルな試合が多くなることから見ごたえ抜群なのは間違いなしだ。
(※参加資格を手にする為には、PDC Order of Merit(賞金ランキング)で上位16人に入る、もしくはPro Tour Order of Merit(Players Champion
shipとEuropean Tourで獲得した賞金ランキング)で、PDC Order of Merit上位16人を除き、残った上位16人に入る必要がある。)
さらに、ゲームフォーマットが準々決勝から16(Legs)先取り、準決勝が17(Legs)先取り、決勝は18(Legs)先取り、とロングゲームの形となる事も特徴の一つであり、これもまた見ていて面白くなる要素となっている。

・ワールドマッチプレイの伝説、フィル・テイラー。
ワールドマッチプレイを語る上で外せない存在がフィル・テイラーだ。1995.1997.2000-2004.2006.2008-2014.2017年の累積16回の優勝という圧倒的な記録は勿論、2008年から2014年の7連覇達成、2015年度の準決勝でジェームズ・ウェイドに敗北するまでの38試合連続勝利、2013年の決勝で叩き出した111.23という18先のゲームフォーマットでは信じられないようなアベレージ、挙げればキリがない位に凄まじい実績をフィルは残している。そして、何と彼は試合会場の裏に別荘を建てる程、ブラックプールのウィンターガーデンズで行われるワールドマッチプレイを好んでいた。
そんなワールドマッチプレイのトロフィーには2018年度から『フィル・テイラー杯』という名前が付けられ、その伝説は永遠に語り継がれる存在になったのだ。

・4年連続1回戦負けのガーウィン・プライス。
現在、賞金ランキング1位で世界チャンピオンのガーウィン・プライス。彼はワールドマッチプレイにおいて2017年度はフィル・テイラー、2018年度はジョー・カレン、2019年度はスティーブン・バンティング、2020年度はダニー・ノパートに、それぞれ1回戦で敗北しており、2015年度以降良い成績を残せずにいる。
今年2021年度、1回戦の相手はオランダのジャーメイン・ワッタミナだ。一癖ある相手ではあるものの、プライスにとって過去勝ち越している相手(5勝2敗)であり、勝利できる可能性が高いと考えている。
残念ながらプライスは、新型コロナウイルス感染の為今年度のプレミアリーグに不参加となってしまった事で、トリプルクラウン(※)達成という偉業を成し遂げる夢は潰えてしまったが、ワールドマッチプレイ優勝に全力を尽くしてくるであろう、活躍が楽しみでならない。
(※トリプルクラウンとは:ワールドチャンピオンシップ・プレミアリーグ・ワールドマッチプレイ、この3大メジャータイトルを連続で獲得する事。達成者はフィル・テイラーのみで、2006年度と2010年度の2回達成している。)

Rin_column_No.6-2

・今大会の成績が大きく影響するロブ・クロス。
2019年度にワールドマッチプレイで優勝したロブ・クロス。そんな彼は今窮地に立たされている。
PDCの賞金ランキングが2年分の賞金を反映するシステムであるが故に、2年前(2019年度)の優勝賞金が今年度のワールドマッチプレイが終了した時点で賞金ランキング上から消えてしまうのだ。
現在、ロブ・クロスの総合賞金額は£458,250でランキングは5位に位置しているが、2019年度の優勝賞金が£150,000であった為、万が一にも一回戦負けという事が起こってしまった場合、ワールドマッチプレイ終了後の総合賞金額は£318,250となり、賞金ランキングが10位ほど急落してしまう。
昨年度あたりから1,2回戦敗退が多く、思うような成績を残せていないロブ・クロス。今年度のワールドマッチプレイが踏ん張り所であり、勝ち進めることを祈るばかりだ。