2013年5月
近頃、巷では「街コン」という言葉をメディアでよく見聞きする様になり、20代~40代の独身者たちの間では頻繁に話題に上がり、主要都市に店舗を構えているダーツバーが会場の一つに名を連ねるようになりました。
皆様は、この「街コン」とは何なのか、ご存知でしょうか?
簡単に言ってしまうと「街ぐるみで開催される合コン」の略称です。この「街ぐるみ」という一風変わった形式が、今までの「合コン」や「お見合いパーティー」などのイメージを覆し、ダーツバーを初め、様々な飲食業界にとっての一大ブームを巻き起こしました。
現在は都内だけでも、新宿・渋谷・六本木・恵比寿・池袋等で、毎週のように開催されていて、案内サイトやホームページを見ると、5店舗前後の飲食店が会場になり、時期や開催地によって、カフェ、イタリアンレストラン、アジアン料理店、焼肉店、そして必ずと言って良い程、ダーツバーも一覧に掲載されています。
「街コン」の特徴とは、まず開催地となる複数の店舗が協賛し、好きな会場に参加者たちが渡り歩くことが出来るようマップを配布します。
事前に申し込みをして料金を払った参加者たちには、会場となる店舗のマップとIDが渡されます。IDは殆どの場合、腕に巻きつけるタイプのものか、首から下げるカード式のものとなります。
制限時間内であれば、このIDを持ってマップに掲載されている飲食店を自由に渡り歩き、同席した異性と会話を楽しんだり、連絡先を交換したり、別の店に一緒に移動する事も可能です。
基本的に、飲食費は初めに支払う参加費の中に含まれており、店舗で支払う必要はありません。
また「二人一組での参加」が義務付けられている場合も多く、同性の友人と一緒に「食べ歩き感覚」で参加できる気軽さもあり、最近では女性の参加者が男性の参加者の人数を上回ってしまう事が多いようですね。
私自身は参加したことは無いのですが、つい先日、足を運んだ新宿のダーツバーで、8台設置してあるダーツ台のうち「端の2台は貸切です。」という説明を受け、理由を聞いたところ「街コンで使っています。」との事でした。
その時初めて「街コン」という存在を知ったのですが、その貸切台で、男性8人と女性4人が仲良く和気藹々と楽しんでいる様を見て、私は現代の飲食業界と独身者たちに神の手が下りたように思えました。
「肉食系女子」や「草食系男子」に続き、新たな現代語で「恋愛難民」という言葉があります。読んで字の如く、現代では恋愛をする事が難しいと思ってしまう人たちが増えたという現象です。
恋愛を難しいと感じてしまう事は、私には全く理解しがたいものですが、今の時代背景を考えると「本物の人間との恋愛」に嫌悪感や恐怖心を持ってしまう人が増えているとも感じられますね。
「恋愛難民」とは、ダーツを愛する皆様にわかり易い言葉へ変換すると「恋愛イップス」とでも言えましょうか…。
昨今、携帯電話やスマートホン、タブレットの普及に加えて、誰もが利用するようになったソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)。FaceBookやTwitter、mixiなど、様々なSNSでは、実在する人物との繋がりから会話をしたり、日常を写真や短い文章で公開する等、実際に会わずともコミュニケーションを取ることが出来る、大変便利なシステムです。
しかし、この便利さの中には、人間の弱さを飲み込む闇も存在します。
小さな事で例えるならば、自身の写真を加工して見栄えを良くしたり、プロフィールの一部を改ざんしたり隠すことも可能です。
話下手な人が口では言えなくても、SNSでは饒舌な文面を書いたりする事も出来る為、簡単に自分を偽る事が出来てしまうのです。
そして実在する人間同士が、実際に対面する事無く、会話やコミュニケーションが成り立ってしまうのが、便利さ故の闇でしょう。
バーチャル的な会話に慣れ親しみ過ぎると、いざ人と対面しても、コミュニケーションどころか、会話もろくに出来なくなったり、目の前に実在する人間の方に違和感や嫌悪感を持ち始めてしまいます。
それが「恋愛難民」を生み出してしまった、現代の文化ではないでしょうか?
無論、夜毎に人の集まるダーツバー、ショップで、スタッフや仲間たちとダーツという競技を楽しむ皆様にとっては縁遠い話と思われるでしょう。けれども、中には居る筈です。
あまり人の集まる場には足を運ばず、ひとり黙々と投げ込み、傍に居るスタッフやお客さん達とは対戦しないで、ダーツ機の通信対戦機能を使って、見ず知らずの人間と機械を挟むことでしか、一緒にダーツを投げない人も。
それはそれでストイックな練習法の一つでもあると言えますが、あくまでダーツを競技として考えるなら、対人間です。
目の前で打ち込まれる圧力、競技中の凛とした空気、殺伐とした思いの全ては決してバーチャルでは成り立ちません。
同じように、SNSだけでは本物の信頼も愛の温もりも手に入れる事はできません。所詮はバーチャル、疑似体験でしかないのですから…。
冒頭でも紹介しました「街コン」は、飲食業界に思わぬ収益をもたらし、今では通常営業より「街コン」での売り上げがメインになっているお店も数多くあります。他店との共存で互いの店を紹介しつつ、事前に決まった収益が確保できるシステム。
回を重ねる毎に募集人数を上回る応募者たちからの口コミで、通常営業日にも客足が途絶えない等、地域の飲食業界の発展に明るい未来を広げ、各地で拡散し続ける「街コン」。皆様のお得意のダーツの腕前を武器に、一度扉を開いてみてはいかがでしょうか?
液晶画面からは感じられない肌の温もりが、そこにはあるのかも…。