Vol.110 鈴木 徹
だいぶ凹んだんですが

2021年9月号

いやぁ、この前は思い出したくないくらい悔しかったですね。
だいぶ凹んだんですが、なんとか持ち直そうと思っています。
怒りというよりは、あぁやっちゃったという虚しさが沸き起こった試合でしたね。
気を取り直してがんばります。みなさん応援よろしくお願いいたします。

前回テクニックでご登場いただいたのは、2017年11月でした。4年あまり経ちましたので改めて今回お願いした次第です。新型コロナの影響でいろいろなこともありましたでしょうから、変化や再発見などよろしくお願いいたします。
たぶん確実に進化していると思うのですが、映像などを撮って精査していますか?
自分の試合の動画を後から見てチェックしています。昔の動画など見比べたりもしていますね。でもあいからわず正解は見つかっていません(笑)。4年前と比較してみても、それほどフォームは変わっていないと思います。
自分で思うことですが、昔は固めてきっちり投げていましたが、最近はなるべく柔らかくポンポンとスムーズに投げるようになったと思います。フォームという面からは同じように見えますが、リズムは変わりましたね。それはこの4年の経験からでしょう。でもどちらが良いのかはこれも分かりません(笑)。

当時は業界にて知られる存在になってきた初めの頃でしたが、今は堂々としたトップランカーになっていますので、周囲の目などはずいぶん変わったのではないですか?
う〜ん、え〜、そうですね。多少はそんな空気は感じています。人前で投げる機会も多くなりました。

今はステージに上がると、おー「スズキトオルだ!今日はどんなダーツを観せてくれるのかな?」という期待も大きいと思いますよ。今はコロナ禍でツアーが中止になっていますが、開催されていればステージ周りは大混雑ですよ。注目も高まりファンも増えたと思います。
そうだと嬉しいですね。でも直接そんな声は聞いていないです(笑)。

グリップ
グリップの最重要ポイントは何でしょうか?
力まず自然にそっと持つことでしょうか。あまり型にはめず、スーと持つのが良いですね。毎回同じようにきっちり持とうと、最近はしていないです。

以前は同じように持とうと意識していたんですか?
あまり気にしなくても同じように持てるようになったからかもしれませんが、それほど重きを置かないようになりました。指先のことを考えすぎると、イップス気味になるようなことが多かったので、グリップは細かいことを考えない方が自分には向いていると思うようになりました。
いろいろな面で、ここ2年ぐらいはそれ以前のことを捨てて新しく挑戦していますね。

今までにグリップは変えて来ましたか?
ダーツ歴は約10年ですが、最初は教わったように4フィンガーで持っていました。それが村松治樹選手を知ってから、彼のグリップを真似してどんどん変わって来ました。固まってからは根本的には形は変えていません。でも投げる瞬間は気にし過ぎないようにしています。

今は3フィンガーですか?
軸は3なんですが、薬指はチップの先に当たっています。

他人のグリップは参考にしますか?
PDCの選手などはどう持っているのか見ていますね。練習の時に遊びで真似して投げたりしますが、取り入れたりとかはまだ無いです。

例えば誰ですか?
ギャリー・アンダーソンとかピーター・ライトですね。でも真似するのは難しいです。今の自分が最高ではないので、常に研究して変化を求めています。

毎日グリップは変わると思うますが、どうしていますか?
繰り返しになりますがアップの時に矢離れは気にしますが、グリップの細部は意識していません。できるだけ手の振りで気持ちよく飛ばすことに集中しています。

グリップは季節によってコンディションが変わりますが、何か対策はしていますか?
時々滑り止めを使っています。

立ち方
スタンスはどうしていますか?
昔はきっちり90度のクローズだったんですが、最近は多少オープン気味に立つようになりました。前のめりになり過ぎていたかと思って、ゆったりきちんと立つために変えました。以前は足の内側が浮くぐらい外に体重をかけていたんですが、そうならないようにどっしり構えるようにしました。
そこを変えると左足や肘の位置も変わりましたね。今の方が良いかなと思っています。でもレーティングを比較しても変化は無いので、これも正解は分かりません(笑)。

