No.20 それぞれの団体にはもっと観たいと思わせる努力をしてほしい

2022年1月

2022年になった。PDCの世界選手権の決勝が終わった後にこの記事を書いている。
見事世界チャンピオンになったピーター・ライトのパフォーマンスは今大会間違いなく一番だったことだろう。対するマイケル・スミスも二度目の決勝の舞台ということや初のメジャータイトルへの期待などで大変な注目を集めた。
PDCを見て過ごす年末年始も恒例となり、私からしたら紅白歌合戦のようなものだろうか。コロナウイルスの影響で、数名のプレイヤーが欠場や棄権となる残念なニュースもあったが、それでもこの状況下で素晴らしいダーツを観せてくれたPDCのスタッフとプレイヤーはやはりプロフェッショナルだ。
今大会には山田選手と柴田選手の二名が日本からの出場となり、1回戦から注目された。山田選手は3回目の出場、柴田選手は初出場となる。

今回はいつもとは違い1回戦からランキング上位者との戦いということや日本時間22時頃の放送とあって中継を見た方も多いだろう。しかし残念ながら二人とも初戦敗退という結果となってしまった。結果には誰も満足していないし、日本のダーツが世界で通用するのはまだ先なんだと今年も感じた。
山田選手の試合で言えば最初のセットを決めるダブルが決まっていれば展開は少しは違ったのかなと想像できるし、柴田選手の試合では終始彼本来のダーツを見ることができず残念に感じた。10年前の橋本選手の大会アベレージと変わらないことを見ると、なんだかんだ技術は追いついていないのだ。

正直なところ、PDCと日本のプロ団体のレベルの差は「プロ野球と高校野球」ぐらいある。それを考えると、PDCを見ることがどれほど大切なのかがわかる。
プロ野球選手を目指すならば、プロ野球やMLBを見るのが普通だ。例えば私は大学にバスケットボールで進学したが、自分の技術向上やバスケット力の向上に同じ学生のプレイを見ることはほぼなかった。きっとどのスポーツでもそうだろう。もちろん少なからず参考にすることはあるだろうが、それがメインとして自分の中で夢だとか憧れにはならないはずだ。もちろんJAPANの試合やPERFECTの試合などを見るなと言っているんじゃない。

それぞれの団体にはもっと観たいと思わせる努力をしてほしいという期待である。なぜなら海の向こうではダーツが一つのエンターテイメントとして成り立っているからだ。日本の団体が行う試合や放送のそのほとんどの要素がPDCから遅れているのが現状である。SNSの投稿クオリティやYoutubeでのダイジェスト編集、撮影方法などは今すぐにでも取り組む課題であるし、ダーツを見ている人に楽しんでもらうことを最優先にするべきなのだ。
プレイヤーファーストなどというのはその先の話である。そしてこのようなことをSNSで目にしないこともまた発展までの遠い道を感じさせる。多種多様な意見が受け入れられるべきこの時代に、閉鎖的な業界は衰退の一途を辿るだけであるし、その様な意見を発信すると大いに叩かれたり、いわゆる炎上をしてしまうことも、その投稿を妨げる要因の一つだろう。

ここで発信している一個人の意見が何か大きな動きになるとは思いもしないが、いかにしてダーツを見ていない人に見てもらうか、それを楽しいと感じさせるか、ライト層にどれだけコンテンツが届くかを真剣に考える時期なのだ。

さてでは私自身は何をしていこうかというわけだが、特別に何かをするということはない。私は第三者的な立ち位置で好きなことを書いているだけであるし、なんだかんだ言いながらも日本の団体に所属してそのレギュレーションの中でプレイをしていくだけだからだ。偉そうなこと言いながら「結局は」ということは重々理解しているが、今季に限ってはそうするというだけだ。

来季のJAPANは4月からスタートするがそこに私がいるとも限りはしない。前みたくスティールに注力しているかもしれないし、2022年度のJAPANツアーに参加しているかもしれない。それはその時にしかわからない。なぜなら私は常に自分の気持ちに正直にやってきたし、目指すところは常に変わらないからである。 日本のプロ団体を踏まなくても海外に行けばいいと思っていることは私自身の経験からも読者は周知の事実だろう。これからは素晴らしい若手も出てくるであろうし、中村周作選手のような今すぐにでも海外へ行ってチャレンジしてほしいプレイヤーもいる。

国内が現状のままであるならば、いずれダイレクトに日本のプロ団体を経由することなく海外で活躍するプレイヤーが現れるはずである。
またこのような記事を書くことに少し戸惑いもあった。それはこの状況下でも試合を開催してくれていることには当たり前だが感謝しかないからだ。
私は何も「嫌い」という感情でこの記事を書いているわけではない。毎年、日本と世界の差を見せつけられている現状を全体でなんとかできないかと思うからだ。とはいえこれは自己中心的な考えからきている。自分が楽しいと思える試合をしたいという、ただのわがままななのだ。
そして自分が考える一番ダーツを楽しめる場所がPDCであるからそこを目指しているだけであり、それが日本にあるのならばわざわざ「世界だ世界だ」と捲し立てることはない。

何か大きな動きが必要な時期だろう。今年もまだ始まったばかりだと思っていると、あっという間に終わってしまう。「何をしなくてはいけないか」ということは誰もが気づいているはずだ。そこに投資をしなくてどこに未来があるというのだろうかとダーツに携わる方々へ最大限の尊敬を送りつつ今回のコラムを締める。

私事になるが、自身のシグニチャーモデルが発売することとなった。去年の夏頃から開発を進めて、何度も調整を繰り返した拘りのバレルだ。今までにあまり目にしたことのないスペックになっているはずなので、新しい感覚を感じて見たい方はぜひ手に取ってみてほしい。