Vol.109 ファウルクス エドワード
楽しんだ者勝ち

2021年7月号

その日の試合で楽しめていると、次これ外すとヤバいと思う気持ちが消えてくれるんです。
昨年のPDCのステージでも1回戦目は、ここまで来たんで負けてもいいや思い切りやろう、と楽しんでいたんです。ですが2戦目はプレッシャーがかかっていましたね。
自分にリーチがかかって、あと1本で勝ちだ!と邪心が現れると、ダーツは負けます。勝つという意識は大敵ですよ(笑)。

グリップ
グリップの最重要ポイントは何でしょうか?
僕の場合はできるだけ包み込むような感じで、しっかりギュと握り込んでいます。握り込みというグリップは珍しいかもしれませんが、それが自分にとっては重要です。

今までにグリップは変えて来ましたか?
ダーツ歴は長いのでちょこちょこいじる時もあるんですが、調子が悪くなると元に戻りますね。あまり力を入れずに優しく飛ばすために、緩く浅く持ったりとかいろいろ試して来ました。でもある程度鋭くしっかり飛ばせることを追い求めると、やはり握り込むという形になります。それが僕には合っているようですね。なので始めてからグリップを大きく変えることはありませんでした。

他人のグリップは参考にしますか?
投げ方も含めて真似したこともあるんですが、肘や腕が痛くなってマイナスばかりでしたので止めました。やはり自分のダーツを貫く方が良いようです。

グリップは季節によってコンディションが変わりますが、何か対策はしていますか?
乾燥してる時は化粧水を手に馴染ませて対応しています。

立ち方
スタンスはどうしていますか?
完全なクローズでは無いんですが、あまりオープンにならないように気をつけています。つま先で構えてから左足をインに持っていきます。

スローラインは真ん中に立ちますか?
僕は効き目が右なので右目で見て、ブルからのラインがまっすぐの位置に構えます。身体が反る構え方なのでスローラインの左側に立っていますね。立った時にここだと決めると、スローラインで何かしら目印を見つけます。けっこう線や文字とかがあるんで、ポイントにして毎回同じ位置に立てるようにします。それが無い場合は、つま先がボードの左に合っているのかを確認しますね。

右足はまっすぐにしていますか?
出来るだけピーンと伸ばしている状態です。

両足の荷重はどうでしょうか?
9:1ぐらいでほぼ右足に乗っていますね。左足はバランスを取る意味で大事ですが、そもそも僕は大きく身体をねじって構えているので、よくバランス取りづらくない?と聞かれるんです。実際長い試合になると疲れます。そのため楽な靴にしたり、クッションになるインナーを入れたり、試合の合間には座って休むようにしています。
できれば筋トレやランニングなどをしたいんですが、実は僕はバセドウ病という病気でホルモンバランスが悪いんです。6~7年前に発病した時には20kg痩せました。
2年ぐらい仕事も含めて何もできませんでした。筋力も全部落ちてたいへんでしたね。今でも腕立てとか、ちょっと無理があります。
でも今は薬で落ち着いているんで、ダーツに支障は無いですよ。ご心配無く…。


構えた時、肘の位置は高低いかがですか?
だいぶ低いと思います。手元のダーツの矢が狙っている的に対して、垂直に構えたいからです。僕の場合リーチが長いので、どうしても肘を下げないと目線に持ってこれないんです。垂直に構えてテイクバックして、垂直線に戻していくイメージですね。力むと下に付くことが多いんですが、それは気をつけなければいけない大事なテーマですね。高くして試したこともありますが、合わなかったです。

構えた時、肘の位置をしっかり固めているプロと、柔軟性を大事にしてゆるくしているプロがいますが、どちらですか?
どっちかというと固めていますね。リリースした時には多少上に上がっていますが、テイクバックでは固めています。

肘はプロプレイヤーが怪我しやすい場所でもあるのですが、何かケアはしていますか?
昔パーフェクトに参戦していた頃に一度肘を痛めて、ずっとアームサポーターに頼っていた時期がありました。その頃は投げるスピードがメチャクチャ早くて、腕もすごく振っていて、肘も反っていましたね。その頃は矢速もすごくあって良かったんですが、怪我以降は軽く振るようになりました。
肘はあまり負担をかけないようにしたいですね。

テイクバックについて
始動はどのようにしていますか?
ユーミングというほどではないですが的を狙ってから一呼吸おいて、ちょっと前に出してから始動します。引く場所は右目の少し下です。右頬にフライトが当たると投げ始めます。狙ってから垂直に引っ張って垂直に投げていくので、どうしても顔に当たるんですよね。肩や顔の横に引くという投げ方が出来なかったんです(笑)。
テイクバックの距離が短いので、それをバレルの重さやスペックでカバーしています。

テイクバックの最終点は明確に決めているということですね?
昔から顔にテイクバックしていて、最終点はずっと同じ位置です。

スローについて
狙う場所によってスローで違いはありますか?
僕は16と8ダブルの左下が苦手で、一時期立ち位置を変えて狙うようにしたんですが、そうすると20やブルを狙う感覚がずれだしてので止めました。今では苦手なターゲットも含めて、全部同じ投げ方にしています。

リリースポイントについてはいかがですか?
リリースは早い場所で離して一定にしたいですね。僕の場合、遅いとタイミングが合わなくなって下に行ってしまうんです。

投げきった後、手は伸ばしていますか?
振り切りながらも、的に向かって伸ばしているイメージです。

手の最後の形は気にしてますか?
気にしていないですね。離した後はもうダーツの飛びは変わらないので、考えてません。

ダーツの飛び
気にしていますか?
あまり大きな山なりにならないようにしたいですね。より直線だと考えることが少なくなって、ただまっすぐにターゲットを狙うことが出来ます。大きな放物線だと軌道を考えて上を狙ったり、構え方を考えなくてはならなくなります。そういう性格じゃないからですね(笑)。