スローラインは何処に立ちますか?
若干右側です。まっすぐ投げているイメージが右から左に投げているからです。肩がターゲットの右にある感じですね。

顔の位置がボードの正面というイメージですか?
そうかもしれないですね。右利きですと手を振ると自然に左に出ると思っています。ほんのちょっとですが、それがまっすぐなのではないでしょうか。

右足はまっすぐにしていますか?
まっすぐにしています。

両足の荷重はどうでしょうか?
以前は9.9:0.1ぐらいでしたが、今は9:1か8:2ぐらいでしょうか。クローズをやめた時にゆったり立って前のめりにならないように構えると、自ずと左足に配分を増やすようになりました。
それでも時々前のめりになっているので、気を付けています。

でも9.9だと試合では疲れますね。
そうですね、疲れます。今の荷重でも疲れるので、靴の中に特別なインソールを入れています。なるべく疲れないように工夫しています。ダーツという競技は右足を酷使していますね。

PDCのプレイヤーでもダーツは足腰だと言っている人が多いですね。
いやぁ、間違いないですね。

左足について新しくなにか考えていますか?
荷重配分よりも位置について考えています。毎日少しずつ変わるのですが、どの位置が成績が良いのか精査中です。

クローズからオープンにすると、肩の開きやボードの見え方なども変わりますよね?
そうなんです。最初思い切って変えた時は投げづらく、狙いにくかったですね。でもより楽に手を振れるようにしたかったので、それで練習を続けて最近は違和感が無いようになりました。これもまた正解なのか分かりません。また変えるかもしれないです(笑)。

PDCでも昔、クローズのプレイヤーが主流の時がありましたが最近はいろいろな立ち方をしていますよね。
オープンで立つプレイヤーが増えたように思います。本当にそれぞれですね。

試合が増えたからかもしれませんね。
クローズだとボードに近くなりますが、楽に立って投げるという面ではオープンの方が自然ですからね。体力面の対処も一因でしょうか…。


構えた時、肘の位置は高低いかがですか?
以前と比較して変化は無いと思います。多少開き気味になりましたが高低では同じですね。目線でターゲットとダーツを合わせているので肘では構えていません。

構えた時、肘の位置をしっかり固めているプロと、柔軟性を大事にしてゆるくしているプロがいますが、どちらですか?
どらかというとゆるめだと思います。楽に手が振れているのであれば、気にならないですね。実際動画を見ていると肘が下がっている時もあるんですが、ダーツが飛んでいればいいですね。肘に力は入っていません。

肘はプロプレイヤーが怪我しやすい場所でもあるのですが、何かケアはしていますか?
痛い時は練習しないようにしていますし、整体にも通ってメンテしています。僕も慢性的に肘が痛いので、なるべく負担がかからないように気をつけています。

いつ頃からですか?
はっきりは覚えていないですが、もう何年にもなりますね。投げ始めとか終わった後に痛みを感じます。ですので無理しないようにしています。痛めている人は多いと聞いていますね。

テイクバック
始動はどのようにしていますか?
引くというよりは倒すイメージです。構えてから意識的に肩に向けて始動します。構える時に軽く前にユーミングしていますね。

テイクバックの軌道はどうですか?
構えた時にはダーツは平行に持っていたいんですが、テイクバックで若干矢角を付けています。テイクバックの最下点では、フライトが肩に触るような感じですね。
日によって矢角の調整はしていますが、長い間このテイクバックです。

テイクバックの最終点は明確に決めているということですね?
顔の右下ですね。以前は肩にフライトが当たっていたので、もっと引いていましたが今はギリギリ当たらないぐらいです。

最終点を見つけるのに時間がかかりましたか?
村松治樹選手を真似てずっと投げていたので、それは無いですね。肩に引く、ただそれだけを考えてやってきました。でも一時期フライトが肩に当たり過ぎてグリップが抜けることがあったので、シャフトを短くしたり矯正を重ねた結果、当たらなくなりました。

