2014年1月号
Happy New Year! 新しい年を迎えて、皆さんいかがお過ごしですか?2014年もこの”Darts de English!”、張り切っていきますよ!
これまでダーツで使えるちょっとした英語のフレーズなどをご紹介してきましたが、今回は趣向を変えて、”darts”という言葉自体について少し掘り下げてみたいと思います。
私たちは何の気なしに「ダーツ」という言葉を、スポーツやゲームの1種類として、また、チップとバレルとシャフトとフライトから出来た矢状のものを指して、日々使っています。勿論”darts”は英語由来なので、日本人の私たちから見れば「テニス」とか「ゴルフ」と同じ感覚で、外国から入ってきたスポーツやゲームの1つとして「ダーツ」という言葉を認識しているのです。しかし英語の”darts”という単語をじっくり見てみると、なぜか最後に複数形を表すsがついていることに気付くと思います。普通スポーツやゲームの名称は数えられない概念として捉えられているため、”tennis”や”golf”のように単数で表されるものが多いのです。(”tennis”の最後のsは複数のsではありません)ダーツはなぜか、それらとは違うということです。では、なぜ”dart”(ダート)と単数で呼ばれないのでしょう?
そもそも”dart”という言葉には、「先がとがっていて、後方に羽根などがついた手で投げる矢」という意味があります。これはまさに私たちが知っているダーツのことですよね。つまり、”a dart”は「1本のダーツ」ということになります。
また”dart”は、「突然動く」とか、「飛び出す」という動詞として良く使われる言葉ですが、「ダーツを投げる」という意味にはなりません。したがって、”She darted across the room.”という英文は、「彼女は部屋を横切ってダーツを投げた」という意味ではなく、「彼女は、シュッと部屋を横切った」というのが正解なのです。
ゲームとしてのダーツという意味では、”darts”と複数形で表しますが、意味的には単数として扱われるため、単数の動詞が使われるのが面白いところです。例えば、”Darts is fun!”(ダーツは楽しい)という文でも、動詞はisであってareではないのです。これは、テーブルゲームなどによく見られる現象で、”cards”(トランプ) とか”dominoes”(ドミノ)などの様に、複数のカードやドミノがセットになって使用されるから、このように複数と単数が入り混じった複雑な言葉になってしまうのでしょう。
ダーツも同じで、複数の”dart”を投げるゲームです。だから”darts”と複数で表現して、意味的には「ダーツのゲーム」という概念を表すので単数扱いになっているのです。余談ですが、ダーツを1回に3本づつ投げるというルールはそんなに昔に出来たものではないようです。1920年代にルールが決まったと言われていますが、それまではパブなどで大量に仕入れたダーツを、お客さんが適当に使って遊んでいたようですね。そして、現在のようにダーツを3本セットで初めて売り出したのがイギリスの老舗ダーツメーカーユニコーンだったのです。
私たち日本人からすると、複数も単数もあまり重要な違いには感じられません。ですが、英語ではその「もの」が数えられるか数えられないか、単数なのか複数なのかで文章の意味すら大きく変わることがあります。”darts”は複数で表され、概念としては単数として扱われる、英語の中でも特殊な言葉なのです。皆がもっともっと良い点数を取りたいために、競ってダーツを何本も投げたことで複数となり、やがてゲームとしてイギリスやヨーロッパの庶民に愛される概念になったために単数として扱われる。その成長過程や歴史が、”darts”という言葉に込められていると思うと、たった一つの言葉なのにその重みを感じるような気がします。
単純そうに見えて実は奥が深いダーツには、お似合いの言葉なんですね。