回転についてはいかがですか?
昔ジャイロ回転が良いよ!と多くの人が言っていました。そこで僕もさんざん練習したんですが、かからなかったですね(笑)。僕はゆるい右回転かほぼ無回転なんですが、ある時にこれが自分のスタイルだと決めて、回転を求めることは止めました。

リズム
ダーツには1本のリズム、3本のリズムなどたくさんありますが、どう考えていますか?
僕はセットアップを長く出来ないので、けっこうリズムは一定なんです。よっぽど前のダーツが邪魔な時、思ったところと違った場所に入って計算し直す、などが無い限り全部同じリズムで投げます。投げるのは早いタイプですね(笑)。

試合ではプレイが早い人、遅い人などいますが気にしますか?
気にしていないですね。でもものすごく遅い人だと、わざとワンテンポ早く投げたりします。勝つために相手のリズムを崩したいからですね(笑)。対面競技なので、そんな駆け引きも必要だと思います。

昔よりは日本でも早く投げるプレイヤーが増えていますよね。
最近で言うとこのコロナ禍で、スティールを始めた人が多いからだと思うんです。今まではソフトだけという人がメインでした。ソフトでは的が広いので、確実に入れないと負けというゲームなので、丁寧に慎重になって投げていたので遅くなっていた人もいました。
スティールはどこか感覚で補わないと無理な部分があって、あの辺を狙ってとなるのでリズムが良くなって来たように思います。同じリズム、振りで再現性を追い求めて研ぎ澄ますので、自然に早くなって来たのではないでしょうか。
世界にトライしたい人も増えて来て、PDCの映像なども影響しているのかもしれませんね。コロナは日本ダーツ界を変えたような気がします。

日本のスティールもレベルが上がって来てますね。
着実にレベルアップしていると思います。このところ全然勝てないですもん(笑)。もっとストイックに練習しないとですね。

ソフトではゼロワンとクリケット、どっちが好きですか?
クリケットですね。ゼロワンは同じところを狙い続けなければならないので、苦手です。スティールでも20にいって、ちょっと違和感があるとすぐに19にスウィッチします。特にソフトでブルばっかりは辛いですね。
クリケットはどう攻めていこうかと、プッシュ、カットと考えることができ心理戦なので楽しいです。クリケットは引き出しが多い人が強いですが、ゼロワンはシュート力です。

スティールとソフトの違いについて
距離の違いですね。スティールを投げた後にソフトを投げると合わない時があります。バレルの重さを変えることも対処法ですね。ソフトはみんな強いです(笑)。

練習
メニューを教えて下さい。
コロナになる前はソフトでブルで1100点、1200点出すまで、1日に50、100ハットを打つこと、などをメインにやっていましたね。ジャパンのプロテストの内容も毎日していました。クリアしたらカウントアップ、そして対戦です。
コロナ禍ではほぼスティールの練習しかしていないです。ダブルで1から20までそしてインナー、それからトリプルで同じように回ります。今はFIDOがあるのでカウントアップ、チェックアウトなどをやっています。
僕は32が不得意なので9本投げて、何本入るのかもやっています。スティールはターゲットが小さいため、集中して練習することが求められますね。

以前から32について語っていますが、克服しつつあるんですか?
嫌だな!という気持ちは少しずつ薄くなって来ています。

アレンジにも大きく影響しますよね?
100代から32に残らないように考えています。次20いったら112になるな!と思ったら敢えて18にいって、114残しにしたりしています(笑)。でも試合に入り込むと、そんなことも忘れてしまったりするので、32は僕の重要課題ですね。

スピリット
トッププレイヤーになると技術的にそれほど違いは無くて、勝つ精神力が重要だと言われますが、どう思いますか?
勿論メンタルの部分はあるとは思うんですが、個人的な意見で言うと楽しんだ者勝ちかなと思います。その日の試合で楽しめていると、次これ外すとヤバいと思う気持ちが消えてくれるんです。楽しめていないで苦しむと追い込まれて、メンタルに来るんですよね。
昨年のPDCのステージでも1回戦目は、ここまで来たんで負けてもいいや思い切りやろう、と楽しんでいたんです。ですが2戦目はプレッシャーがかかっていましたね。自分にリーチがかかって、あと1本で勝ちだ!と邪心が現れると、ダーツは負けます。勝つという意識は大敵ですよ(笑)。

プロツアーなど準備出来ていますか?
スティール中心に練習していますが、その技術は必ずソフトにも通じると信じています。ソフトも時々投げて着々と開幕に向けて準備しています。僕にとってジャパンはデビュー戦なので、大暴れ出来たらいいですね。

今年もPDCに出場するための予選には挑戦するんですよね?
勿論です。今年もアノ舞台に立ちたいですね。昨年は無観客で独特な雰囲気だったんですが、ぜひ歓喜に包まれた会場を経験したいです。
昨年の出場以来、海外からのSNSフォローが増えました。また戻って来てね!などのコメントもいただいているので、期待に応えたいという気持ちもあります。次はもっと活躍したいですね。

読者にメッセージをお願いいたします。
最近勝てていない試合ばかりお見せしていますが、もっと練習してトップを目指していきますので、僕のダーツ人生が終わるまで、応援よろしくお願いいたします。