2018年7月
喫茶店で記事を書くために、コメダ珈琲へ行き、席に座ったと同時にまだ口をつけたばかりであろうコーヒーを残しお会計へ行くおばさまを見て体臭を気にしたり、鏡を見るたびに頭のM字が後退しているのを気にしたりと若さが無くなってきたことを痛感している雨の強い日です。
この号が出る一年前に僕はイギリスから帰国しています。もうかと思うこともあれば、まだかと思うこともありますが時間というものはそんな思いなど完全に無視して過ぎていってしまいます。
ですが一年という時間が経ちこれだけは言えます「ダーツはうまくなっている」。イギリスにいたころは感じることができなかったその感覚は日本での時間の中で感じることができました。
もちろん選手のレベルや試合数、リーグ数でいえばイギリスには及ばないですが、その過ごした時間がやや遅れて力になってきていると僕は感じています。
きっと、どのスポーツでも言われていることだとは思いますが、練習や取り組みといったことはなかなかすぐには結果として現れません。僕の感覚では早くても三か月遅れでやってきます。
結果が出ない時期というのは非常にもどかしく、その取り組みに対して不安になってくることもしばしば。
結果が出ていない(この場合はスタッツヤRtなどの数字の話)プレイヤーの多くは修正点を見つけて、取り組みを変えてもすぐにやめてしまう方や、3日もたつと前の修正点を忘れて違う修正点を直そうとしていたりと一つのことを長く続けられないことを多く見かけます。
そうした光景を見るたびにもったいないなと思いますが、それを伝えたところで僕の考えが正解かどうかもわからないですから、中途半端に伝えることもできません。
僕の考える取り組みはダーツというスポーツをほかのスポーツの取り組みに当てはめて考え、実践していくことです。
昨今では高校野球の世界ですら一日の練習量は減っているというのにダーツの中ではいまだに練習量=うまくなるといったオカルト論がはびこり、肘が痛くなることやひざが痛むぐらいやったということが一つの勲章のように扱われていることに不思議さを覚えます。
確かに昔の僕も一日に10時間以上練習していたりしましたが、その頃の練習量全てが果たして今のスキルにつながっていたかは分かりません。しかしその練習量は自分の自信に繋がっていました。いやむしろ、その練習量をこなさなければ自信を持つことができなかったといったほうが適当でしょう。
始めた頃にその取り組み方で自信をつけた僕にとってオーバーワークはとてつもない重荷でした。熱がある日も疲れていた日も毎日毎日いやになるまで投げ続けていましたから。ダーツが嫌いになっていたわけではありません、
ダーツのことは大好きです。それもかなり。しかし僕は10年という月日を好きだけで過ごしたわけではありません。
10年間続けている間にいろいろな取り組みをしましたし、その取り組みも変わりました。最も変わったことは毎日の練習をやめて、1日の練習量を減らしたことです。
客観的にみれば技術やスキルが落ちるような気がしますが、間違いなく上がっています。そして自分のペースで休みを取ることによって気持ちもリフレッシュすることができ、ダーツを投げることが楽しく、限定的な時間で行っているので集中してその時間でスキルアップしようと頭も体も極限に使用して練習を行っています。
昔も今も金銭的な余裕は全くないですが、学生のころはまだ投げ放題といった制度もなく100円のカウントアップですら行うのにためらうほどでした。その頃によく言われたのが、100円でうまくなろうとする集中力がすごいねと。いまもそれに近いことがあるかもしれません。
幸せなことに練習をさせていただいている店舗様(お酒とダーツALOHA)もありますが、そこで練習するときも僕は長い時間投げることはなくなりました。
先日のPDCASIATourでも練習で行っていることが発揮できた場面もあり、着実に練習というものが試合に活きはじめていると感じています。
練習での自分を試合で映すことができれば練習での精度や気持ちを持って臨めば自ずと結果は出てきます。それが難しいんだと思うかもしれませんが、僕にとっては練習での1レグもその時にしかない貴重なものとしてとらえているので、試合とのモチベーションの差異はみなさんが思っているほどありません。
発揮する力というのはそもそも2つに分けられるはずです。いつもの自分を出す力といつも以上の自分を出す力。
試合においてこの2つの能力は、勝ち続けることには不可欠ではないでしょうか。今は便利な時代になっているのでPDCAsiaTourのスタッツもすべて見ることができます。
その数字といつも練習で打てる数字に大きな開きがあるかは僕にとっては重要なことです。先日の神戸大会でのスタッツはようやく一日を通して練習で出せている数字を超えることができました。負けてはしまいましたが、それだけは大きな収穫です。
しかし自分以上の力を出すことができなかったことは課題でしょう。その時の緊張感やレグ差でも感じることは違ってきます。そういったことを練習で感じ取れるようにならなければなりません。
練習との付き合い方は人それぞれですが、自分に何が合うかをしっかりと理解すること、さらに合ったものを見つけ出そうと探求心を持ち続けることは、これからの僕のダーツライフにおいて大切なものとなっていくことでしょう。
さて先日の神戸の話が出ましたが、そこで浅田プロと話しをしていて彼の意識の高さを感じることができました。今年のワールドカップでも世界レベルのダーツを見せてくれていた浅田プロは、自分がイメージする技術レベルにはまだまだ及んでいないと、だからまだ世界への挑戦の拠点を日本にしているんだということを話してくれました。
僕らの目から見て浅田プロのレベルならば世界へ挑戦すれば結果は残るのではないかと思うものですが、世界のステージを経験している彼はそのレベルを肌で感じ、五感で感じてきています。
そのうえで感じた技術不足は簡単に世界で戦うとは言いがたい、現実的な差があるのだと話を聞いていて思わされました。
僕は世界との差を詰めるためには、コツコツと色々なものを積み重ねていくしかないと考えています。浅田プロが感じているその差を感じることがまずは僕らが経験しなければいけないことです。
PDCという舞台も5年前に比べれば情報も多くそして足掛かりになる大会も行われ近くなっています。アジアでは周辺諸国がめきめきと力をつけていますから日本も負けずに頑張っていきましょう。