No.61 子供の頃からダーツが出来る環境を作らないと

2021年9月

WDFが9月の初旬に今年のワールド・マスターズの開催中止を発表しました。
JSFDでは12月の大会に向けて9月と10月にオンラインで選考トーナメントを開催予定でしたが、本大会が中止となったため選考大会ですのでそれも中止です。
楽しみにしていた選手には大変申し訳ありません。

8月でJSFDが新体制になって1年が経ち、準備期間も考えますと2年以上今のメンバーで、問題点の改善や新しい事をしようと考えてきたんですよね。
その中でも全くの手つかずとなってしまったのがユースの選抜と育成の部分です。私は2011年のアイルランドでのワールドカップに選手の付き添いとして行ったのですが、ヨーロッパの多くの国ではユースを代表として派遣していたんですよね。
子供の頃からダーツが出来る環境を作らないと、イギリスに追いつくのは中々厳しいのではないかと思っていました。
2019年のルーマニアで開催されたワールドカップでは、日本も初めてユースの選手も派遣する事になりました。
ただ、その時点ではユース選手の大会参加も少なく、ユースだけでのトーナメントも1回か2回程度しか開催できず、選手的にも選考する側にも満足のいく形ではなかったように思いますし、ユースには派遣費の捻出も出来ずに親御さんにも多大なるご負担をかけてしまいました。
それを踏まえてトライアル・アンド・エラーとなりますが少しでも前に進みたかったのですが、結果的に手つかずとなってしまいました。

今回はJSFDの理事であり、横須賀ダーツ連盟の会長であり、ルーマニア大会にユースで参加した井出桃夏選手のお母さんであられます井出利恵さんにお話を伺いました。

現在コロナ過という事で新型コロナウイルスの流行前と後で、娘さんのダーツをする環境や時間などは変化がありましたか?
「うちの場合、娘は集中力が長い時間続かないので、ダーツバー等でダーツ仲間(大人)とセットをしたり、ゲーム形式でダブルや上がりの練習等をしていました。
今は新型コロナウィルスの感染予防の為、外出を控えているので家で練習をしています。と言いたいところですが、気分屋で練習嫌いなので1人で練習はあまりしません。なので、師匠の大内さんとn01を使ってオンラインで話しながらセットをして頂いたり、MOIリーグというn01を使ったリーグに参加させて頂いています(娘は女子だけのMOIーLリーグに参加)。」

やはり子供ですのでダーツをしたくないとか思う時もあったと思いますが、その時はどのようなアプローチをしましたか?
「うちは特にだと思います。練習嫌いなもので…。
練習に行くダーツバーでダーツ仲間に声をかけてもらうと投げる気になったりします。それでも動かない時は、ご褒美を(笑)。良くないと思いながら、練習頑張ったら欲しいものやお小遣いをあげます(涙)。」

娘さんが日本代表になるにあたって、親として何か心掛けた事や苦労した事はありますか?
「うちの娘は当時小学5年生だったので、気持ちがコロコロ変わりました。「ルーマニアで開催するワールドカップに日本代表で行くチャンスがあるんだけどどうする?」と本人に聞いて「行きたい!」と言ったので、「じゃあ行くための準備をするからね!」と、周りの皆さんの考えてくださった練習メニューを参考に始まりました。
初めは頑張りましたが、やはり「嫌だ!」となり「ダーツ嫌い!」「行きたくない!」と泣きました。「代表で行くんだからもっと投げられないと!」「アレンジちゃんと覚えないと!」とプレッシャーを与え過ぎたなぁーと反省し、本人のやる気を取り戻すため厳しく言い過ぎないようにしました。
楽しもう!に切りかえ、現地でも「楽しめー」「ナイスー」と気分が落ちないように声をかけていました。本人も楽しんで良いダーツが打てていたと思います。空き時間に自分から投げに行ったり、海外の有名選手と話したりもしていました。「次のワールドカップも出たい!」と現地では言っていました。」