最終点はいつも同じですか?
そうしたいと思っています。でも試合の動画を後で見ると必ずも同じではないですね。力んでいないと自然に引けていて、それが出来ている時は調子が良いです。やはり最終点の位置がバラバラだと再現性に問題があると思います。

スロー
リリースポイントについてはいかがですか?
動画を見ると遅い方だと思います。自分では最下点から既にリリースを始めているイメージなんですが、意外と遅く離していますね。早く離したいんですが…(笑)。

どうしてですか?
持ちすぎると左にずれます。手も振れなくなりますね。きちんと振れている時は離れるのが早い感覚があります。逆説ですがちゃんと振ると早く離れるので、早い方が良いのかなと思っています。

狙う場所によってスローで違いはありますか?
なるべく同じようにしています。狙ったところに目線で構えて同じスローです。

投げきった後、手は伸ばしていますか?
最近振りを強くしていて、投げきった後はかなり下にありますね。手を伸ばすというよりは振り切りたいと思っています。以前はターゲットに手首を残すぐらいの感じだったんですが、変わって来ました。
でもその日の調子で振り切って入る時はそうしていますが、入らないと手を伸ばすようにしたりまだまだ試行錯誤しています。難しいですね…(笑)。

手の最後の形は気にしてますか?
気にはしているんですが、相変わらずバラバラです(笑)。なるべくきれいに縦に振って、理想としては手の甲がまっすぐ下に垂れてる形です。これが出来ないんです。自然な動きだと思うんですが…。鈴木未来選手は出来ていますね!あんな感じのイメージです。

ダーツの飛び
気にしていますか?理想の軌道は?
ある程度は気にしています。なるべく直線がいいですね。そのために矢角を付けています。

以前よりも直線になって来ていますか?
どうでしょうか?バレルも変わってきていますし、その日によって矢角をつけたりしているので、そこまでは意識していません。飛びよりは手離れを考えています。こう飛ばしたいとすると、持ち過ぎることが多いように思います。軌道に向けて手を離すようにすると手離れが遅くなってしまいます。

回転についてはいかがですか?
わざとでは無いんですが、自然に回転しています。

リズム
ダーツには1本のリズム、3本のリズムなどたくさんありますが、どう考えていますか?
最近はスティールを投げる機会が増えて、とても重要視するようになりました。ソフトを投げていた時は1本ずつ大事に投げていたのですが、けっこう変わったと思います。スティールは再現性が求められるので、FIDOでもみんな早くなってきたように感じています。

試合ではプレイが早い人、遅い人などいますが気にしますか?
もともと対戦相手のことは意識していないです。でも早い人にはつられて、遅い人でバンバン入れられるとドキドキはありますね(笑)。

ソフトではゼロワンとクリケット、どちらが好きですか?
好き嫌いは無いです。試合での5レッグ目ではクリケを選びますが…。

スティールとソフトの違いについて
何でしょうか?あまり違いは感じていないです。難しさという意味ではスティールなのでしょうが、ソフトの大きな的でも外す時はあります。投げ分けていることも無いですし、やっていることは同じです。
でもスティールで学んだ技術はソフトに活かしたいですね。

練習はいかがですか?
スティールで日々501に励んでいます。アレンジも勉強していますが、試合後に見直すとけっこう間違えていて、反省しています(笑)。

スピリット
ダーツは常にそれですね。特にスティールは最後まで分からないので、諦めないメンタルが必要だと思います。

昨年はあの夢の舞台に立って、きっとスティールに火が付いたことでしょう。またこの前はワールドカップ惜しかったですね。
いやぁ、この前は思い出したくないくらい悔しかったですね。だいぶ凹んだんですが、なんとか持ち直そうと思っています。怒りというよりは、あぁやっちゃったという虚しさが沸き起こった試合でしたね。気を取り直してがんばります。みなさん応援よろしくお願いいたします。