今後自分のお子さんを日本代表にしたいと思っている親御さんに何かアドバイスはありますか?
「お子さんによって、自力で頑張れる子、うちの様に練習嫌いな子、負けず嫌いな子等、様々だと思います。環境を用意してあげられたら良いと思います。親は最後は見守るしかないと私は思います。難しいです。今までユースは全額自己負担でしたが、次回からのワールドカップはJSFDも派遣費の負担が出来るように検討しています。本人のやる気があるのなら挑戦させてあげた方が良いと思います。」

JSFD及びダーツ団体に対して要望や考えていきたい事はありますか?
「もっとスティールダーツを投げる子が出てきてくれると良いですね。居るとは思うんです!大会等には出てはいないけれど投げている子が。今は、大会は出来ないので無理ですが。新型コロナウィルスが落ち着いて大会が開催されたら参加して欲しいと思います。良い経験やスキルアップになると思います。日本のユースも盛り上がってほしいです!」

ユース選手を育成する上でなにか思う事やご意見があればお願いします。
「ダーツスクール等、ユース育成のシステムがあると良いと思います。指導者が居るとレベルは上がると思いますし、子供同士教え合うのもいいですよね。今だとオンラインでユース練習トーナメントなんていうのも良いと思います。」
やはり育成の為の障壁は高いのでしょうね。練習環境もダーツバーが中心の日本の現状ですと中々厳しいなとは常々思ってはいたのですが。ダーツをするお子さんがいる方は、井出さんの意見を参考にチャレンジして欲しいと思います。
JSFDもユースの新しいポイント・システム導入や、大会にユースが参加しやすい環境づくりを出来るように考えていこうと思います。

最後に今回も悲しい話題を。
多くの方がご存じだと思いますがオーストラリアのカイル・アンダーソンが33歳の若さで亡くなったそうです。2010年のジャパン・オープンでの強さは本当に圧倒的でした。決勝戦でロイデン・ラムに6ー2で勝利しての優勝でしたが、準々決勝で清水浩明と対戦しているんですよね。この時はLーStyleがサポート選手に声がけをしていて、日本人選手も大変豪華な参加選手だったんです。

その準々決勝で一番観客が多かったのが、ロイデンと橋本選手の対戦。関西のファンや関係者は星野選手と鈴木選手の関西対決を見ていました。もう一つの試合が思い出せないのですが、カイルと清水の試合はオーストラリアの選手と関東の選手が見守る試合となりました。
この試合は現時点での清水のベストマッチだと私は思っているんですよね。ほとんどが18ダーツ以内だったと思いますし、関東の先輩プレイヤーがみんな彼を応援してくれたのが私も彼も嬉しかったですね。フルレッグで負けてしまうのですが、決勝戦後にカイルが清水の所に「今日は5レッグしか負けなかったしお前が一番強かった」と言いに来たんです。

この試合で自信がついたのか、翌年のジャパン・オープンでの優勝につながります。2011年のワールド・カップでの再会を楽しみにしていましたが、奥さんの出産に立ち会うために不参加。
2012年からはPDCに活躍の場を移します。清水ともカイルに追いつこうと時々話していたのですが。ご冥福をお祈りいたします。

そう、清水浩明ですが2年半前から故郷の長野県の病院に移ってきています。近くだから時々顔を見られるなと思っていましたが、この状況ですから2年ほど行けていません。
先日お姉さんから久々に電話がありました。症状は相変わらずだそうです。
1年ほど病院が面会を認めてくれなかったそうですが、春くらいから月に1度くらい面会が出来るようになったそうです。
タイミングが合えば一緒に顔を見に行きませんかとお声がけをいただきました。10月になるか11月になるかはわかりませんが会ってきたいと思います。
彼はまだベッドの中で闘っていますので、このページを読んだ皆様彼にパワーを与えてください。